弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

審議なき国籍法の改正

2008-12-06 16:44:50 | 日記・コラム
改正国籍法が、与党と民主党などの賛成多数で国会を通過し、法律として成立しました。
この改正法は、最高裁判所が、日本人の父とフィリッピン人の母との間に生まれた子供の国籍取得にあたり、両親が婚姻していないことを理由に国籍取得を認めない旧国籍法は違憲である、という判決を下し、これを受けて法律改正に至ったものです。
(平成20年6月4日最高裁大法廷判決)
確かに、片親が日本人である限り、その子供は日本人として国籍を与えるべきです。
両親が結婚していない、という理由だけで、日本人の子供に日本の国籍取得を認めないのは、憲法第14条が定める「法の下の平等」に違反します。
最高裁判所が下した違憲判断は、十分、評価に値します。
しかし、改正国籍法には問題があります。
母親が外国人の場合、日本人男性が、その子供を自分の子供だと主張して認知した場合、そのまま子供に日本国籍を与えられる、というのが改正国籍法の内容です。
ここでの問題点は、認知をした日本人男性が、本当に、当該外国人女性の子供の父親なのか、ということです。
日本人男性の認知という手続だけで、外国人女性の子供が、日本国籍を取得できてしますことに問題があるのです。
日本人男性と外国人女性の子供とが、本当に親子であるかどうかは、DNA鑑定によって99.999%判明します。
国籍申請の際、「認知」だけが要件で、DNA鑑定など「親子の証明」を要件としていないことが重大な問題なのです。
最高裁判所は、両親が法律上の結婚関係にない、という理由だけで、婚姻中の両親の子供と、国籍取得手続において差別すべきでない、といっているだけなのです。
実際の父親が日本人男性でないのに、外国人女性が子供を産み、認知手続だけを別の日本人男性に任せた場合、両親ともに外国人なのに、その子供はいとも簡単に日本国籍を取得できることになります。
認知手続は、役所への届けだけで成立するから問題なのです。
最近、「偽装認知」という言葉が、世間を騒がしています。
本当の血縁のない父親が、父親と称して子供を認知するのを指します。
「認知」といっても、生まれたての子供ばかりを対象にするばかりではありません。成人であっても、父親から認知を受けていない外国人が、日本人男性と手を組んで、「認知」を金で買うこともできるのです。
最高裁判所は、国籍取得にあたり、婚姻要件を法の下の平等に違反するとしただけで、日本人男性による「認知」さえあれば、外国人に日本国籍を与えて良い、といっているのではないのです。
今回の改正国籍法の制定。
国会議員のうち、どれだけの者が最高裁判所判決を読み、官僚が作成した法案に目を通しているのでしょうか。
国民の代表者は、選挙活動に血眼になっている時間があれば、もっと国会の審議に時間を費やすべきです。
改正国籍法も、ほとんど審理されないまま、法案として国会を通過しているのです。


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4 コメント

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Unknown (問題だというならば)
2008-12-07 06:50:28
あなた弁護士でしょう?
DNA鑑定義務付けが現行法で可能かどうか、すでに多くの人が問題点を指摘しています。
それを論破してはいかがですか?
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やんぬる哉 (憂国)
2008-12-08 13:17:55
その人に国籍を付与するか否かということは、その人の人権に関わる重大事であるとともに、国そのものの根幹に関わる重要な事項であるとも思います。
それを、違憲判決を受けたからと言って、議員の一部から慎重論があっても付け焼き刃的な附帯議決をしただけで、ろくな審議もせず与党も野党も一緒になって安易な改正をしたことは、今の国会そのものが亡国議会であるといえます。
日本の国籍は持っていても、日本人であるという同族意識も、日本の国への帰属意識もなく、中身は完全に中国人や韓国・北朝鮮人という人間が自衛官や公権力の行使を行う公務員になって、防衛上の機密など重大な国家機密を敵性国に漏洩させたり、自治体の議員や首長になって、日本人を排除して在日の外国人を優遇する政策を実施したり、在日の人達を集団でそういう自治体に大量に移住させて、そこが日本の国でありながらさながら中国や北朝鮮の一部と化してしまうような事態を一番懸念しています。
 あまりにも、法の下の平等や権利のみに終始した「脳天気」な法改正だと思います。
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釈迦に説法するようで気が引けるのですが (小倉秀夫)
2008-12-08 17:12:56
川原先生

 現在の死後認知をを含む認知請求訴訟等では,被告たる男性が鑑定資料の提出を拒む等の理由でDNA鑑定が行われない場合においても,他の間接事実等で生物的父子関係が推認される場合に判決による認知がなされます。また,認知請求訴訟の過程で又は任意認知をしない場合には認知請求訴訟を提起する旨の警告を行った段階で,観念して男性が任意認知を渋々行う場合も少なくありません。さらにいえば,大分地裁平成9年11月12日判タ970号225頁のように,DNA鑑定の結果よりも他の間接事実を重んじて父子関係を認めた裁判例もあることは,釈迦に説法の類かと存じます。
 川原先生は,立法論としては,そのような場合に認知された子に日本国籍を与えるべきではなく,認知された子及びその母親を母の本国に強制送還すべきだとのお考えなのでしょうか。

 なお,改正国籍法3条1項においても「二十歳未満」という要件は引き続き課されていますので,「成人であっても、父親から認知を受けていない外国人が、日本人男性と手を組んで、「認知」を金で買うこともできるのです」との点は,改正国籍法との関係では的が外れているように思われます。
返信する
国会がこんな調子では (憂国)
2008-12-10 15:19:15
こんないい加減な内容の法案が安易に成立する今の亡国議会では、もし解散総選挙で民主党に政権交代したら、「外国人地方参政権」もろくな審議もせずにさっさと認めてしまうのでしょうね。
日本が日本人のものではなくなってしまう!

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