弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

ロースクール制度崩壊!

2012-09-13 10:53:17 | 日記・コラム
2012年度の司法試験合格発表がありました。



法務省が発表したロースクール(大学院)別合格者数から分析すると明らかに旧司法試験対策予備校型ロースクールからの合格者が多いのです。ここに問題があります。本来、旧司法試験制度を廃し、ロースクール制度を設けた目的は「偏った法律家」を排除するためでした。廃止間近の旧司法試験では、法律科目だけに限定されていました。私たちの司法試験受験時代は、受験科目として教養科目の選択が必須でした。おかげで、私は心理学を必死に勉強することになり、その成果が、後の弁護士実務にとても役に立っています。
しかも旧司法試験制度の末期は、司法試験予備校が繁盛し、試験テクニックに長けたものが早く合格するなど、実に問題のある制度になりさがっていました。 極端なことをいえば、司法試験合格者といえども、基本六法のひとつである民法でさえも試験問題によく出題される分野は理解していても、そうでない分野をそれほど理解していなくても合格する、というテクニック優先の試験となってしまいました。
しかしながら私たち法律家が扱う紛争は、複雑な人間社会での出来事です。決して司法試験に出しやすい分野で発生するものばかりではありません。司法試験問題の出題の仕方にも問題があります。司法試験からどんな人材を法曹として養成すべきか、という基本的視点から出題すべきでした。
テクニックに陥った試験制度を改めるべきである。この観点からロースクール制度が設けられ新司法試験制度に移行したはずです。
ロースクールでは、法学部で法律をある程度学んできた「既習者」とそれ以外の分野の人たちの「未習者」にコースが分かれています。これは、法律しか頭にない偏った法律家をできるだけ排し、法律以外の分野でも社会性のある多様な人材を法曹として送りだそうと意図したものでした。
 しかし現実はまったく理想とかけ離れています。
ロースクールの多くは、司法試験合格者を多く出さないと大学院としての経営が成り立たない。合格者を多くだすためには「既習者」を多くロースクールに取り込んだ方が手っ取り早いのです。反面、「未習者」を多く入学させると合格率が下がるという現実があります。これらの事情を背景にして、ロースクール制度本来の目的である多様な人材育成のための「未習者」養成がおろそかになっています。目的と手段が逆になっているのです。
「未習者」の合格率低下傾向は司法試験委員による出題内容にも問題があります。「既習者」ほどに法律になじんでいない「未習者」を対象に、旧司法試験なみに法律を勉強しなければ受からない問題しか出さないのですから。制度と矛盾しています。ロースクールの一方では、予備試験名目の旧司法試験の復活。
ロースクール制度は、明らかにひずみがでています。出直すべきです。
これを推進した日本弁護士連合会にも大きな責任があります‼


弁護士法人 川原総合法律事務所   
弁護士 川 原 俊 明 
ホームページ http://www.e-bengo.com 


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3 コメント

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BLOGOSにて拝読しした。 (清高)
2012-09-13 19:55:21
思うところを。

「旧司法試験制度の末期は、司法試験予備校が繁盛し、試験テクニックに長けたものが早く合格する(中略)極端なことをいえば、司法試験合格者といえども、基本六法のひとつである民法でさえも試験問題によく出題される分野は理解していても、そうでない分野をそれほど理解していなくても合格する、というテクニック優先の試験となってしまいました」→これがユーザーにとって悪いかはわからないでしょう。試験に出ない分野は、たいてい問題になっていない分野とも言えるし。試験に出ない法律分野も結構多いし。

教養科目の勉強は、予備試験ならあるようです。法務省HPより。http://goo.gl/D7v3S 

となると、たしかに、川原先生の説は妥当だと思います。
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Unknown (Unknown)
2012-09-16 01:05:01
法科大学院そのものとは関係ないのですが、旧司法試験時代の予備校において「まともな」講師の用いるテクニックとは基本的な判例を条文を交えて押さえたり、最新の判例を覚えたりといったことだと思いますが、別に悪いことではなかったと思います。法律家としてまず最初に押さえるべきことの一つでしょう。
別に受かる前から重箱の隅をつつく勉強や多くの美しき学説ばかり勉強しても仕方ないのではないでしょうか。基本知識をベースに合格してから自分のとって必要な分野をより実務的に勉強していけばよいのではないかと思います。
先生の思っていらっしゃるようなテクニックばかり追求され小手先の勉強ばかりしていた人は意外と時間がかかっていましたよ。ちなみに。
旧司法試験末期に非常に若くして合格されたかつ優秀な方の勉強方法を聞いてみてください。存じ上げる限りいわゆる小手先のテクニックなどばかり使ってはいませんよ。そして、現在でも有能な弁護士や裁判官として活躍されています。

なお、上の方が書いているように予備試験が教養試験もあって昔の先生がご受験されたという旧司法試験に近いのであればそちらで統一でいいのではないですか?
どちらも受けたことも見たこともないのでどこがどう違うのか全く分かりませんが。
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Unknown (才谷梅太郎)
2012-10-09 13:24:09
「偏った法律家」の意味するところが分からんけんど、法律家自体が日常生活からかなり偏った存在ぜよ。
法律家は医者や科学者などと同様専門家じゃきぃ、一般的な多様性より法律の専門性を重視されるべきじゃなかね?
自動車運転免許証を持つ者の殆どは自動車教習所に通い実地試験免除で試験場に行くじゃろ。免許を獲れば道交法など無視する現状を見れば、試験は合格が目的化されその後の本質が軽減されがちになる。
法律家も真に優勝な人材だけを受からせることが改革に繋がる正攻法じゃきぃ、奇をてらったり飛び道具を使って逃げてはいけない。
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