弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

最新の生殖補助医療と親子関係について

2017-12-27 10:20:38 | 家事事件手続法
平成29年12月15日、奈良家庭裁判所において、
夫婦生活を送っていたときに準備していた冷凍受精卵を、
別居後に母(妻)が父(夫)に無断で移植・利用し、
出産したことについて(夫婦はその後離婚)、父と生ま
れた子の間に父子関係が認められるかの判決が出されました。
判決によると、「別居中とはいえ、(今回出産した子の兄
である)男児を交え、夫婦で交流があったこと」を指摘し、
夫婦としての実態が失われていなかったとして「父の同意は
なかったが、当時は婚姻中のため、法律上の親子関係がある」
という判断を示しました。
一方で、すでに最高裁判所によって、「父(夫)の死後に、
夫の冷凍精子を用いて生まれた子と、父との間に、父子関係
は認められない。」と判断し、確立しています。
 上記の2件は、それぞれ別の事案であり、関連するもので
はありませんが、現行民法の「妻が婚姻中に妊娠した子は夫
の子」と推定する民法の嫡出(ちゃくしゅつ)推定規定
(民法772条1項)を基本として判断しているものと思わ
れます。
 しかし、現行民法は、最新の生殖補助医療の利用を前提と
した親族関係について規定しているものではなく、また体外
受精させた受精卵の利用等についても学会の倫理規定などは
存在するものの、法的なルールは存在しません。
 生殖補助医療技術の進歩は、少子化に悩む日本にとって
非常に重要な点ではありますが、それに伴う親子関係につ
いて、法律の整備を急ぐ必要があると思われます。



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慰謝料の相場

2016-02-12 17:11:49 | 家事事件手続法
 男女トラブル・離婚問題の事件処理をしていくうえにおいて、
「慰謝料」についてのご質問が非常に多いです。

「慰謝料はいくらが妥当なんでしょう?」
そもそもの前提として、
慰謝料が認められるためには、

・浮気・不倫をした
・DVをした
・モラハラ(モラルハラスメント=精神的な暴力)をした
・生活費を渡さない
・理由もないのに同居を拒否する
・セックスレスである

このような事情が必要となります。

慰謝料の性質は、
不貞行為を行った「けじめ」としての賠償の意味合いがあります。
傷ついた心に対する賠償であるならば、
1億円もらったとしても納得できない!!
というご意見も至極真っ当であると思います。
しかし現実問題として、1億円の慰謝料請求など、
一般的には認められません。
では、いくらくらいが妥当なのでしょうか。


実は、法律的に、慰謝料の相場、
というものどこにも書いてありません。
本人同士が話し合い、自由に金額設定することが可能なのです。
とはいえ、それでは話も進まないだろうと、

裁判所がだいたいの相場を決めています。


☆不倫・浮気を原因とする慰謝料
→100万~300万程度
☆DVやモラハラが原因とする慰謝料
→50万~300万程度
などが一つの基準となっています。


もちろん、婚姻期間や、
相手方の年収や職業、年齢などにより、
高めの慰謝料設定がされることもあります。
同じ理由で低めに設定されることもあります。

また、証拠があるかどうか、という点に関しては、
そもそも慰謝料請求が可能かどうか、
という点にも大きく影響します。


当事務所は、6000件を超える解決事例をベースとした、
お一人お一人に応じた慰謝料請求をすることが可能です。


慰謝料のことでご質問ございましたら
当事務所までお問い合わせください。


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家事調停の強制力

2013-02-26 16:31:21 | 家事事件手続法
相手方と離婚等について話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所で「家事調停」という手続を行うことができます。
この家事調停で成立した内容(調停条項)は強制力を持ちますので、例えば、相手方が約束した未成年者の面会交流を行ってくれない場合には、⑴履行の勧告、⑵間接強制、⑶損害賠償請求、の手段を取ることができます。
 履行勧告とは、相手方が子供の面会を実現してくれないことを家庭裁判所に申し立てれば、家庭裁判所が相手方を説得してくれるというものです。
 間接強制とは、相手方が面会交流を拒否するごとに、違約金を支払わせるものです。1回面会交流を拒否するごとにだいたい3万円から5万円の違約金を支払わせることが多いです。ただし、間接強制は、調停条項の記載方法によっては利用できないことがあるので、調停を成立させるときには条項の記載方法に注意しましょう。
 最後に、約束を守らない相手方を相手取り、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起することができます。この訴訟は必ずしも認められるものではありませんが、最近ではこれを認める裁判も出てきているので、やる価値はあるでしょう。
 いずれにせよ、専門家抜きに相手方に調停条項をきちんと守らせるのは難しいかも知れません。一度、弁護士に相談してみて下さい。



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新しい家事事件手続法

2012-12-14 10:09:46 | 家事事件手続法
 相手方と離婚等について話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所で「家事調停」という手続を行うことができます。
 家事調停とは、家庭裁判所が当事者の間に入って、話し合いを進める手続であり、基本的に、家事審判官(裁判官)1人と家事調停員2人(男女1人ずつ)が当事者の話し合いの手助けをしてくれます。
 この家事調停の手続についてこれまでは家事審判法や家事審判規則が定めていましたが、新たに平成25年1月1日から家事事件手続法が施行されます。
 家事事件手続法が施行されることで、これまでの手続とはいくつか異なることが出てきます。
 例えば、これまでは、夫は東京に住んでいて、調停も東京で行われているが奥さんは大阪に住んでいた場合、奥さんが毎回東京に出向くことはとても重い負担でした。しかし、今回の法の施行により、電話・テレビを使って遠隔地にいながら話し合いができるようになり、時間と労力が軽減されることになりました(法54条)。
 また、これまでは、調停を申し立てた内容が、書面としては相手方のもとに届いていませんでしたが、今後は、申立書がきちんと相手方のもとに届き、どのようなことが争点になっているのか相手方も事前に把握できるようになりました(法67条1項)。
 他にも改善点はいくつもあり、より家事調停を利用しやすくなりますので、当事者間で解決できない離婚等の案件がありましたら是非ご利用下さい。


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