弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

新司法試験制度の問題点

2013-09-14 15:50:09 | 日記・コラム
 今年の司法試験合格率26.8%。新司法試験発足時、ロースクール卒業後の受験者に対する合格率予測が7割から8割の鳴り物入りで出発しました。ところが、こんな高い合格率は達成したこともなく、むしろ低下傾向にあります。 
 理想と現実のギャップは余りにもひどいものがあります。これでは優秀な人材が司法界から消えてしまいます。三権分立とされる国の権力機構のなかで、チェック機能を働かせる立場にある司法が弱体するようでは、平和で安全な社会の構築維持できなくなります。
 さらに、予備試験制度の途中発足も問題でしょう。
問題と言っても新司法試験制度に対する疑問です。ロースクールに入らなければ司法試験を受けさせない、という制度を作っておきながら、途中から、ロースクールにいかなくても受験させます、というのはすでに入学しているロースクール生に対する欺罔です。これだけを見てもロースクール制度そのものが崩壊しています。こんなことならば、もともとロースクール制度が不要だったのではないか、と言えなくもありません。文科省は、「入試の競争倍率が2倍未満」「3年連続で司法試験合格率が半分未満」などの基準に基づき、18校のロースクールに対する補助金を削減する方針です。
 しかし、その前提となる合格率も問題です。
ロースクールには、法学部出身など法律を学んできたものを対象とする既習コースと、本来のロースクール制度趣旨に沿った幅広く多様な人材を法曹に送り込む未習コースとがあります。試験内容は同じなので合格率は当然既習コース組が高くなります。ところが、マスコミ発表はこれを合体したかたちで報道しています。その数値が世間のそれぞれのロースクールの評価に繋がってしまいます。結果はどうなるか。ロースクールは、合格率を上げるために既習コースに多く入学させ、未習コース入学者を極力抑えようとします。
 ロースクールが合格率を高く維持しようとすれば、既習コース生に以前の司法試験予備校と同じ勉強をさせてしまうことになりかねません。ロースクールの合格率も既習コースと未習コースを分けて発表すべきです。今回合格者数の上位ロースクールの慶応、東大、中央のいずれも既習合格者が圧倒的です。合格者上位校の中でも早稲田は既習と未習をほぼ同じくらいに合格者を出しています。未習合格者だけで見ると圧倒的にトップです。本来の新司法試験制度に沿ったロースクールは早稲田が一番であり、ロースクールはそうあるべきでしょう。合格率の偏った報道はロースクール制度を歪めます。


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