制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

厚生労働省、新事業・制度改正を外部評価する仕組みを導入

2010年01月12日 10時05分35秒 | その他
日経ネットが、2010年夏に、厚生労働省が実施した新事業や制度改正を外部の視点から評価する仕組みを導入する、と報じている。
詳しくは、以下のURLをご覧いただきたい。

新事業・制度改正、外部に評価組織 厚労省
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100111AT3S0600K10012010.html

省内に有識者で構成する外部評価組織を立ち上げること、評価組織は、事業や制度の実態把握を通じて、無駄がないか、制度が有効に機能しているかなどを評価し、効果がないと判断した場合には、廃止や見直しに踏み切るとのこと。きちんと運用されていること=アウトプットに加えて、運用することで所期の効果が上がっていること=アウトカムを確認し、評価することは、とても良いことだし、外部の目をきちんと入れることも大事なことである。また、その結果を事業の継続など=翌年度のインプットに反映する「フィードバックループ」をつくることが、外部評価組織の第1のポイントである。

子ども手当を例にすると、何人に支給したのかがアウトプット。子育て世帯の経済的な負担をどれほど軽減できたのか、子育てへの不安は解消されたのか、出生率の引き上げにどれほど寄与したのかがアウトカム。インプットが子ども手当の支給に必要な予算(事務経費を含む)。評価すべきはアウトカム=成果で、子ども手当の支給を始めるまでに、何を、いつまでに、どのレベルまで引き上げるのかをコミットすべきである。なお、子ども手当の成果を誰にでもわかるように評価するために、できるだけ定量的かつ客観的に把握すべきである。また、インプット=経費と比較して、そのアウトプット=成果を得るために最適な方法だったのかを評価すべきである(コストパフォーマンス=投資効果)。
なお、子育ての不安は、多くの領域に渡るものであり、手当により解消できる不安は、その一部である。アウトカムに「安心して子育てできる社会(子育て中の世帯にアンケートし、定量化する)」や「合計特殊出生率」を持ってくると、子ども手当がどれほど寄与したのかわからなくなる(言ったもの勝ちになってしまう)。政策目標から具体的なサブ目標に展開し、それをどのように実現し、評価するのかを考え、新事業や制度改正の前後で所期の効果が上がっているか否かを確かめる。このような考え方が自然にできる委員を招聘していただきたい。


このブログでは、公知の情報から、厚生労働省や経済産業省などが実施しようとしている事業や制度改正に対する意見を書いてきた。自立支援法や後期高齢者医療制度の「廃止」の検討は、これから本格化する。このブログにとって、これまでの3ヶ月少々は「助走期間」のようなもの。これからも、しっかり評価し、意見を書いていきたい。
長妻大臣および厚生労働省には、有識者からなる外部評価組織に加えて、このブログのようなインターネット上の評価も合わせて活用していただければと思う。

なお、厚生労働省の役人に、省の意図を汲み取ることに長けた「御用学者」で外部評価組織を固められたら、この仕組みの意味がない。外部評価組織の人選が第2のポイントである。長妻大臣が人選に責任を持ち、厚生労働省にとって都合のよい人選(省の制度・政策に批判的でなく、コントロールしやすい人ばかり)になっていないか、外部から意見をきいて確認する必要があるだろう。