弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

映画の著作権について

2013-08-28 09:40:47 | 知的財産
 本日は、知的財産権の中でも、皆様になじみのある言葉、「著作権」についてお話したいと思います。
 著作権とは、歴史的には、文芸・学術・美術・音楽の分野において、独創的な思想・感情の表現物に対し、文化の発展に寄与することを目的として、法が与えた権利です。
 そして、著作権は、著作権者に帰属するのが原則です。これは、所有権などと性質が大きく異なります。たとえば、有名な画家が絵画を作成した場合、それを売却すると、その絵画の所有権は、購入者に移ります。しかし、その画家がその絵画によって創作的に表現した著作権については、その画家に帰属したままになっています。そのため、その絵画の複製を作る際、絵画の所有者から複製をもらえばよいというものではなく、その著作権者に対しても、権利を侵害しないように注意が必要なのです。
 但し、映画については、例外規定があります。本来、著作権法上、著作者は創作と同時に著作権を原始取得します。しかし、映画については、例外的に、「その著作者が映画制作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画制作者に帰属する」(著作権法第29条1項)旨規定されています。なぜ映画だけと思うのですが・・・。立法趣旨を調べますと、①従来から、映画の著作物の利用については、映画制作者と著作者との間の契約によって映画制作者が著作権の行使を行うものとされていた実態があったこと、②映画の著作物は、映画制作者が巨額の製作費を投入し、企業活動として製作し公表するという特殊な性格の著作物であること、③映画には、著作者の地位に立ちうる多数の関与者が存在し、それらのすべての者に著作権行使を認めると映画の円滑な市場流通を阻害することとなること等が挙げられています。
映画の製作・創造に関わった人たちの権利を保護するとともに、その映画自体を保護するために、例外規定が置かれたのですね。
 立法者の一人は、映画好きであったろうと邪推していまいますが。



弁護士法人 川原総合法律事務所   
弁護士 川 原 俊 明 
ホームページ http://www.e-bengo.com




知的財産権の基礎

2012-12-28 17:31:30 | 知的財産
 知的財産権とは何でしょうか?あまりピンと来ないかもしれません。知的財産権とは、主として知的創作と経済活動におけるマークに対する排他的独占権の総称です。
 例えば、皆さんがお持ちのパソコンひとつをとっても、パソコンのブランドは商標と呼ばれ、商標権の対象になり、パソコンのデザインは意匠と呼ばれ、意匠権の対象になります。また、パソコンに求められる処理技術は発明、考案と呼ばれ、特許権や実用新案権の対象となり、パソコンのディスプレイに現れる絵や音楽等は著作物と呼ばれ、著作権の対象となります。パソコンのメーカーは商号と呼ばれ、商号権の対象となります。
 この中でも、特許権、実用新案権、意匠権、商標権は、工業所有権と呼ばれ、特許庁における登録を経て、一国において唯一の権利が付与されます。
 著作権は、登録は必要ではなく、創作と同時に発生します。この点は、工業所有権と大きく異なります。
 なお、著作権法は、改正され、今年10月から施行されました。違法アップロードされたファイルをダウンロードする行為が刑罰の対象となります。
 これは国外においてダウンロードする行為にも適用されますので、注意が必要です。



弁護士法人 川原総合法律事務所   
弁護士 川 原 俊 明 
ホームページ http://www.e-bengo.com 

特許をとるべきでない場合

2012-11-16 15:20:34 | 知的財産
 あなたが、何か画期的かつ有用な技術を発明したとします。これは知的財産です。
 あなたはこの財産を守るために、どういった手段をとりますか?

 多くの方は特許を取得するということを考えるのではないのでしょうか。
 たしかに、それはありうる選択肢の一つであり、また、往々にして正しい解答でしょう。
 しかし、場合によっては、特許権を取らず、別の方法を取った方が長期的に見て、発明者の利益となることがあります。
 この別の方法を取っていることで有名なのが、コカ・コーラの原液の製法です。
 コカ・コーラは、その製法が特殊であり、特許を取ってその製法を他社に真似されないようにすることも可能ですが、コカ・コーラ社はこの手段をとっていません。
 なぜならば、特許を取れば、法的に他者がその製法でコーラを作ることを禁じることができますが、その期間は最長で20年です。そして、その製法は公開しなければなりません。
 すなわち、20年経ってしまうと、誰もがコカ・コーラを自由に製造できてしまうのです。
 また、法律で禁じられるとは言え、それを気にせず、海賊版コーラをつくる業者も出てくるでしょう。当該業者には、製造の差止請求や損害賠償請求ができますが、多くの業者に真似されると、差止請求や損害賠償請求には多大な費用・時間・労力が必要となります。
 さらに、万一、発明内容を公開して特許出願したにも関わらず、特許庁に特許取得要件がないと判断されてしまうと、公開損です。
 以上のとおり、特許の出願には様々なリスクが生じます。
そこで考えられる特許以外の手段とは、簡単に言えば、「ひたすら秘密にする」、というものです。これを「営業秘密」といいます。
 何か肩すかしを食らった解答に思われるかも知れません。秘密にできるなら他者にばれないのは当然だからです。
 しかし、これは秘密にしておけば他者に当該発明がバレないという事実上の話だけをしているのではありません。万一、当該秘密がバレて他者が無断でその秘密を利用した場合、特許を取得していなくても法的に差止請求や損害賠償請求をできるのです(不正競争防止法2条、3条、4条)。
 ただし、企業としてはこの秘密ときちんと外部に漏れないような管理体制をとる必要があります。
 コカ・コーラ社もコーラの原液の製法を厳重に管理しており、一説によれば、同製法を知っているのは、この世に二人だけとも言われています。
 また、特許を取得していれば、偶然同じ発明をした人に対しても、法的措置をとれますが、営業秘密では偶然同じ発明をした人に文句は言えません。
その他、特許と営業秘密では要件や効果に差異がありますので、あなたが何かを発明したときにはどちらの手段を選択するのがあなたの利益になるか、長期的に見てしっかり考えてみましょう。
 なお、これは都市伝説ですが、コカ・コーラ社では、原液の製法を途絶えさせないために、製法を知る二人が飛行機に乗ることを社則で禁じているとの噂です。


弁護士法人 川原総合法律事務所   
弁護士 川 原 俊 明 
ホームページ http://www.e-bengo.com




実用新案権とは

2012-07-05 13:50:29 | 知的財産
             
発明家になりたい、と思ったことはありませんか?
 世紀に残る大発明をして、特許を取得するのが夢、などという研究者もおられるかもしれません。
しかし、特許権は、産業の発達に寄与する大発明といったところですので、一般人には、少しハードルが高め。日用品などに若干の工夫を加えたら、使い勝手がよい物が生まれました、という程度であれば、「発明」のチャンスがもっと広がるのになぁ・・・というところではないでしょうか。
 このような小発明を保護するのが、実用新案法によって規定される実用新案権です。
実用新案権は、特許権と同様、登録によって権利が発生します。登録というからには、登録要件があるわけですが、実用新案権は、いわゆる「無審査主義」を採用しているため、要件を満たしていない出願でも実用新案権が登録されます(出願書類や手数料の納付等の形式的な審査はありますのでご注意を!)。
 ですから、今日からあなたも、自称発明家になれるわけです。
 もっとも、登録要件を欠く実用新案権は、あとで第三者から、無効審判を請求され、無効となってしまう可能性があります。そうなると、実用新案権は、初めから存在しなかったものとみなされてしまいます・・・。
 そうなってしまえば元も子もありませんが、「実用新案権」の存在が、人々の創作意欲を掻き立て、便利な日常生活に一役買っていることは間違いなさそうです。失敗をおそれずに、アイデアを出し続ける人間でありたいものですね。