弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

コリアン家族法においての配偶者の代襲相続

2012-05-09 17:09:57 | コリアン家族法
 お父さんが死んだ場合には、当然その子どもに相続権が発生します。
 では、お父さんが死亡する前に、その子どもが死んでいた場合に、その子どもの子ども(お父さんの孫)に相続権が発生するでしょうか?
 答えは、発生します。
 「お父さん→子ども」の順番で死亡すれば、最終的にお父さんの遺産が孫にも行くのに、「子ども→お父さん」の順番で死亡すると孫が遺産をもらえないというのは、不公平だからです。
 これを代襲相続と言います(日本民法887条第2項)。
 では、お父さんが死んだ場合の、子どもの奥さん(配偶者)はどうでしょうか?
 まずは日本の話をします。
 「お父さん→子ども」の順番で死亡した場合、すなわち、お父さんが死亡し、その子どもがその遺産をもらい、その後子どもが死亡すれば、子どもの配偶者は、子どもの相続人としてその遺産をもらえます。
 しかし、「子ども→お父さん」の順番で死亡した場合、すなわち、先に子どもが死んでからお父さんが死亡した場合、子どもの配偶者には遺産が行かないことになっています(代襲相続の否定)。日本には根拠となる条文がないからです。
 では、韓国ではどうでしょうか?
 韓国では、「お父さん→子ども」の順番で死亡しても、「子ども→お父さん」の順番で死亡しても、子どもの配偶者にお父さんの遺産が行くことになります(代襲相続の肯定)(韓国民法1003条第2項)。
 この点においては、日本よりも韓国の方が、配偶者すなわち夫婦関係が優遇されていることになります。
 ただし、日本においても韓国においても、お母さん(お父さんの配偶者)がお父さんよりも早く死亡した場合、お父さんの遺産についてお母さん側の相続人(例えばお母さんのお母さん=お父さんの義理の母)には代襲相続されません。
 お父さんにとって、お母さん側の相続人は、本来関係のない人間で、お父さんの遺産をもらうべき人間とは考えられていないからだと思われます。
 韓国法においては、子どもが死亡したときのその配偶者の代襲相続と、配偶者が死亡したときのその相続人の代襲相続を混同しないように注意して下さい。

韓国人が死亡した際の相続放棄の注意点

2012-02-27 15:46:39 | コリアン家族法
 相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったことになりますので、被相続人(亡くなられた方)が多くの負債を抱えていた場合や、相続人の一人に全財産を相続させる場合などに利用されます。
 被相続人が韓国国籍の方の場合、その相続手続は、原則として韓国法によることになります(法適用通則法36条)。
 韓国民法では、相続の開始があったことを知った日から原則3か月以内(熟慮期間)に放棄することができ(韓国民法1019条1項)、韓国の家庭法院に申告することが必要となります(韓国民法1041条)。
 日本民法でも、原則3か月の熟慮期間(民法915条1項)及び家庭裁判所への申述が必要である(民法938条)点は同様です。
 しかし、日本の最高裁判所の判例では、一定の場合には、被相続人に財産(負債も含む)があると知ったときから熟慮期間が始まるのに対し、韓国大法院の判例では、財産(負債を含む)の存在を知らなければ熟慮期間が進行しない訳ではないとされており、起算点に違いがあります。韓国法の方が日本法より厳格ですので注意が必要です。
 被相続人が日本に住んでいた場合などは、日本の家庭裁判所に放棄の申述をすることができますが、韓国内の財産には効力が及びません。韓国内に財産がある場合には、韓国の家庭法院に対して相続放棄の申告をする必要がある点も注意が必要です。

日本人と韓国人の子ども

2012-02-17 10:07:35 | コリアン家族法
 日本人と韓国人の夫婦の子どもの国籍は、日本国籍と韓国国籍のどちらになるのでしょうか。
 まず、日本国籍法によれば、両親のどちらか一方が日本人であれば、子は日本国籍を取得します。
 また、韓国国籍法によっても、両親のどちらか一方が韓国人であれば、子は韓国国籍を取得します。
 すなわち、日本人と韓国人の夫婦の子どもは日本国籍と韓国国籍の両方を取得します。いわゆる二重国籍です。
 では、その子はずっと二重国籍かと言えばそうではありません。
 まず、日本国籍法によれば、二重国籍者は満22歳までに国籍を選択しなければならず、満22歳までに選択しない者は、法務大臣の催告の上、なお選択しなければ、日本国籍を失うこととされています。
 また、韓国国籍法によれば、二重国籍者は満22歳までに国籍を選択しなければならず、満22歳までに選択しない者は、法務部長官からの選択命令の上、なお選択しなければ、韓国籍を失うこととされています。
 以上をまとめると、日本人と韓国人の夫婦の子どもは、当初日韓の二重国籍をもち、満22歳までに日本籍と韓国籍のどちらの国籍を持つかを選択し、その後は選択した国籍を持つということになります。

日本と韓国の離婚においての違い

2012-02-10 09:34:09 | コリアン家族法
1、裁判離婚における離婚原因について
⑴ 韓国・日本に共通する離婚原因
 ①配偶者の不貞行為、②配偶者からの悪意の遺棄、③配偶者の3年以上の生死の不明、④その他離婚を継続 しがたい重大な事由があるとき
⑵ 韓国法にあって日本法にない離婚原因
 ①配偶者またはその直系尊属から甚だしく不当な待遇を受けたとき、②自己の直系尊属が配偶者から甚だしく不当な待遇を受けたとき
 「不当な待遇」とは、身体・精神に対する虐待又は名誉に対する侮辱を意味し、「甚だしく」とは、配偶者の一方が夫婦の同居生活の継続に対して苦痛を感じる程度を意味します。
⑶ 日本法にあって韓国法にない規定
 ①配偶者が強度の精神病かかり、回復の見込みがないとき
  韓国法と日本法では、離婚原因について⑵、⑶のような違いがあります。
2、離婚請求権について
  韓国法では、①不貞行為が離婚原因となった場合は、不貞行為を事後に宥恕したときや、不貞行為の事実を知った日から6か月経過したときや、不貞行為があった日から2年経過したときに、②婚姻を継続することが困難な重大な事由が原因となっている場合は、その事由を知った日から6か月経過したとき、離婚請求権は消滅すると規定されています。
 一方、日本法には、このような規定はありませんので、韓国法を準拠法にする場合にはこの点に注意が必要です。
3、子の氏
  日本法では、夫婦の離婚に際して、子の氏を変更する手続きが規定されていますが、韓国法には、そのような規定はありません。また、韓国法では、原則として子の姓・本(父系血統の始祖が現れた場所をいう。)は、父の姓と本に従うとされていますので、離婚により、子の姓と本が変わることはありません。そこで、子の姓を母の姓に変えたい場合は、例外として認められている子の福利のために姓と本を変更する必要があるときにあたるとして、子の姓と本の変更許可を求める審判を申し立てる必要があります。 
 このように、韓国法と日本法にはさまざまな違いがあり、また、本人の国籍や居住地、争いの相手の国籍や居住地によっても準拠法や手続法が異なってきますので、何かわからないことがあれば、弁護士にご相談ください。