
コースは勿論ですが、21日間に及ぶグランツールはチーム力が大きくモノをいうレースです。ワンデーレースや1週間ほどのステージレースとは違い、3週間で3000㎞を越える距離を走るのはグランツールと呼ばれるジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・エスパーニャの3つだけですが、このグランツールで強さを見せるのがヴィスマ・リアースバイクなのです。

メインスポンサーのユンボが撤退した昨年はログリッジの移籍などもあり、グランツールは未勝利に終わりましたが、2023年にはログリッジ、ヴィンゲゴー、クスという3名の選手で全てのグランツールを征しているのです。今年も移籍で獲得したサイモン・イエーツでジロを征しています。それも1ステージで一発逆転をしてみせたのです。ステージ1勝もしていないサイモンがマリアローザを獲得していることを考えれば、明らかにチームの作戦勝ちといえるでしょう。

同じことが2022年のツールでも起きています。21歳という若さでマイヨジョーヌを獲得し、22歳という最年少でツール連覇を果たしたタディ・ポガチャルが、ティレーノ~アドリアティコでヴィンゲゴーを大差で退け、3連覇は確実と見られていましたが、ユンボ・ヴィスマ(現チーム ヴィスマ・リースアバイク)の硬い戦略を、最後まで打ち崩すことはできず、ヴィンゲゴーに敗れることになったのです。

確かにあの頃のポガチャルには若さがあったしUAEのチーム力も今ほど充実してはいませんでした。ただ、エースのログリッジではなく2020年にブエルタでグランツールデビューを飾ったものの、翌2021年のツールでポガチャルの2位という成績を残すまで無名に近かったヴィンゲゴーでポガチャルを負かすという偉業を成せたのはチーム力の高さ故でしょう。

2022年のツールではワウト・ファンアールトのマイヨジョーヌ獲得に始まり、ポガチャルが連勝でマイヨジョーヌを奪還するも、アルプスの超級山岳に入るとヴィスマの総攻撃が始まります。ログリッジとヴィンゲゴーの交互のアタックに反応を余儀なくされたポガチャルがついに失速し、マイヨジョーヌはヴィンゲゴーの元へ移ったのです。

このステージではファンアールトとラポルトが逃げに乗り、1級山岳テレグラフ峠ではティシュ・ベノートがヨナス・ヴィンゲゴーを連れてアタック。ポガチャルが追うことに。下りではプリモシュ・ログリッチがアタック。そしてガリビエ峠の麓ではログリッチとヴィンゲゴーが2人で連続アタックを繰り広げ、ポガチャルのアシストはゼロ。そこに前から落ちて来たファンアールトとラポルトが合流し1対4になり、勝負ありでした。