goo blog サービス終了のお知らせ 

CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

マリアローザの行方(3)

2025-05-25 15:00:25 | ジロ・デ・イタリア
 今年のジロ・デ・イタリアの2週目が今日で終わります。いよいよ本格的なマリアローザ争いが始まるのですが、どうやら第9ステージでマリアローザを手にしたアイザック・デルトロがマリアローザ姿のまま最終週へ突入する公算が大きくなっています。15ステージに向けての繋区間と見られていた第14ステージは雨中の落車により、総合上位の成績がシャッフルされる結果になりました。

 総合2位に付けていたアユソが3位へ、総合3位のティベーリは8位へと後退し、サイモン・イエーツが総合2位、カラパスが総合4位へとジャンプアップ。特に山岳に強いカラパスの総合表彰台も夢ではなくなっています。昨年のツールでも後半の山岳で躍動したカラパスでしたが、あの時は序盤に大きくタイムを失いマイヨジョーヌ争いからは既に脱落していたのです。それでも果敢にポガチャルやヴィンゲゴーに挑んで見せたカラパスなら、きっと上位争いが出来るはずです。

 気になるのはUAEのアユソでしょう。今のところデルトロがマリアローザを手にしているので目立ちませんが、このステージでもUAEチーム・エミュレーツの動きは妙でした。本来ならマリアローザを守るべきチームメイトがデルトロの傍には誰もいなかったからです。

 後半の勝負所でヴィスマが懸命にサイモン・イエーツを守りながら先行していたのに対し、UAE勢の姿はデルトロ一人という状況でした。追走集団分裂の原因になった落車は集団前方で起き、UAEで落車事態に巻き込まれたのはデルトロだけでした。ただ、雨に濡れた石畳での落車で足止めを食った選手は加速に時間を要し、大きな分断が起きてしまったのです。

 落車直後には一度はヴィスマが牽引する追走集団から遅れたデルトロは自分だけの力で戻っていたのです。その結果がアユソとの1分4秒というタイム差になってしまったのです。ティベーリはさらに1分後方でゴールすることになりました。本来ならUAEはヴィスマのサイモンをマークする必要があったのですが、ログリッジをマークしていて、デルトロはサイモンの抑えという役割を担っていたように見えました。

 UAEとしてアユソの最大のライバルはログリッジと考えるのは当然ですが、それにしても雨の中での位置取りが悪過ぎました。デルトロにはポガチャルのような危機回避能力が高いのかもしれません。マリアローザを獲得した第9ステージでもデルトロの直後で落車が起きているのです。今回もデルトロは落車に巻き込まれ1度脚を止めているのですが、怪我無く追走集団に復帰を果たしているのですから。

 アユソはチームメイトと後方に置かれ、アシストが懸命にログリッジのいる集団までアユソを戻しますが、ここでログリッジのいる集団からも遅れていること自体が不思議なのです。ここまでを見る限りアユソがエースのように見えますが、デルトロとアユソのタイム差が1分20秒もあるので、アユソを囮にデルトロで勝ちに行く作戦も十分に考えられます。
 デルトロは昨年のブエルタを総合36位で完走しています。2度目のグランツールで今年21歳のデルトロの経験値の浅さは気になりますが、ポガチャルがいきなりマイヨジョーヌを手にしたのも21歳だったのです。勿論、前の年のブエルタでいきなり総合3位だったポガチャルとは比較は出来ませんが、間違いなくアユソより調子が良いのは間違いないでしょう。経験の少ないTTでこそタイムを失っていますが、それ以外ではタイムを失っていないのですから。

 UAEがあからさまにエース交代を指示すことにあまりメリットは無いので、あくまでもデルトロを自由に走らせ、ライバルがデルトロに反応した隙にアユソで攻撃に出ることを考えているはずです。ライバル達がアユソをマークすればデルトロがタイムを稼げるという作戦も成り立つはずです。
 落車で後続を引き離すことに成功したヴィスマですが、サイモン・イエーツが山岳でどこまでの走りを見せられるのか?実力的にはログリッジやアユソの力が上なので、UAEがしっかりログリッジをマークし続ければ、チームとしてのマリアローザの可能性はかなり高いと見ています。今回の奇襲に近い攻撃でアユソやログリッジからタイムを奪うことには成功したサイモンですが、マリアローザのデルトロとのタイム差は変わらずという結果なのです。問題はマリアローザがアユソなのかデルトロなのかでしょう。
 アユソとログリッジのタイム差は1分弱、デルトロとは2分23秒なので、ログリッジとしても両方をマークせざるを得ないので、アシストに係る負担も結構大きくなります。ジャイ・ヒンドレーを欠く布陣でどこまで戦えるのかという疑問も残ります。
 個人的には表彰台の残りのひとつを巡る攻防が見物になると見ています。その有力候補はやはりカラパスでしょう。マリアローザを獲得した2019年のような訳にはいきませんが、昨年のツールを見ても山岳ではビッグ4に次ぐ実力者なのは間違いありません。バーレーンのティベーリも有力ですが、今季未勝利というのが気になります。
 




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Supersix EVOがジロで2勝目

2025-05-25 12:04:21 | ジロ・デ・イタリア
 アルバニアをスタートしたジロ・デ・イタリア2025はイタリアを経由してスロベニアへ入る第14ステージは波乱となりました。スタート時は晴天だったものの途中から雨が降り出し、最後の周回コースの路面は完全なウェット状態になっていました。

 スタート直後の1時間は平均速度が51㎞/hを越える超ハイペースの中から4名の逃げが出来、プロトンとの差も1分前後で推移していました。誰もが逃げは吸収されゴールスプリントになると見ていたと思いますが、街中の周回コースの石畳で落車が発生。追走集団の前方でオーバースピードのバーレーン・ヴィクトリアスの選手がスリップして落車。それにリドル・トレックの選手たちが巻き込まれ、追走集団は幾つかに分断してしまいました。

 懸命に追走するヴィスマ・リアースバイク勢は脚を緩めることはせず、総合2位のアユソや優勝候補のログリッジ等が1分近く遅れます。さらに総合3位に付けていたアントニオ・ティベーリはさらに1分後方に取り残されることになりました。
 勝負所の山岳ステージではなく、平坦ステージで総合成績が入れ替わるのは異例中の異例でしょう。総合優勝を狙うサイモン・イエーツを残していたヴィスマはワウト・ファンアールトが懸命な牽引を見せ、一度は15秒ほどまでタイムを詰めますが、ウェットな街中のコースではそれが精一杯でした。

 ワウトも加わり時速61kmまで達したアタック合戦を生き残ったEF・エデュケーション・イージーポストのカスパー・アスグリーンが最後に3名迄絞られた逃げグループから飛び出しジロ初優勝を飾りました。チームで唯一人TT用のエアロヘルメットを着用し、最初から逃げを狙っていたベテランが、第11ステージのリチャル・カラパスに続くチーム2勝目を見事に飾って見せたのです。勿論、バイクは第4世代のSupersix EVOです。

 クイックステップ時代にはツール・ド・フランスでもステージ優勝経験があり、TTが得意で独走力の高い選手でしたが、レムコ・エヴェプールの台頭もあり、今季からEFへ移籍した選手です。このステージではカラパスも追走グループ内でゴールし、総合順位を4位にまで上げています。
 Cannondaleは且つてマリオ・チポリーニの時代にアルミロードのCAADシリーズを駆りジロで勝ちまくっていたメーカーでしたが、カーボン化の流れに乗り遅れ、ようやくカーボンロードとペーター・サガンの登場で復活したと思ったらサガンを資金力のあるスペシャライズドに持っていかれてしまったのです。

 資金力に乏しく、一時は自社でチームを維持しなければならない時代もあり、選手層がどんどん薄くなってしまっていたのです。それがEFエデュケーションがメインスポンサーとなり、有力な若手を育成する一方で、カラパスやアスグリーンのようなベテランを補強することで、少しずつチームに厚みを作ってきているようです。加えてバイクの進化も素晴らしく、ようやくグランツールでもステージなら勝てる状況になって来ています。
 




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SuSupersix EVOがジロも征す

2025-05-22 13:57:23 | ジロ・デ・イタリア
 ジロ・デ・イタリアの第11ステージは前日の個人TTでタイムを失っていたEFエデュケーション・イージーポストのリチャル・カラパスが総合優勝した2019年以来となるジロのステージ優勝を飾りました。グランツールでも昨年のツール第17ステージ以来の優勝です。

 2019年にジロで総合優勝を果たしているカラパスですが、当時はモビスターに所属し、バイクはCANYONのUltimate CFでした。この優勝で翌年イネオスへ移籍するも、ポガチャルやヴィンゲゴーとログリッジの台頭でその後のグランツールでは彼らの後塵を拝することになるのです。ピナレロのドグマがカラパス向きではなかったのかもしれません。

 心機一転、2023年に今のEFへカラパスが移籍したのは、cannondaleがこの年に発表した第4世代のSupersix EVOに魅力を感じてのことかもしれません。ツール・ド・フランスで第4世代のSupersix EVOの広告塔になるはずでしたが、残念ながら第2ステージの落車で早々にリタイヤしていたのです。第4世代のSupersix EVOは市場でも評価の高いバイクでしたが、なかなかグランツールでは勝てない時期が続きます。

 昨年も早々に総合争いからは脱落したものの、後半の山岳ステージで奮闘を見せ、ポガチャルやヴィンゲゴー、エヴェネプールにログリッジがいる中でステージ優勝に加え山岳賞まで獲得し、第4世代のSupersix EVOが登りに強いバイクというインパクトを残こすことに成功するのです。長い長い1年でした。
 ロードバイクのエアロ化が進む中でも山岳に強いバイクとそうでないバイクがあるのも事実で、平地では圧倒的に強いCANYONのAEROAD CFRですが、やはり厳しい登りではアドバンテージは無いようです。ピナレロのドグマも同様でしょう。モビスター時代のカラパスは軽量のUltimate CFを使用していたのです。バルベルデはAEROAD CFも使っていた時代でした。

 登りが厳しいとされるジロ・デ・イタリアですが、今のところコルナゴのV5Rsが1・2で、3位アントニオ・ティベーリはメリダのREACTOではなく軽量のSCULTURAを使用しています。4位のサイモン・イエーツはサーベロのS5を使用していると思われます。5位のログリッジはスペシャライズドのS-WORKS TARMAC SL8です。丘陵ステージでのスプリントでは圧倒的に強かったTREK Madone Gen8は山岳ステージでは勢いが無いように見えます。

 TOP10に4台が揃うコルナゴのV5RsはV4Rsの進化モデルですが、この強さは驚異的です。ポガチャルが乗ればどんなバイクでも勝てるとは思いますが、ポガチャル不在のグランツールでもこの成績なのですから。

 一方、ここまであまり目立ってこなかったSupersix EVOの本格的な出番はこれからになるはずです。昨年はワールドランキング12位と奮闘したEFですが、今季はパウレスとヒーリーの勝利はありましたが、ここまで14位とパッとしない成績でした。カラパスにはもう少し頑張ってもらって、出来れば総合表彰台を狙ってもらいたいと願っています。やはり、自分が乗っているバイクが世界のトップレースで活躍するのは嬉しいものですから。昨年のジロはシュタインハウザーの1勝のみに終わっているので、カラパスにはせめてもう1勝を期待してしまいます。
 




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マリアローザの行方(2)

2025-05-21 13:52:31 | ジロ・デ・イタリア
 同じことがUAEで起きることは無いと思います。これまでもアユソの移籍話が出ることはありました。確かにポガチャルという絶対的エースがいるので、万が一アユソが移籍しても当時のヴィスマほどのダメージは無いとは思います。ただ、チームとしてはわざわざライバルを増やすことはデメリットではあるのですから、UAEはヴィスマの二の舞になることはないと思っています。

 チームとしてある程度アユソとデルトロを自由に競わせると見ていますが、昨日の個人TTを見る限りアユソにもエースとしての意地があり、自分の力でエースの証明をしようとしているようでした。雨の中の厳しいレースでしたが、デルトロとのタイム差を1分近く詰めてみせたのですから。

 ログリッジとのタイム差は縮まってしまいましたが、TOP7に4名の名を並べたUAEチーム・エミュレーツが圧倒的に有利なはずです。ジャイ・ヒンドレーを落車で欠き、第9ステージでもアシストが1枚で遅れてしまったログリッジが最終週の山岳でUAEの厚い壁を破れるとは考え辛いのです。

 個人TTではログリッジの力だけでタイム差を埋めましたが、厳しい山岳ではアシストの力はどうしても必要ですから、ログリッジにとっては厳しい状況には変わりがないでしょう。今日の第11ステージは逃げ切りも可能なコースですが、UAEがマリアローザを手にしている限り、きちんと集団コントロールするはずなので、ログリッジがタイムを稼ぐのは難しくなるはずです。

 2週目の山場は第16ステージになると思います。獲得標高5000mの山岳コースで、ゴールは1級山岳サンタ・バルバラ(距離12.7km/平均8.3%)の山頂。標高は1300mほどなのでアユソ向きかもしれませんが、ここでデルトロが大きく遅れることも想像できません。ただ、タイム差は僅か25秒なので、どこかで意図的にマリアローザをアユソにバトンタッチしてくる可能性もあります。

 昨年のブエルタでは6分以上の大差をひっくり返したログリッジですが、今回は相手が違います。ヴォルタ・カタルーニャでのアユソとはデットヒートで最終的なタイム差はわずか28秒でした。今回のジロはチームもTOP7に4人揃えるという世界最強のUAEチーム・エミュレーツですから、チーム力でもかなり厳しいと見ています。総合3位のアントニオ・ティベーリはティレノ・アドレアティコではアユソに敗れていますし、4位のサイモン・イエーツに至ってはティレノ・アドレアティコでもヴォルタ・カタルーニャでもアユソに完敗しているので総合争いに加わるのは厳しいはずです。

 個人TTの頑張りで5位まで順位を上げてきたログリッジですが、2022年のツールであのポガチャルを負かしたユンボ・ヴィスマのようなチームとしての攻撃を受ける可能性が考えられるのです。7位のアダム・イエーツとログリッジの差は1分も無いので、山岳でアダムが動いてもログリッジがマークしなければいけない状況なのです。

 6位と7位はチームメイトで、8位がジュリオ・チッコーネです。リエージュ・バストーニュ・リエージュこそポガチャルの2位と健闘を見せましたが、ティレノ・アドレアティコではアユソに完敗しています。6位のサイモン・イエーツに至ってはティレノ・アドレアティコでもヴォルタ・カタルーニャでもアユソに完敗しているので総合争いに加わるのは厳しいはずです。

 個人TTで9位まで順位を落としたEFのカラパスが最終週の山岳では一番怖い存在になるかもしれません。昨年ツールの山岳賞獲得者で2019年のジロの覇者でもあるのですから。この時の2位がニーバリ、3位がログリッジだったのです。2022年もジャイ・ヒンドレーに敗れ2位でしたが、そのヒンドレーは落車でリタイヤしているのです。ただ、全盛期は過ぎているのでマリアローザというより、総合表彰台狙いになる可能性が高いと見ています。
 復活の兆しのあるエガン・ベルナルもチーム力があるので注目の選手ですが、流石に総合争いは厳しいと見ています。結局、マリアローザはUAEのアユソとログリッジの争いになって行きそうです。
 




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マリアローザの行方(1)

2025-05-20 15:01:33 | ジロ・デ・イタリア
 昨年のジロ・デ・イタリアは第2ステージからポガチャルが着続けたマリアローザですが、今年は1周目を終えて既に4人が袖を通している混戦模様になっています。アルバニアをスタートし丘陵ステージでリドル・トレックのマッズ・ピーダスンがステージ3勝と大活躍を見せました。デンマーク人のマリアローザは初めてというのは驚きでした。デンマークといえばヨナス・ヴィンゲゴーという偉大な選手がいるのですが、彼がこれまで1度もジロに出場していなかった結果でしょう。

 9戦中3勝を挙げているピーダスンのマリアローザ着用日数は5日間で、第2ステージの個人TTで2位、第7ステージ4位に入ったログリッジが2度、逃げが決まった第8ステージではアスタナのディエゴ・ウリッシに渡り、第9ステージでは何と21歳のメキシカン・デルトロへと渡っているのです。

 35歳のベテラン・ウリッシのマリアローザは人生初、21歳のデルトロのマリアローザは今世紀最年少という記録付の偉業でした。昨日は2度目の休養日で今日は2度目の個人TTですが、デルトロと総合2位アユソとのタイム差は1分以上あるので28.6㎞のTTでは総合順位のシャッフルはあるものの、大きな落車でも無い限りマリアローザの移動は無いと思います。

 ただ、気になるのがUAEチーム・エミュレーツ内のエース問題です。TOP10内にデルトロ、アユソ、マクナルティにアダム・イエーツと4人もいるUAEならではの悩みでしょう。最大のライバル・ログリッジより上位に4人も選手がいるUAEが圧倒的に有利なことは間違いありません。ただ、チーム内がぎくしゃくするとマリアローザを獲得出来ても、後に禍根を残してしまうこともあるからです。

 代表的なの例は2023年のブエルタでのユンボ・ヴィスマでしょう。ログリッジ、ヴィンゲゴーのWエースで臨んだはずか、アシストのセップ・クスがマイヨロホを獲得してからチームの雰囲気が変わって行きました。チームは最初の内は選手任せにしていたのですが、チームメイト同士のバトルが起こると世間が騒ぎ始めます。それを気にしたチームがクスをエースと決めると、ログリッジが反発し、翌年の移籍へと繋がってしまうのです。

 2023年にはログリッジ、ヴィンゲゴー、クスの3名で3大グランツール完全制覇という偉業を成し遂げたヴィスマでしたが、メインスポンサーのユンボが撤退し、ログリッジがチームを去ると、昨年は無冠に終わります。移籍したログリッジがブエルタを総合優勝しているので、ログリッジの移籍の影響は大きかったと見ています。
 




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする