定期的に顔を合わせなくなって久しいのに
会いたい
顔が見たい
声を聞きたい
こんなことを未だに思う自分が気持ち悪い。
引き出しの中
彼から取り上げた煙草
一本分だけすき間の空いた箱
私の記憶の彼に
煙草のにおいは無いけど
紛れもなく彼が持ってたものだから
ずっと捨てきれずにまだ引き出しの中。
懐かしいな
あのころに戻りたいかと聞かれると微妙だけど
痛いことの方が多かったけど
あれはあれでいい思い出ではあった
と もう少し経てば言えるかも知れない。
彼は
どんな気持ちで
紫煙をくゆらせてたんだろう。
辞めさせて
本当に良かったんだろうか。
来年 ここを出るときには
どうしようか。
持って行こうか
向こう行っても未練持つなんて気持ち悪いだろ
処分するのか
でもそれもつらいな
じゃあ
じゃあ
吸ってみようか?
一本分スペースの空いたその隣から引き抜いて
彼はどんな風に持ってたんだろうとか思いながら指で挟んで
ライターどこ行っちゃったのかなとか思いながら火をつけて
目を閉じて 吸ってみる。
ま ず っ
うっわー 喉痛い
瞬時に消えうせたセンチメンタル。
自分の境遇とこれを思い立ったおめでたい思考に笑ってしまう。
なんでみんな
こんなものをおいしそうに吸うんだろ
辺りに害煙を撒き散らす外部不経済な存在で
その人の内部まで蝕んで
文字通り煙たがられる
なんだ 自分 煙草と同類じゃん
これなしじゃいられないって人がいないことを除けば