エコヴィレッジ鶴川は一日にしてならず

鶴川某地にて展開する自然志向のコーポラティブハウス「エコヴィレッジ鶴川」。
住民の手で心地よい暮らし、現在進行形。

くりこま・ウレシパモシリツアー 顛末記2

2005年07月30日 | パーマカルチャー公開講座
【1日目 旅館・夜の勉強会】
■旅館への移動
植林体験のあと,全員で旅館へ向けて移動しました。車9台を連ねての移動のため,信号で後続車が取り残されてしまい途中で待ったり,はぐれる車がでたりと先導係のくりこまの方,本当にお疲れ様でした。旅館は佐藤旅館と温湯旅館に別れての宿泊です。

我が家は佐藤旅館に泊まりました。中庭に面して部屋がぐるりと配置されている変わった造りで,部屋の扉はなんと障子戸のみ!風情ですね~。

お風呂も露天風呂も情緒たっぷりで最高でした。ただし,強行スケジュールのため,旅館到着から次の夜の勉強会まで1時間ほどしかありません!みなさん,大慌てで入浴し食事を済ませ,いざ,山の講義へ出かけました。

■夜の勉強会・山の講義

夜の勉強会は,旅館近くの道の駅にあるレストランで行われました。呑める人はビール片手に,そうでない方はめいめい好きなものを飲みつつお話を伺いました。

まず,くりこま杉協同組合理事長の千葉さんから組合の現状についてのお話がありました。

平成2年にスタートした組合ですが,3つの基本方針があるとのことです。まず,山を守ること。放置され荒廃していく山に手を入れ守っていくためには,地元で製材し地元経済を活性化する必要がある。加えて,雇用の確保も大切なポイントであるそうです。2番目に,建てられた住宅で深呼吸できる空間を提供すること。かつ,それらを実現できる材を提供することだそうです。3番目に,安全性およびトレーサビリティの確立です。これは,深呼吸できる空間を作るために必要なことであり,国産材に対する信頼を向上させるためだそうです。

これらを掲げ活動されてきたそうですが,去年民事再生を申請したそうです。幸い,不採算部門を閉め20名の職員を解雇し,7月14日から再スタートを切ったところだそうです。これだけのすばらしい取り組みがなされているのに,経済的になり立たないという現状に強い憤りを感じました。

ついでに1杯目のジョッキが空に・・

次に,山武の社長である大場さんから山側の事情に関するお話がありました。

かつて,くりこまを含めた宮城の山というのはブナの原生林であったものを,戦後の拡大植林計画でどんどん伐採し,杉の人工林に変えていったそうです。

続いて,我が国の木材の使用に関するデータが示されました。一人当たりの木材消費量は20年前と比べて15%も減少しており,木造住宅割合というのもどんどん低下してきている。さらに,柱材における国産材の割合は平成5年には7割であったものが,平成14年には5割に減少してきている。木材の需要が低下し,かつ,安価で危険な外材に押されシェア自体も低下しているのが現状だそうです。このように,国産材で採算が取れないため,手入れされず放置される山が日本中でみられるようになってしまったとのこと。

さらに,問題なのは人工林の3割が同時期に植えられ現在45年生のもので占められていることだそうです。10年後には一斉に伐採時期を迎えるので,それまでにこれらを有効利用できる方法を確立する必要があるとのことでした。

大場さんのお話で印象的であったのは「山・木を守るということは水を守ることである」とのお言葉です。大きく育ち二酸化炭素還元能力や保水力の落ちた木を伐り,若い苗に変えていく事でこれらの能力が保たれるとのこと。まさに大きな循環を担う仕事だと思いました。

ここで,2杯目のジョッキも空に・・

続いて,相根さんからこれらの現状を改善するためのプロジェクト-エコハウスプロジェクトーが紹介されました。木材の原産地で製材のみでなく,住宅を組み立てられる寸前の加工まで行うことで山側に経済的な還元を行い,それを都市部に運んで住宅を造るというプロジェクトです。これに関しては相根さんから総会などで詳しくお話ししてもらいたいですね。

ついに,3杯目のジョッキも空に・・

最後にSさんから,森林経営の現状についてお話がありました。林業を守るために,日本の山を守るために様々な取り組みがなされているのだなと感じました。

私も大分いい感じに・・

こんな話を伺ってあっという間に時間が過ぎましたが,みなさん白熱した議論はなかなか終わりません。終了時間を1時間も延長して頂きようやく終了となりました(お店の方ありがとうございます)。ちなみに,子どもたちは外でカブトやらクワガタを捕まえて大喜びしていました。しかも,虫かごまでもらって!上機嫌でした(重ね重ねありがとうございます)。

このあと,帰ったあとも,それぞれの旅館で白熱した意見交換が行われたようです・・すごい・・。

■1日目のまとめ
ツアー1日目は,自分達の住まいに使われる木材がどんな山で育ち,どんな人たちによって守られ,どのように作られているのかを体験し,日本の山や林業の問題点について考えさせられました。我々の住まいや活動がこれらの改善に少しでも寄与できるよう願ってやみません。

(文・かわちや)

くりこま・ウレシパモシリツアー 顛末記1

2005年07月30日 | パーマカルチャー公開講座
■はじめに
さる,7月30日,31日の2日間に渡り,くりこま杉協同組合およびウレシパモシリ(酒匂さんの自然農園)を見学するツアーに行ってきました。大人31名,子ども14名の計45名がツアーに参加しました。強行スケジュールの中,皆さん非常に熱心に見学されていました。まさに,エコビレッジ鶴川の住まい(建物)と価値観を支える重要な部分を体感した気がします。
行けなかった人も行った人もこれを読んで楽しんで下さいませ!

【1日目 くりこま杉協同組合の見学】
■集 合

ツアーの集合はくりこま杉協同組合へ13時となっていました。直接現地に行かれる方と東北新幹線くりこま高原駅に集合してから現地に向かう班に別れました。

駅に着いてみたら,くりこま杉協同組合の方がワゴン車を出して迎えに来てくれていました!現地での移動を全て(2日目の移動も)まかなって下さるとのこと!ありがたいですね~(もちろんガソリン代,高速代は自己負担です)。

ワゴン車に先導されること30分でくりこま杉協同組合に到着。アンビエックススタッフ,現地集合の方々と合流し開会式のあと早速工場見学となりました。

■工場見学・燻煙乾燥プラント

工場見学では,まず燻煙乾燥プラントを見学しました。感想としてはとにかく大きいことにびっくりしました。もっと炭焼き小屋みたいなイメージでいたのですが,実際はまさにプラントという感じでした。プラントは454型で80から100立方の材の乾燥が可能とのことでした。

燻煙乾燥の一番のキモは端材,チップ,かんな屑などの本来は捨てていたものを燃料(バイオマス燃料)として利用している点だそうです。重油などを使用する場合にくらべ1回の乾燥につき80万円程コストが安くすむそうです。化石燃料を使用しないため環境負荷も少なく,かつ,科学物質汚染もありません。さらに,大量の木酢液がとれます(1000L×4本)。

このあたり,循環型社会の構築を目指すエコビレッジに最適の材だなと思いました。

実際の燻煙乾燥の行程ですが,まず製材された材を桟にのせ重ねて積み上げます。これらをプラントに入れ大体15日前後燻煙するそうです。燻煙する時間は,端材やチップなどを入れる量で決定するそうです。これは職人わざですね。何せ,燃え尽きるまで蓋を開けることはできないそうで,途中でもう少し燻煙しようとか,もう止めようといったことができないそうです。

燻煙によって含水率は概ね半分に,60%のものは30%程度になるそうです。これではフローリング材の基準である10%以下に達しないため,自然乾燥や人工乾燥を追加するそうです。燻煙乾燥のみで乾燥しきれないというのが目下のところジレンマであると思われました。

しかし,木の持つ調湿作用を失わず,防虫,防カビ,防腐能力をノンケミカルに添加できる「バイオマス燃料による燻煙乾燥」の技術はすばらしいなと感じました。

■鶴川の材

次に,製材所に向かう途中で,鶴川から送った材を確認しました。私は伐採時も見学していたのですが,その時のイメージと比べてなんか乾燥して縮んだ?様な気がしました。基本的には丸太のままでしたが,これは,使用する用途(例えばテーブルとかいす)によって製材方法が違うためだそうです。ですので,何に使うか先に決めないといけないことが判明しました!今後の総会での検討事項ですね。

■製材工場見学
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最後に製材工場を見学しました。丸太を柱状に加工するための機械をまず,見せていただきました。しかも,運転席?からです。

丸太が順番に送られてきて,赤外線で切断線を引き両側をいっぺんに切断します。そして丸太(もう丸太じゃない?)を90度回転させて両側を切断し出来上がり!です。

この工場では通常の製材所の10倍のスピードで製材するそうです。スピードアップの秘訣は通常1面ずつの切断を2面いちどに切断できるこの機械の恩恵に加えて,同じサイズのものをある一定期間内加工するという方式で効率アップをはかっているそうです。

次に、燻煙済みの材をフローリング材に加工する行程を見学しました。

機械に通して加工していくのですが,節の部分は専用のパテで埋めて手作業でヤスリをかけるそうです(ストッキングなんかが引っ掛かってしまうため)。

「基本的にはパテでうめなくても使えるんだけどね」というお話を伺い,聞いてみました。パテうめしない状態での出荷も可能ですか?と・・もちろん可能です!と力強いお返事を頂きました。

それにしても,皆さん,フローリング材の見学は熱心でした。やっぱり,直接「じぶんち」に使う状態になっているものは気になりますよね~。あと,子供達はあちこちに山済みになっている端材をもってっていいよ~といわれ大喜びでした。

我家も夏休みの工作用に何枚かもらっちゃいました。

てな具合で,時間がぁ!・・という相根さんの声に押され,後ろ髪を引かれつつ山の見学へと一同出発しました。

■伐採見学

工場見学のあと全員で山へブブーンと移動し,まず伐採の見学に。到着したとたんにカンカンデリだった天気が怪しくなり雨模様に・・。フフフ,こんなこともあろうかと我家は全員分ちゃーんとカッパを持ってきたのだ。じゃあ,とっとと出せって?無理無理,だってカッパはブルーシートで梱包されて車の屋根の上だから・・って意味ないじゃん!!結局他の方に傘をお借りしました。

で、伐採ですが,50年から55年生の杉を実際に伐採する現場を見学しました。

しかも,エコビレッジを代表してKさんが楔を打ち込む役を担当しました。

巨大な木が伐採されて,しかも倒れていく様は雄大で感動的でした。

さらに,この伐採した木が実際にエコビレッジ鶴川で使われるとのこと。まさに,木材のトレーサビリティが確立されているなと感じました。

次に,伐採した木材の枝打ちやある程度の長さに切断する作業を見学しました。かつては全て手作業で行っていたそうですが,現在は高性能林業機器が用いられていました。

作業効率の向上はもちろんですが,この機械のおかげで事故が減り,若い人が山へ帰ってくるのに一役買っているそうです。

機械自体はパワーショベルの様は形をしていて,木材をがっちりと掴みます。掴んだまま材をスライドさせ,長さをはかりつつ枝を払う作業を行います。長さを計測したらチェンソ-で切断します。

これらの作業がすべて一つの機械で可能です。見学時,チェンソーで材を切断する際,木屑が子供達のほうへちょっとかかったのですが大騒ぎで楽しんでおりました(キャーキャーいってました)。

■植林体験
伐採見学のあと,今度は伐採済みの斜面への植林体験を行いました。はじめ少し雨が弱まるまで待とうと木陰で雨宿りをしました。木陰というのは本当に雨宿りできるのですね。ちょっとびっくりしました。もっと濡れるかと思っていましたので・・

さて,植林作業は「こくわ」で地面を掘り返して30センチほどの深さの穴を掘ります。1年くらい育てた苗木を穴の中に入れて土をかけ,まわりを踏み固めます。

この時,根を丸くまとめて,ゴミが入らないように注意します。その辺に落ちている葉や枝も「ごみ」になってしまい,根が腐る原因になってしまうそうです。これらの点に注意しつつ,いっこうにおさまらない雨に打たれつつ,みなさんで植林しました。

一人10本くらいの苗を植えて終了となりました。

はじめは,大変な作業だったのですが,やっているうちに楽しくなり,もっとやりたいなーというところで終了となってしまいました。

「これらの植えた杉が伐採の時期を迎える頃にはおれたちもお父さんも多分この世にはいないなー」という職人さんの言葉を聞いて,林業ってのは悠久な世代を越えた仕事なんだなーと実感しました。仕事が世代を超えて繋がっていくというのはなんだか不思議な気がします。是非また,成長した木々をみるためにくりこまに行きたいですね。

それにしても,伐採と植林の時に限って雨が降らなくても・・とぼやいていると,「雨が降った方がね,根が定着しやすくて育つ確率が高くなるんですよ」とすてきな言葉をかけて頂き,いやー雨降って良かったと簡単に思い直した次第です。

次回は1日目 夜の勉強会の報告です。

(文・かわちや)