lunas rotas

いつまでも、完成しないことばを紡いでいこう

「ヨーロッパ市民の誕生―開かれたシティズンシップへ―」を読んで

2011-03-08 10:05:03 | Weblog
 「ヨーロッパ市民の誕生―開かれたシティズンシップへ―」(宮島喬)の中に、ヨーロッパのカタルーニャ地方に住む人に何人かと聞くと、「まずカタルーニャ人、かろうじてスペイン人、それ以上にヨーロッパ人」という言い方をする人が少なからずいると書いてある。こんなふうに「ヨーロッパ人」と口にする人はどんな意味や気持ちをそこに込めているのだろう。「ヨーロッパ市民」は文化的なつながりを大きく感じているようだが、ヨーロッパ市民化していく過程や各国で取り組まれている市民教育を見れば、同化教育とどう峻別していくのかは甚だ難しい。特にヨーロッパ以外の地域からの移民がどう「ヨーロッパ市民」になっていくのかは興味深い。
 ドイツは職業訓練とドイツ語教育を車の両輪と考え実施している。ベルリン市は習得機会の少ない成人対象にドイツ語講座を市内に1000か所以上設けているらしい。特に外国人の母親にドイツ語習得の機会を与えることを重要視し、子供の送り迎えに訪れる小学校や保育園の一室を借りて行われていて、自立をうながす施策となっているとのことだ。
 タイトルに「ヨーロッパ市民」とある新書ではあるが、ヨーロッパ人としてのアイデンティティを自分の中に持つには、まずはローカルなアイデンティティを形成していくことが一歩となるのではないかと考えさせられた本だった。日本語教師としても大変興味の持てる内容。

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