名言の深海

名言とその著者への接近。

否定への怖れ ヘーベル

2005年03月22日 | 名言記事
ええそうです、という言葉を聞きたくてたまらないけど、
いいえ、という答えもまた大いにありうるとき、
質問をするのはたいへん勇気のいることだ。

    (ヘーベル「ドイツ炉辺ばなし集」)



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ヘーベル 1760~1826
ドイツの詩人、聖職者。
科学、宗教、日常道徳などを平易な語り口で表現し、
民衆の啓蒙に寄与した。



ドイツ炉辺ばなし集―カレンダーゲシヒテン ヘーベル

近代の欲望 ボードレール

2005年03月14日 | 名言記事
人生とは、病人の一人一人が寝台を変えたいという欲
望に取り憑かれている、一個の病院である。
   
     (ボードレール「パリの憂愁」)



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ボードレール1821~67
資本主義勃興期のパリに生き、都市生活者の憂鬱と退廃、
そこからの脱出願望などを題材にした詩人。
散文詩というジャンルを文学として確立した。



パリの憂愁 ボードレール

もてなし ブリヤ・サバラン

2005年03月13日 | 名言記事
だれかを食事に招くということは、その人が自分の家に
いる間だじゅうその幸福を引き受けるということである。

         (ブリヤ・サバラン「美味礼賛」)



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ブリヤ・サバラン 1755~1826
フランス革命期に国民会議議員として活躍するが、
恐怖政治の際には、ドイツ、スイス、アメリカに亡命する。
亡命先ではコック見習いやバイオリン弾きなど様々な職業を経験。
帰国後は法曹界に復帰し、死の前年に「美味礼賛」を刊行する。

「美味礼賛」(味覚の生理学)
それまであまり考察されることがなかった味覚について、
総合的視点から検討した。これによって、フランス美味学の
祖として歴史に名を残す。



美味礼讃 ブリヤ・サバラン

人生と金 オスカー・ワイルド

2005年03月11日 | オスカーワイルド
When I was young I thought that money was the most important thing in life; now that I am old I know that it is.

若いときは、人生で一番大切なのは金だと思っていた。
今、歳をとってみて、その通りだとわかった。

    (オスカー・ワイルド)

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読み手の予想を裏切って、後文が前文を否定しない。ワイルドらしい機知に富んだ言葉。自己の時間的対比を用いることによって、主張を封印する配慮がなされている。


鍛錬 クセノフォン

2005年03月11日 | 名言記事
身体を鍛錬しない者は身体を使う仕事をなし得ないごとく、
精神を鍛錬しない者はまた精神の仕事を行うことができない。

       (クセノフォン「ソクラテスの思い出」)



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クセノフォン(前426~前355)
ソクラテスを師と仰いだ古代ギリシアの軍人。
著書「ソクラテスの思い出」では、師を処刑した
アテナイおよびアテナイの政治体制だった民主政治
を批判している。

クセノフォンのソクラテス
クセノフォンが伝えるソクラテスは、ありきたりな人生訓を述べることが多い。
プラトンが伝える美化されたイメージと違って、むしろ実像に近いとする意見もある。
しかし、クセノフォン自身に哲学的素養がなかったため、
ソクラテスの哲学的な側面を伝えることができなかったというのも確かだろう。



ソークラテースの思い出 改版



孫子の兵法

2005年03月09日 | 名言記事
戦争には拙速(まずくともすばやくやる)というのはあるが、
巧久(うまく長引く)という例はまだない。

               「孫子」



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孫子。
中国、春秋時代の孫武の著とされる兵法書。
現代に残る兵法書として最古のものでありながら、
あまりに本質的な洞察と思想性を有しているため、
二千年後の世界になっても読み継がれている。

日本でも8世紀には「孫子」が伝わっていたことが確認され、
戦国時代になると武田信玄が軍旗に使ったことは有名。

ちなみに、現在読むことのできる孫子(本論13編)は、
三国志の英雄曹操がまとめたものである。
孫武が残した兵法書は後継者たちが注釈を重ねて肥大化し、
曹操はそれを13編に整理した。その13編がほとんど変わらず
現代に伝わることになった。



新訂 孫子

他人の使用 テンニース

2005年03月08日 | 名言記事
虚栄心は他人を鏡として使用し、
利己心は他人を道具として使用する。

      (テンニース「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」)



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テンニース(1855~1936)
ドイツの社会学者。
キール大学で教壇に立ちながら、ドイツ社会学会の会長も
20年以上務める。ナチズムを非難したため名誉教授の
地位を追われることになった。

ゲマインシャフトとゲゼルシャフト。
価値合理性(共通信仰)の志向によって規定される集団類型を
ゲマインシャフトと呼び、一方ゲゼルシャフトは目的合理性の
志向によって規定される集団類型のことをいう。
前者は伝統的な町村、後者は近代的企業に典型をみることができる。



ゲマインシャフトとゲゼルシャフト―純粋社会学の基本概念〈上〉

不幸のうちに ツワイク

2005年03月04日 | 名言記事
不幸のうちに初めて人は、自分が何者であるかを知る。
        
      (ツワイク「マリー・アントワネット」)



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ツワイク(1881-1942) 
作家。
国際的な知識人として名声を馳せるが、ファシズムの影ととも
オーストリアから亡命。イギリス、アメリカ、ブラジルと
亡命を続け、最後は妻と共に自殺する。


「マリー・アントワネット」ツワイク
焦燥にかられ感情に振り回される、凡庸な少女。
アントワネットをそのような平凡な人物として描くことで、
その後の緊迫した社会情勢の中、すべての行動が裏目に出て
追い詰められていく悲劇が際立つ。

この作品が読まれる以前、マリー・アントワネットの一般的なイメージは
「フランス民衆の貧困を横目に放蕩の限りを尽くした怖ろしい女」というものだった。
ツワイクはこの作品によってアントワネット像を大きく転換させたことになる。



マリー・アントワネット〈上) シュテファン・ツワイク


もっと馬鹿げたことを ラ・フォンテーヌ

2005年03月04日 | 名言記事
馬鹿げたことも度をすぎた場合には、
そのまちがいを道理でたたこうとするのは、
大人げないやり方。
興奮しないで、もっと馬鹿げたことを言う方が
手っ取り早い。
     (ラ・フォンテーヌ「寓話」)



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フォンテーヌ(1621-95)
イソップやインドの古い素材をもとに約240編の詩編を創造する。
世間知の集成に過ぎなかった寓話を芸術の域に高めた。



寓話〈上〉 ラ・フォンテーヌ