Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

S1-1 Abu Dhabi(後篇)

2012-12-16 08:23:37 | 日記
CABIN PRESSURE最新作(シリーズ4)は現在製作真っ最中。
本日12月16日は、2回目の公開録音がロンドンで行われます。

聞くところによると、この無料の公開録音には17,000もの応募があり、
オークションで販売された(本来)無料のチケットに、100万円以上(!)の値がついたとか。
人気のほどがうかがえますね。



お待たせしました。「アブダビ(後篇)」をお送りします。

  ↓

キャロリン: オーケイ、「チーム・役立たず」、遅刻だわ。
マーティン:だってきみを待っていたから、、
キャロリン: 黙って聞きなさい。ブリーフィングよ。ダグラスは往路、マーチンは復路。アブダビ上空は晴れ、代替はバーレーン。
マーティン:キャロリン、それはさっき僕が、、
キャロリン: 黙って聞きなさいって言ったでしょ。代替はバーレーン。でももちろん代替空港は不要ね。今日こそMJN社は利益を出すのよ。おバカなパイロットのための福祉事業じゃなくてね。あら、ダメ、ちょっと待って。(車が停まる)マーティン、ダグラスと席を替わりなさい。
マーティン:ええっ?
キャロリン: 彼は背が高すぎて後ろが見えないのよ。ほら、早く、早く!
マーティン:信じられない、、
キャロリン: 私が一つ数を数える間に、、いち!


ダグラス:この大荷物を見ろよ。カーペットに花瓶に蓄熱ヒーター。
マーティン:なぜアブダビで蓄熱ヒーターが必要なんだろう?
ダグラス:そりゃ、蓄える熱がたくさんあるからさ。
マーティン:よし、完了。アーサー、終わったよ。
アーサー:今行くよ、スキッパー。
マーティン:そっちで何してるの?
アーサー:猫をなだめているとこ。(猫の叫び声) ああっ!
マーティン:おい、どうした?
アーサー:僕、、失敗しちゃった。
ダグラス:大変だ。大丈夫か?
アーサー:うん。いいヤツなんだ、本当は。ちょっと遊んでただけで。
マーティン:豹のまねをしてるとか?
ダグラス:その檻から手を出してひっかくなんて、無理だと思っていたが。
アーサー:僕もそう思ってたけど。出来るんだね。
マーティン:傷を縫い合わせて元通りにしたいかい?
アーサー:ううん、大丈夫だよ、たぶん。ここはもうおしまい?
ダグラス:そのようだ。それでは退屈な飛行機飛ばしと参りますか。
アーサー:あ、そうだ。そのことで聞きたいんだけど、スキッパー。母さんが今朝言ってたんだけど、飛行機が飛ぶのは、翼があるからだって。
ダグラス:あの女に知らないことなんてあるのか?
アーサー:でも詳しく教えてくれなくて。どうして翼があれば飛ぶの?
ダグラス:それはだな、、
マーティン:あのね、ダグラス、彼は僕に聞いているんだ。よく聞いてくれ、アーサー。翼は上がふくらんでいて、下はまっすぐなんだ。空気が翼にあたると2つに分かれる。上のほうが距離がある分、空気はより速く流れて翼の終わりで下の空気と一緒になろうとする。そうすると上の気圧が低くなり、よって揚力が生まれる。
アーサー:すごいや。ありがとう、スキッパー。やっと分かったよ。
マーティン:どういたしまして。
アーサー:でも、どうしてなの?
マーティン:なにがどうしてなんだい?
アーサー:どうして上の空気は下の空気と一緒になろうとするの? わかれたままじゃダメなの?
ダグラス:子供たちのためにかな。


マーティン:燃料システム、チェック?
ダグラス:チェック。
マーティン:油圧系統、チェック?
ダグラス:チェック。
マーティン: 無線中継機、チェック?
ダグラス:ピクニックのテーブルクロスなみに。
マーティン:おおむね飛行機は壊れてない?
ダグラス:飛行機は、確認できる範囲では、故障なし。
マーティン:よし。じゃあ見回りに行くよ。
ダグラス:貨物室の温度を確認するのを忘れずに、、、
マーティン:忘れるわけないだろう。ダグラス、誰が指揮官だか、もう一度おさらいしようか?
ダグラス:もしかしてきみかね、クィーグ艦長?。
マーティン:クィーグ? 今思いついた名前なんだろ?


(無線)
管制塔:ボンジュール、G-T-I。進路3-4-0を維持。
ダグラス:メ、ウィ、モナミ。交信終了。(無線オフ)
マーティン:離陸後のチェック完了したよ、ダグラス。
ダグラス:ありがとう、機長、パーキンス。
マーティン:もう、いいかげんにしてくれ、ダグラス。
ダグラス:なにが?
マーティン:ああ、そうさ、僕はパーキンス機長なんて知らない。これで満足かい?「フィクションのキャプテン」ゲームもきみの勝ちだ。でもそれは、オックスフォードのイートン・カレッジで舟を漕ぎながら“パーキンスくんの冒険”なんて本を読む代わりに、僕は“パイロットのための気象学”を再読して、赤色の下線を引いていたからなんだよ。分かった?
ダグラス:分かったよ。これで落ち着いたか?
マーティン:うん。
ダグラス:よし。さっき私が言ったのは、ありがとう、機長。パーキンス、ブライアン・バーキンス。
マーティン:あ、そうか。ハンラハン。


(ドアが開く音)
アーサー:ランチの準備ができたよ。
ダグラス:すばらしい。今日のメニューはなんだい?
アーサー:おいしいのが満載。僕がたっぷり時間をかけたんだ。
マーティン:アーサー、それってきみが時間をかけて、ケータリングの美味なる食事の蓋を外してくれたって意味だろう?
ダグラス:公平にいって、それがすごくありがたいな。
アーサー:あの、それがね、母さんがケータリングの費用を節約したいって。で、僕は貨物便だとあまりすることがないから、食事を作るよう言われて。
マーティン:彼女が?本気で? いったいきみは何を作ったんだ?
アーサー:うん、2人にそれぞれ別の食事を。まず一人目は、これ。
マーティン:うそ!
アーサー:名づけて、オレンジ色料理。
ダグラス:本当に?なぜそんな名前なんだろう。
アーサー:それはね、料理が全部、、
ダグラス:うん、アーサー。見れば分かるよ。
マーティン:どうやったらマッシュポテトがオレンジ色になるの?
アーサー:豆カレーを作った同じ鍋で料理するんだ。
マーティン:で、二人目は?
アーサー:これこそ僕の自慢料理。ジャーン、びっくりライス。
ダグラス:驚いた!
マーティン:この、、つぶつぶはなに?
アーサー:ああ、スキッパー、こう言ってよければ、その質問に答えたらびっくりライスにならないよ。
ダグラス:アーサー、別々の食事を用意するのは、2人同時に食中毒にならないためにだ。2人それぞれに別々の方法で毒をもっては意味がないだろう。
アーサー:からかわないでよ。僕、頑張ったんだから。
マーティン:それが一番恐れていることなんだよ。アーサー、悪いけど、これは人道的に破棄して、何か食べられるものを探してきてくれないか? ダグラス、無線を頼む。(無線)キャロリン、いったい何を考えてるんだ?
キャロリン: どうしたの? アーサーったら、もう今夜のホテルの話をしちゃったの?到着するまで待つよう言ったのに。
マーティン:何?違うよ。ホテルがどうしたの?
キャロリン: あら、何でもないのよ、きっと気に入るわ。古き良きアラブって感じで。それで、どうしたの?
マーティン:食事さ、キャロリン。僕たちは難しくて危険をともなう仕事をしている熟練したプロなんだよ。まともなケータリングが必要だ。 
キャロリン: プロならブリストルへは行きません。周りの人に聞いてみなさい。プロなら貨物室の温度を確認し忘れたりしません。そういえば、ちゃんと確認した?
マーティン:はい、はい、もちろんしたさ。30秒おきにみんなに注意されてるのに忘れられるかい? 見回りの最初にも、見回りの最後にもチェックしたよ。ちゃんと、エアコンはオフになってる。
ダグラス:オン。
マーティン:なんだって?
ダグラス:サーが言ったのはオンだ。当然オンさ。おっと、無線を切らなきゃ、キャロリン。山が接近中。じゃあね!(無線オフ)
マーティン:ダグラス、これって中途半端な復讐なのかい?そうだとしても無意味だよ。彼女が信じると思うのか、僕がわざとエアコンをオンにしたと?
ダグラス:どうしてかって?それはきっと彼女がそう期待しているからさ。貨物室には猫がいたりするだろう。
マーティン:そうか。
ダグラス:私は注意しようとしてたんだぞ。
マーティン:しまった!
ダグラス:うむ。
マーティン:死んじゃったかな?
ダグラス:いやいや、大丈夫さ、今はまだ。
マーティン:大変だ!
ダグラス:ちょっと寒がっているかもな。
マーティン:フライト時間はどれくらい?
ダグラス:8時間弱。
マーティン:高度3万4千フィート上空のエアコンなしの貨物室で、猫ってどのくらい生きられるんだろう。
ダグラス:ああ、昔は答えを知っていたんだがなぁ。パブ・クイズでいつも出題されているのに。
マーティン:分かったよ。
ダグラス:えっと、3時間28分かな。それともあれはイタチが潜水艦の中で、だったかな?
マーティン:知らないんだね?
ダグラス:残念ながらね。でも8時間は期待しすぎじゃないかな。
マーティン:ああ、どうしよう! 僕はお客の猫を殺しちゃうんだ。
ダグラス:どうやらそうなりそうだ。
マーティン:お客の猫は殺せないよ。
ダグラス:確かに。
マーティン:どうすればいい?
ダグラス:もちろん、それは、、
マーティン:できないよ。迂回はできない。彼女につかまるよ、ナイフをもった彼女に。
ダグラス:だがこのままでは顧客の猫が凍死する。
マーティン:それもナイフだ、大きなナイフ。もし、もしこのまま飛んで、ダメだったとしたら、どうやって死んだかみんなに分かるかな?
ダグラス:またしても私の動物病理学の知識を過大評価しているようだ。
マーティン:でも、ばれないだろう? だって、氷の塊になったりはしないでしょ?
ダグラス:漫画じゃないんだぞ。
マーティン:つまり、猫専門のCSIが押しかけてきたりとか。
ダグラス:それはないだろう。彼らは最近とても忙しそうだから。
マーティン:つまり、猫には災難だけど、でも1万ポンドかけて迂回するのは高すぎるだろう?
ダグラス::そうだな、それにキャロリンがね。
マーティン:それとナイフだ。うん。それで、どう思う? 妥当だろう?妥当だよね、ね?
ダグラス:それは司令官の判断次第です、サー。あなた次第だ。
(ドアの開く音)
アーサー:ほら、ビスケットとのど飴があったよ。誰がどっちをとる?
ダグラス:今回は二人ともビスケットを食べる危険をおかしてみよう。
アーサー:スキッパー、きみ、大丈夫?
マーティン:ああ。
アーサー:本当に?顔色悪いよ。まだびっくりライスを食べてもいないのに。
マーティン:大丈夫だ。
アーサー:そうかな? なんだか、、
ダグラス:アーサー、さっきどうして空気が一緒になろうとするのかって質問していたね。
アーサー:うん。知ってるの?
ダグラス:ああ、そうだ。聞きたまえ。空気が翼を通り過ぎるのではなく、翼が空気の中を通るんだ。翼が空気を切り裂くと、気圧の差が生じ、揚力が生まれて機体が上がる。重力は押し戻そうとするから、揚力が重力より強い限り、我々は飛ぶことができる。これが飛行機が飛ぶ理由だ。
アーサー:了解。すごい、ありがとう。今度こそ理解できたよ。
ダグラス:よかったな。ちゃんとした先生につけば、簡単に理解できるんだ。
アーサー:だから飛行機は宙返りできないんだね?
ダグラス:ん?いや、できるよ。
アーサー:できるの?
ダグラス:もちろん可能さ。アクロバット飛行を見たことないのか?
アーサー:でも、逆さだとふくらんでる翼が下になるわけでしょ? そうすると揚力も重力も飛行機を下げちゃう。どうなってるの?
マーティン:そうだ、ダグラス。どうなってるの?
ダグラス:それはな、アーサー、簡単に説明できる。でもその前に、マーティン、さっきの話の続きだが、全てきみ次第なんだぞ、貨物室の猫を凍死させるかどうかは。
アーサー:なんだって!?
マーティン:ダグラス!
アーサー:スキッパー!
ダグラス:誰も私の説明を聞きたがらないのか。そりゃ残念。
アーサー:どうして? どうしてそんなことを?
マーティン:わざとじゃないんだ、アーサー。
アーサー:じゃあどうして?
マーティン:もしかすると、貨物室のエアコンがオンになっていなかったからかも。
ダグラス:見事な受動態の使い方だ。
アーサー:でも、スキッパー、高いところを飛ぶほど寒くなるんだよ。
マーティン:そうさ、ありがとう、化学博士。
アーサー:だから早くエアコンをつけないと。
マーティン:グッドアイデアだ、頼むよ。ちょっと翼の上に出てそこから貨物室のドアを開けて、中に飛び込んでスイッチオン。
アーサー:オーケイ。どこから翼に出れば、、
マーティン:冗談だよ!
アーサー:あ、そうだ、いいこと思いついた。迂回しようよ。いますぐ着陸したら、猫は助かるかも。
ダグラス:すばらしいぞ、アーサー。どうしてこれを思いつかなかったんだろうね、マーティン?
マーティン:アーサー、あの猫には悪いけど、迂回にはものすごくお金がかかるんだ。きみの母さんがこれについてどう思っているか、覚えているだろう?
アーサー:うん。うん。でもさ、あいつかわいいチビで、、
マーティン:いや、あれはイカれた猫だよ。自分を見てご覧、アーサー。傷だらけじゃないか。
アーサー:うん。そうかもね。でも、すごく寒くなるし。
マーティン:ああ、
アーサー:そして、、死んじゃうんだよ。
マーティン:そうか、僕に迂回しろと言うんだな。そういうことかい?ノルマンディのどこかに着陸しろと。そしてキャロリンには絶対不可欠な理由があったからって説明する、ニャンちゃんですってね。
アーサー:うん、お願い。
マーティン:分かった、分かったよ。たかが仕事だ。他にも勤め先はある。(無線)フランス管制塔へ、こちらG-T-I、最寄空港への緊急着陸を希望する。
フランス管制塔:了解、G-T-I。非常事態ですか?
マーティン:えっと、、うん、実は、、
ダグラス:管制塔、少し待ってください。(無線オフ)
マーティン:なんだ、ダグラス?
ダグラス:機長。(マッチ点火音)操縦室で煙のにおいがします。あなたはこのにおいに気づきますか、機長?
マーティン:うん、うん。におうよ、ダグラス。至急迂回を依頼してくれたまえ。
ダグラス:ただちに、サー。


 (エンドクレジット)



 ©BBC



2 コメント

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Unknown (ぽぽん)
2013-02-17 16:50:56
改めまして過去記事へのコメントになりますがよろしくお願いします!

久しぶりに「アブダビ」を聴きましたが
ベネディクトによるエンドクレジットの読み上げがこんなにゆっくりだったとは。
シリーズを重ねるごとに早口になっていく様子もCPファンのツボですよね。
おっしゃるとおりエンディングだけで楽しくて笑ってしまいます。

「キャプテン」にこだわるマーテイン
皮肉屋で頭の回転が速いダグラス
愛嬌のある天然さんのアーサー
絶対権力のキャロリン

キャラクターの人物像を外見も内面含めてセリフとシチュエーションでほんとに上手く表現されてますよね。

何度も聴いていましたがこうして訳を拝見すると
まだ細かい内容を取りこぼしていることに気づきます。
和訳は大変なことでしょうがほんとにありがたいです。

更新されたフィネモア氏のブログでは「まだ終わりじゃないよ」みたいに
クリフハンガーの定義について詳しく語ってますね。
とりあえず首を長ーくして待つ楽しみができたということでしょうか(笑)


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re:改めまして過去記事へのコメント (cpfan)
2013-02-18 06:07:21
コメントありがとうございます。
クレジットの読み上げ方、初回はラジオドラマみたい(!)。
楽しみどころ満載のCPですよね。

お客さんの猫を凍死させかけてたキャプテンが、今では立派に成長して。う~ん、感慨深いものがあります。

私も聞き直してみましたが、おっしゃる通り初回からキャラクターの人物像が上手に描かれてますね。さすがフィネモア氏!

クリフハンガーの結末も楽しみですね♪

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