500% KITANO
「たけし」が「たけし」に出会う
■監督・脚本・編集 北野武
■キャスト ビートたけし(北野武)、京野ことみ、岸本加世子、大杉漣、寺島進
□オフィシャルサイト 『TAKESHIS’』
大物タレントとして日々忙しく過ごしているビートたけしは、いわゆるセレブな大スター。 一方、そんなたけしと外見がそっくりの北野は、しがないコンビニ店員。 売れない役者としてオーディションを受けまくっているものの、受かったためしがない。 ある日の、北野はビートたけしに出会った。 北野はビートたけしからサインをもらうが、この出会いをきっかけに、北野はビートたけしの映画の世界へと入り込んでいくのだった。
おススメ度 ⇒★★☆ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★
今年のベネチア国際映画祭でサプライズ上映されたこの作品、北野作品最新作だが、誰も知らない間にしかもお得意の時間をかけない撮り口で、あっという間に作り上げた作品だ。 しかもベネチアにはまるで監禁状態で、何も出来なかったことは、北野監督が自らの番組でその時の模様を映像を見ながら語っていた。 いつもよりも自作のプロモーションのためにマスコミに登場していたし、口数もこの映画が一番多かったような気がした。
これは北野武監督の芸人“ビートたけし”への鎮魂歌なのか?回顧録なのか?
今頃になってボディブローが効いてきたような感じがする。 映画を観終わった時は何の味覚も感じなかったのだが、この映画を公開初日に観たのに、なんとなく今頃少しずつ味が出てきたような気がする。
これは、良い映画かつまらない映画か。 そういう観点から観る映画では決してないような気がする。 監督「北野武」が芸人「ビートたけし」をダミーに、ある意味客観的に一人の男を使い過去からの人生論を語っているのではないだろうか。 あるいは語らせたかったのではないのだろうか。
そして監督「北野武」の過去を払拭するために撮った映画ではないのだろうか。 もし払拭したいと考えたのなら、北野組ではないテイストとキャスティングにしたほうがよかったのではないだろうか・・・。
監督自身が今になってもシャイで斜に構える人生を送ってきて、それでもいまだに監督にはなりきれず芸人の色を隠しきれない演出に、振り返った人生を重ねる。 それはある意味自虐的な要素も含まれているが、回顧と言うよりどこか壊滅(払拭)させたい気持ちが強かったのではないだろうか。 ペンキ屋のせがれはやっぱしペンキ屋で、兄貴が優秀で自分は出来損ない、そんな気持ちがどこかにあり、それを含めて払拭したかった気持ちがこの映画に映し出されているように感じて仕方がない。
今、「切ない」映画だったんだなぁと朧気に思えるのだ。
外人の映画評論家が、武の映画はあのバイク事故を境に変化したと言っているインタビューをTVで観た。 別に何も変わっていないと思う。 監督自身は何も左右されていない。 観る側の我々が彼の大きな事故による暗雲を引きずっているだけのことだ。
歯切れの悪い感想かもしれないし、感想になっていないのかもしれない。
もしかしたらこれは、今後監督「北野武」が撮る映画の復習と予習を兼ねた作品なのかもしれない。
僕が北野武を好きなのは、浅草出身の芸人なのに、彼の中には“上方”という武自身の底辺に流れる憧れみたいなものが存在するところである。 東京バリバリ下町人なのに、彼には何故か上方芸人の色合いが昔からある。 それは全盛期の漫才であったり、上方芸人とのやり取りの中に感じるものがあったからである。 実際、彼の奥さんは上方出身の人であるし・・・。
余談になるが、彼の生まれ育ったのは東京は足立区梅島。 僕も東京に来てからこの梅島(正確には梅田だったが)に長く住んでいた。 直接武の家に行ったことはないが、この付近には元キャンディーズのスーちゃん(田中好子)や女優の小川真由美の実家もあった。
・・・この映画、次の北野作品を観たときに、改めて振り返って語れる作品なのかもしれない。
これで一区切りということなので、次の一作が本当に楽しみになってきました!
出来ればドンパチは止める方向で行っていただきたいなぁ。
苦手なの(笑)
武監督に遊び心があるなら別な振り返り方もあったと思うのですが(笑)
ドンパチは・・・たぶんなくならないでしょ^^
cyazさんはこの映画をどのように観るのか気になってたんですよ。どういう感想を持つだろうって。
この映画ってほんと観る人によって感じ方がいろいろあっておもしろいです。
TBさせていただきますので。それでは。
自分で読み返してみると、感想にはならなかったレビューですね(笑)?!
ま、次作に期待を~ って感じでしょうか^^
>彼の中には“上方”という武自身の底辺に流れる憧れみたいなものが存在するところである。
たけしの存在って、東西の笑いのクロスオーバーにいる気がします。関西の笑いとがっぷり四つでぶつかったひょうきん族、そして近年ではライバルだった志村けんとのコラボ等。彼の笑いの中では全てがボーダーレスなのかもしれません。
>彼の笑いの中では全てがボーダーレスなのかもしれません
そうですね^^確かにそうかもしれませんね!
で、今まであまり好んでは、北野作品見てないんですが、この映画見てから「キッズ・リターン」、「ドールズ」と他の作品もちょろちょろ見てみると、ストーリーもいいし、映像の切り取り方が、絵画的でいいですね。
>映像の切り取り方が、絵画的でいいですね
初期の作品は勢いで撮ったという印象でしたが、黒澤監督との出会いが彼の作風を変えたんだと思います。
役者たけしとして黒澤作品に出て欲しかったですねぇ~♪
いろいろ評判を聞いていたので、構えて行ったのですが、おもしろかったと思います。「映画」でしか表現できなかったことかもしれないけど、アブストラクトの絵画よりは、ずっと庶民的で解りやすかったんじゃないでしょうか。こういうことやってくれる人がいないと、逆につまらないかもしれないし(笑)。
TBとコメントをありがとうございました。
>アブストラクトの絵画よりは、ずっと庶民的で解りやすかったんじゃないでしょうか
なるほど、そうかもしれませんね^^
でも、次回作を観てから判断したい部分が僕の中にはありますね(笑) ?!