弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

【事例】外国人が日本で永住するための在留資格

2013-06-27 14:43:26 | 入国管理法
【設例】
Xはフィリピン人女性である。
来日前にフィリピン人男性Aと結婚し、現在も婚姻中である。
Xはその後来日し、日本人Yと内縁関係になり子Zを生んだが、在留資格はない。
母Xと父Yは、子Zと3人で、日本で永住したい。
しかし、夫Aは怒っている。
どうしたらよいか?

【問】
問1 母Xと子Zが日本にいるために、それぞれどのような資格を取るべきか。
問2 子Zが日本にいるために、どのような手続を履践すべきか。
選択肢
①父Yの子Zに対する任意認知
②夫A・子Z間の親子関係不存在訴訟+父Yの子Zに対する任意認知
③父Yによる子Zの強制認知



【回答】
以下の回答が必ずしも正しいとは限りませんが、最初に考えるべき方策でしょう。

問1
 子Zの実父Yは日本人なので、子Zに日本国籍を取得させることが考えられます。現国籍法3条によれば、出生をしたとき及び申請時に、認知をした父又は母が日本人であれば、その子は日本国籍が取得できます(その他にも要件はありますが割愛)。したがって、子Zに関しては問2で述べるように、父Yからの認知の手続きに入っていきます。
 母Xについては、日本国籍をもつ子Zの親権者として「定住者」の在留資格(在留特別許可)を申請すべきでしょう。なお、母Xは夫Aと婚姻中であるため、これを解消しない限り、父Yの配偶者としての在留資格は取れません。

問2 
 子Zが日本国籍を取得するためには、日本人の実父Yからの認知を得る必要があります。
 そこで選択肢①「父Yの子Zに対する任意認知」が考えられますが、これは不適当です。というのも、子Zには、母Xと婚姻関係にある夫Aの嫡出推定が及んでしまい、父Yが任意認知できないからです。すなわち、父Yが認知するためには、夫Aの嫡出推定を破る必要があります。
 そこで選択肢②「A・Z間の親子関係不存在訴訟+父Yの子Zに対する任意認知」が考えられますが、これも不適当だと思います。なぜなら、夫A・子Z間の親子関係不存在訴訟は被告となる夫Aの所在地に管轄があるので(諸説ありますが原則)、フィリピンで裁判を起こさなければならなくなり、時間・労力・費用が膨らみます。
 したがって、選択肢③「父Yによる子Zの強制認知」が最適な選択だと思われます。すなわち、子Z(親権者たる母X)が父Yに強制認知の調停・審判を起こせば、先決問題としてAと子Zとの間の親子関係も認定され、直接父Yの認知を得られるうえに、被告たる父Yが日本人にいるため、調停・審判も日本で出来るからです。



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日本人と外国人が離婚した場合の外国人の在留資格について

2013-01-18 16:43:12 | 入国管理法
 本日は、入管法についてお話したいと思います。正式名称を出入国管理及び難民認定法と言いますが、ここでは簡単に入管法といいます。同法の目的は、出入国する人々を公正に管理することと規定されています。すなわち、外国人の方を適正・円滑に受け入れる一方、テロリストや犯罪者等の日本に好ましくない外国人の入国・滞在を阻止することにあります。
 たとえば、日本人の配偶者であれば、扶養を受ける配偶者として、「家族滞在」に該当し、在留資格が認められます。
 それでは、日本人と結婚をした外国の方が、子どももいる中で、離婚した場合、その外国人の在留資格はどのようになるでしょうか。
 子どもが日本で育っている場合、子どもの環境を考えても、日本に居続けたいと思うことはあると思います。
 その場合、その外国人が子どもの親権者となっていれば、日本人の実子を扶養する外国人親として、認められるケースがあります。
 しかし、この場合でも、その外国人が独立して生計を営むに足りる資産又は技能を有することが原則となります。
 もっとも、子どもが幼いなどの条件で、その外国人がアルバイトに出るなどができない場合には、生活保護を受けられる可能性もあります。


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在留資格の違い

2012-10-12 14:52:27 | 入国管理法
 本日は、入管法についてお話したいと思います。正式名称を出入国管理及び難民認定法と言いますが、ここでは簡単に入管法といいます。同法の目的は、出入国する人々を公正に管理することと規定されています。すなわち、外国人の方を適正・円滑に受け入れる一方、テロリストや犯罪者等の日本に好ましくない外国人の入国・滞在を阻止することにあります。
 そして、外国人が日本に上陸する際、上陸港で入国審査官が上陸許可の認印を押す際に決定されるのが、「在留資格」と「在留期間」です。外国人が日本に上陸し在留するためには入管法に定める27種類の在留資格のうちいずれか1つを取得しなければなりません。
 ここでは、それらの在留資格のうち、外国人歌手が日本でライブツアーを行う場合、「興行」となります(私が最近外国人歌手のライブに行ったから書いているのではありませんが、一例として)。この在留資格は、演劇・演芸・演奏・スポーツ・商品の宣伝のためのショーに出演する者やこれらの興行に必要な活動を行う者が該当します。よく、テレビ番組で、ハリウッドスターや歌手が、「コンニチハ」だけ覚えて、映画や歌のPRをしている場面を見かけますが、このような場合、「興行」という在留資格が必要でしょうか。必ずしもそうではありません。単なるPR活動で、招へい会社や本人らが全く収入を得ないのであれば、「短期滞在」に該当すると思われます。
 このように、入国する際には、様々な事情を個別に考慮して、出入国する人を公正に管理しているのですね。


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新しい在留管理制度

2012-09-11 16:36:38 | 入国管理法
 みなさん、在留管理制度が新しくなったのをご存じですか?
今までは、日本に在留する外国人の方々は、居住する市区町村に外国人登録をしていました。これを外国人登録制度といいます。
今年の7月から新たな在留管理制度が導入され、それに伴い外国人登録制度は廃止されました。今回は、この新たな在留管理制度を少し紹介したいと思います。
 新たな在留管理制度の狙いは、情報の把握を1つにまとめることにあります。これまで、外国人の方々の情報管理は入国管理官署と市区町村が行っていましたが、これを法務大臣に一本化しました。
法務大臣が責任を持って在留情報を正確に継続して把握することで、住民として必要なサービスの提供等が可能になりました。
これに伴い、在留期間の上限が3年だったところを5年に伸長されたり、1年以内に再入国する場合の再入国許可手続を原則不要とするみなし再入国許可制度の導入など、利便が図られています。
 今まで、外国人の方々は外国人登録証明書を携帯する義務がありましたが、これの代わりに、在留カードが交付されることになりました。これも常時携帯義務があります。
 ここには就労制限の有無や資格外活動許可の有無等も明記されますので、これから、外国人の方を雇用しようと考えておられる場合、在留カードの記載のチェックは必須です。