ヒロタ

昔の出来事をほじくりかえします。

私は大学時代、居酒屋でバイトをしていました。

　　　誰も住んでないよ

二階建てで、下の階には８席、上の階は宴会用になってます。
オサレでも何でもなく、
じーさんの割に元気な大将とその息子（次男・３０歳くらい・以下次郎)がやってる居酒屋です。
常連さんがほとんどで、一段落ついたら大将も飲み始めます。いいのか？
そして途中で次郎に送ってもらいます。帰っちゃうのです。

ここではバイト一日３人、あと、ヒロタさんと言う４０歳くらいの男も働いていました。
ここの大将の長男は別に居酒屋をやっていたのですが、つぶれてしまい、
次の店をやるまで（懲りてねーな、オイ）潰れた店の従業員だったヒロタさんを大将が雇ってました。

　　　

色は黒く、体は細く、いつもアタフタしているヒロタ←もう呼び捨て。どうやら母と２人暮らしらしい。なので閉店してからみんなで食べる（その頃大将は家に帰ってる）夜食も食べずにさっさと帰ります。

次郎はちゃんとしてます（なんちゅー表現）。でも小言が多いのが玉に傷。
いつもアタフタしてるヒロタは失敗がたくさん。しかも言われやすい体質。
そういう人っていますよね・・・。悲しいがな。

　　　

何かにつけてヒロタさんを使い、何かにつけて小言を言ってました。
しかしヒロタはヒロタで失敗を繰り返していました。

そんなある日、私は２階で１人、洗い物をしていました。
私は２階が大好きでした。次郎もいないし。洗い物をどんどんこなす仕事です。
（２階にお客さんがいればもちろん注文を受けたりします。）
２階は洗い物をする場所で、酒類や料理の材料なども置いてあります。
１階で調理している大将や次郎に材料などを持っていくこともあります。

そんな中ヒロタが酒を取りに上がってきました。

　　　

相変わらずヒロタはバタバタしてます。常にアタフタです。
彼は急いで出て行こうとしました。

その日次郎に「○○（日本酒の名前）はもうないから注文されても受けんとってや！」
と言われていたのですが、２階の冷蔵庫にはその酒はありました。

あ、ヒロタが取りに来たのは全く別の、注文のあったお酒です。

　　　

急ぐヒロタ。
あ、言わなきゃ！と思った私。

　　　

「あ、お酒ないって言われてたんですけど、こっちにあったって言っといて下さい！」

立ち止まり振り向くヒロタ。

　　　

数秒の沈黙のあと出た言葉。

　　　


なんじゃそりゃ

その一言を残しヒロタは去っていきました。

　　　

いや、確かに私の言い方が悪かったですよ。
彼はきっと私と次郎のやりとりを知らなかったはずだから。
でもね、分からないなら「どういうこと？」って聞いてくれればいいでしょ。

もう４０歳のいい年でっせ？
仕事でっせ？

結局私は直接次郎に言いに行ったからどうってことなかったんだけどさ。
なんつーか、後味悪かったっス。ヒロタはそんなやりとり覚えてないようでした。

このヒロタの話、次も書いてみます。