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これを読め! #002 ~高熱隧道~

2011年11月22日 17時01分34秒 | Books


黒部ダムってご存知ですか?
富山県の黒部渓谷に作られた、土木建造物としては
非常に評価されている巨大なダムです。
その建造には黒部渓谷の厳しい自然環境ゆえ、
それはそれは困難を極めたのだそうです。

そもそも黒部渓谷はその豊富な雨量と急峻な高低差などから
水力発電の電源開発地として大正時代より注目されていたそうで
その時代から調査を兼ねた入山が行われていたのだといいます。

そのために作られた水平歩道と呼ばれる道(道といえるのか?)があり
戦後に建造された黒部ダムより以前、戦前にはじまった仙人谷ダムの建造には
この水平歩道を人力でもって資材などを運び込んでいたのだそうです。

物語はこの仙人谷ダム建造にまつわる隧道工事と水路工事が舞台。

資材運搬のため、破格の運賃で雇われたボッカ(運搬夫)たちは、
賃金欲しさにこぞって重い荷を担ぎたがり、中には150kgもの資材を背負った者も。
そうした荷を天井や岸壁に引っ掛けてしまい、足を滑らせて落下するという事故も頻発。
水平歩道で命を落とした者だけでもかなりの人数だったといいます。


↑水平歩道。右側は奈落です。

さらには泡雪崩という特殊な雪崩が5階建ての宿舎の3階以上を
建物の形を保ったまま600m以上も吹き飛ばし、80名以上の死者・行方不明者を出す。
岩盤温度は摂氏160℃を超え、発破用ダイナマイトが自然発火。作業員を肉片に変えていく。
灼熱の坑内で作業できる限界は20分。あるものは発狂し、死んでいく。
累計300人以上の殉職者を出したこの難工事は再三にわたる警察の中止命令が出ます。

それでも戦争に突入していく日本は、工業力の増強と
そこに必要とされる電力確保の狙いから、人の命は軽んじられ、工事は続行。
トンネル貫通に熱意を燃やすゼネコン幹部たち。命を賭して工事に従事する人夫。
軋轢、恐怖、不安、孤独、欲望、絶望、使命感…
さまざまな思いが交錯する中、トンネルは貫通。

物語は事実の記録を織り交ぜながらフィクションの登場人物によって構成されます。

このブログにもちょくちょく出てくる相模湖の相模ダムも
戦前に建造がスタート。戦争により一時中断されたものの
完工までには多くの朝鮮人労働者が殉職したといいます。

こんなふうな壮絶な仕事現場は今でも少なくないでしょう。
読後はいままで感じたことのない想いがこみ上げましたよ…