名言の深海

名言とその著者への接近。

美しい結婚と離婚 川端康成

2012年04月10日 | 名言記事
二人の結婚は美しかった。なぜなら彼女は離婚する力を持っていたから。 二人の離婚もまた美しかった。なぜなら彼女は友達となれる心を持っていたから。

   (川端康成 :作家)



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川端康成 (1899-1972)

幼少期に家族の不幸が続き、15歳までに父母、姉、祖父母といった近親者が他界した。

東京帝大に在学中、同人誌に発表した作品が菊池寛の目にとまり、文壇デビューを果たす。その20数年後、川端は三島由紀夫を見出して作家デビューに導いている。

戦時中、すでに著名な作家だった川端は特攻隊を取材したが、戦後になっても特攻隊について書かなかった。繊細な神経ゆえに文章にできなかったと推察される。

1968年にノーベル文学賞を受賞。モーニングではなく紋付羽織袴で臨んだ授賞式は話題になった。その4年後、自室で死亡しているのが発見される。死因としては、ガス自殺説と事故死説がある。

日本文学史上、もっとも美しい文章を書いたと称されるが、学生時代における作文の成績は88人中86番目だったという。



眠れる美女 (新潮文庫)

咳をしても一人 尾崎放哉

2011年09月27日 | 名言記事
せきをしてもひとり

  (尾崎放哉)



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尾崎放哉(おざきほうさい:1885-1926)
俳人。

通信社、保険会社などに勤務するが、37歳のときに肺病を罹患。
それ以後、社会生活と家庭を捨てて、各地を転々としながら句作を続けた。

同窓の東京帝大出を嫌うなど屈折した内面を抱え、
酒を飲むと暴れることがあったという。
深い孤独感を表明した句に特徴がある。
現代では、種田山頭火と並んで自由律俳句を代表する俳人と称されている。


<自由律俳句>
五七五の定型をもたず、季語にも縛られずに心の動きのまま表現する俳句。
音数の決まりをもたない自由な口語表現でありながら、容易に暗唱できるリズムを持ち、
散文としても韻文としても読める。


尾崎放哉全句集 (ちくま文庫)

不思議でたまらない 金子みすず

2010年07月31日 | 名言記事
私は不思議でたまらない、
誰にきいても笑つてて、
あたりまへだ、といふことが。

   (金子みすゞ「不思議」)



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金子みすず 1903 - 1930

童謡詩人。
小さい生命へ同化、優しいまなざし、極めて平易な言葉を使った印象的な表現、
などに特徴を持つ詩人。
二十歳の頃から主要誌に詩が掲載され、「若き童謡詩人の中の巨星」として
高い評価を得るが、26歳の若さで自殺すると完全に忘れ去られることとなる。
半世紀が過ぎたころ、童謡作家の矢崎節夫たちが苦心の末に遺稿集を発掘。
瞬く間に再評価されることになった。



わたしと小鳥とすずと―金子みすゞ童謡集

有から無へ フィッツジェラルド

2005年09月15日 | 名言記事
彼は「散財する」という言葉の意味をはっと悟った。
それは文字通り空へばらまくということなのだ。
有を無に変えることなのだ。

    (フィッツジェラルド「バビロンに帰る」)



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フィッツジェラルド 1896‐1940
アメリカの小説家。
空前の繁栄を誇った20年代のアメリカにおいて、
虚無的、享楽的な世相を反映した作品で一躍
流行作家となる。しかし、1929年の大恐慌に
よって世情は一変し、急速に忘れ去られていった。

近年、村上春樹がフィッツジェラルドについて
言及することが多く、彼を経由して日本の読者が増えている。
村上春樹が翻訳したシリーズも出ている。



バビロンに帰る フィッツジェラルド

空腹 アベ・プレボー

2005年09月07日 | 名言記事
パンに不自由しながら人は恋を語れるでしょうか。

        (アベ・プレボー「マノン・レスコー」)



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アベ・プレボー1697‐1763
フランスの小説家。
聖職者となるが修道院を出奔。イギリス・オランダを放浪し、
生活に困り偽手形を切って投獄されることもあった。
その後、かつての上司の取りなしで恩赦を得ることができ、
聖職者に復帰して執筆活動を続けた。

「マノン・レスコー」
プレボーが放浪時代に書いた小説。
本能のままに生きる娼婦型の女性と、その女性を
一途に愛する破滅型の青年を描いた。
この作品は「一貴族の回想」という小説の最終巻に
あたるが、読者に強烈な印象を与える傑作だったため、
この一編が独立して評価される。
プッチーニによってオペラ化もされた。



マノン・レスコー アベ・プレヴォー

おだやかに口にする言葉 カロッサ

2005年09月06日 | 名言記事
自分自身の体験と思索によって到達した考えは、たいがいの場合
われわれはおだやかに慎み深く口にするものである。

        (カロッサ「美しき惑いの年」)



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カロッサ 1878‐1956
ドイツの詩人、小説家。
医業のかたわら文筆活動を続ける。苦悩の中にあっても人間性への
信頼に貫かれた作風は、ゲーテの精神をもっとも引き継いだもの
として多くの読者を得た。



美しき惑いの年 カロッサ

退屈な精神 アナトール・フランス

2005年08月25日 | 名言記事
不安を知らない精神はわたくしをいらだたせるか、
あるいは退屈させる。

    (アナトール・フランス「エピクロスの園」)



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アナトール・フランス
フランスの小説家。
憂鬱、不安、退屈、退廃といった気分に支配された
19世紀末のフランス文学界において、軽妙な風刺を
含んだ温かいまなざしで人間のおろかさを描いた。



エピクロスの園 アナトール・フランス