ミュージカルな日々

ミュージカル好きの私が、観劇・映画・ドラマ・音楽・本の感想を書きつづるブログ、になる予定。

鷺と雪

2009-10-15 | 
一気に読んでしまいました

三篇の短編からなる構成になっていて「不在の父」が一つ目。

この最後に山村暮鳥の詩集「聖三稜玻璃」が出てきます。
とても美しい装丁の本、と紹介されているので、そうすると実物が見たくなるのが人情というもの。

早速図書館で検索すると、昭和50年代に出版された復刻本が書庫に所蔵されていることが分かり、
普段は入らない書庫の奥まで行って見てきました

そもそも、6階建ての書庫の1階しか利用したことがなかったので、
2階の、さらに奥の別館に行くなんて、それだけでドキドキしてしまいました
昼の10時でしたが、当然ながら書庫の中は薄暗くて、人気も全くありません。
そこを歩いて行くと、私のヒールの音がコツコツとやけに大きく響いて、その静寂を破る感じがたまらないのですっ

そんな素敵な雰囲気に浸りながら目指す本棚に到着
そこには、同時期に復刻された本がどっさり並んでいて、それでまた、大興奮

とりあえず、まずは、お目当ての「聖三稜玻璃」を探しました。
手に取ってみると、革張り(といっても、つるっとした感じではなく、バックスキンの柔らかな手触り)の表紙で、
持っている人に優しい気持ちを抱かせる、美しい本でした
作者の山村暮鳥がキリスト者ということで、マリア様の絵が扉に描かれているのも印象的でした。

たぶん、この詩集で一番有名な詩は、北村作品でも言及されていた「風景」
「いちめんのなのはな」というフレーズの繰り返しを味わう作品です。
これをチェックして、それから、
「鷺と雪」の三篇を通してキーになっている冒頭の詩「囈語」にも目を通しました。

この「囈語」は、「不在の父」の最後で長く引かれているのですが、全部引用されていたわけでないことに気がつきました。
印象的なフレーズで詩の引用を止めているのです。

これがあとあとまで効いてきます。
この言葉があるからこそ、「鷺と雪」はミステリーだったんだなぁと溜息をついてしまいました。

ミステリーなので、あんまり詳しく書くと、ネタばれで面白くないですよね。
「印象的なフレーズ」が気になる方は読んでみてください(笑)
ちなみに、私がこの言葉を目にしたときには、はっと息を呑んで、そして胸がざわざわしました。


さて、書庫探検の続きですが、
「聖三稜玻璃」を本棚に戻して、その後は手当たり次第に周りの本を引っ張り出してきて眺めて楽しみました
「みだれ髪」「若菜集」ちょっと飛んで「羅生門」「晩年」「聖家族」…などなど。
別の本棚には夏目漱石先生の「こころ」の復刻本も
これ欲しいっと思いましたが、借り出したところで重いだけなので、名残惜しく眺めつつも、本棚に戻しました

それにしても、昔の本って装丁が美しいですね
今より出版数が少なくて、もっと貴重で高いものだったからなのでしょうが、
今の単行本の味気なさにはがっかりです

お金に余裕ができたら、図書館にあったみたいな復刻本シリーズを揃えて、部屋に飾りたいなぁ。