暗やみ照らせるなら歌う
読売水曜夕刊「ポップスタイル」でコラムを連載しているファンキーモンキーベイビーズのファンキー加藤=写真左=から、東日本巨大地震に遭遇した体験が寄せられた。
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3月11日。僕たちは福島県の柳津中学校で行った卒業式ライブの後、郡山駅から新幹線に乗り込んだ。その十数分後、急に停電。激しい揺れに見舞われた。救出されるまでの約11時間、薄暗い車内で、絶えず襲う余震の恐怖と厳しい寒さに震えながら、小さなブランケットにくるまっていた。
僕たちは地元の東京都八王子市と協議し、義援金の口座を開設。ブランケットやタオルなどを支援物資として市に委託した。一個人としてやるべきことは分かっていたが、「ミュージシャン」として今は何をすべきなのか迷っていた。食事もままならない被災地の方々に音楽なんて不必要なんじゃないか。テレビのニュースを見る度に、僕は音楽の力を疑ってしまい、自分の無力さに落ち込んだ。
震災から1週間後、「MUSIC STATION」(テレビ朝日系)の出演が決まった。自粛ムードの中で、初の生放送の音楽番組。その一番手として僕たちが歌うことになった。たくさんの思いを込めて歌った。マイクを持つ手が震え、涙があふれ出るほどに。
終了後、僕のブログにはすごい数の書き込みがあった。被災地からのコメントもたくさんあった。皆、感動した、勇気が出た、と言ってくれた。僕自身が見失いそうになっていた音楽の力を、周りの皆が認めてくれたのだ。たとえわずかな光でも、暗やみを照らすことができるなら、僕は歌を歌おう。そう力強く決意した。
(2011年3月24日
読売新聞)
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