http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20131013-567-OYT1T00639.html 2013年10月14日(月)11:33
(読売新聞)
愛媛県大洲市長浜町の沖合13キロの伊予灘に浮かぶ青島は「猫の島」だ。
島は東西1・5キロ、南北0・5キロ。島民15人に対し、100匹以上の猫がすむ。9月下旬にインターネットで紹介されると、全国から観光客が訪れるようになった。民宿、食堂はおろか自動販売機もない島は「猫好きにはたまらない楽園」と人気を呼びそうだ。
島民は50~80歳代。漁師が4人いて、あとの大半は年金暮らしの人たちだ。戦時中に疎開者が増え、人口のピークは1960年の655人。その後、働き口を求め人々は島を出た。現在、朝夕各1往復の定期船が四国本島との唯一の足だ。
島民らによると、人口が50人を割った10年ほど前から、逆に猫は増えた。置き去りになった飼い猫が繁殖したらしい。隠れるのにいい空き家が多く、車は1台もないので事故に遭う危険はない。漁師の男性(63)は「家に入ってきて困る時もあるが、増えてしまったものはしょうがない」と鷹揚だ。
晴れた日、数十匹が塀の陰で寝そべり、人が来ると餌を求めて集まる。この様子を撮った写真がインターネットで流れ、ブログなどに次々転載された。同市役所長浜支所に「行き方を教えて」と問い合わせが入り、土曜、日曜だった9月28、29両日、静岡、奈良、山口などから約30人が訪れた。
今月6日、夫婦や一人旅の女性ら8人が島に渡り、写真を撮ったり、餌をやったりして猫と触れあった。
広島県三原市の主婦(50)は、前日は大洲市内に泊まり、朝の船で島へ。夕方までの約9時間、滞在した。「こんなにたくさんいるなんて期待以上。何にもなくても気にならない」と興奮気味だった。
香川県さぬき市の大学生(23)は「ありのままの猫の暮らしが感じられる」と満足げだ。
一方、定期船の船長(62)は「観光客が毎週、来ることなんてなかった。猫しかいない島なのに」と不思議がる。
同支所地域振興課の都築祐司係長(41)は話す。「客が増えるなら、猫をテーマに観光できるように対応を考えたい。ゴミを捨てない、餌をやり過ぎないといったマナーは守ってほしい」(松本裕平)
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「猫の島」は国内外にあり、観光振興に生かされているところもある。
宮城県石巻市の田代島は、島民86人に対し、約100匹の猫が暮らす。漁師は猫を大漁の神様とあがめ、猫神社もある。猫の写真コンテストも開催されている。
地中海に浮かぶマルタ島(マルタ共和国)は、中世にネズミよけとして船に乗せた猫が増え、人口の倍の約80万匹がいるとされる。
年間約2万人の日本人が訪れ、猫が目的の人も多い。同国の出先機関・マルタ観光局(東京)は2011年から、観光客に、中世の騎士団姿の人気キャラクター「ハローキティ」をあしらったボールペンなどを進呈。島内では、ボランティアが運営する保護施設で餌やりもできる。