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メルサがあるがね

名古屋郊外・春日井で暮らす日々

[大曽根]獅子吼

2005年11月26日 | 食べ歩き
大曽根から環状線を平安通にむかったところにある有名なラーメン屋「獅子吼」へ行ってみた。ネットのラーメン関係のところで話を聞いたし、近ごろ出たラーメンムックでも大きく紹介されていて、ずっと気になっていたのだ。

塩ラーメンにチャーシューをトッピングした。スープはものすごくていねいに作ってある感じだった。鶏ガラと野菜を基調としていると思うのだけど、とても優しい味で、押しつけがましいところが全くない。ちょうど、水炊きをしていろいろおいしくいただいたあと、最後に残ったスープという感じ。鶏や野菜のうまみが出て、さてお雑炊にしましょうというあの味。こういうちゃんと作ってあるいいスープを口にすると、化学調味料をばしばし使っていかにもな味にしてあるスープが安っぽく感じられてしまうだろう。麺はやや細い軽く縮れた麺。これみよがしに固くもないが、しっかりコしがあっておいしかった。チャーシューは食べる直前にバーナーで炙ってあり、とても香ばしい。こういうのは初めてだ。優しい味のチャーシューとコントラストがついている。全体のバランスや統一感を重視するなら、ちょっと異質な感じもしないではない。最後に、失敗したことを。ランチで入ると白飯が1杯ついてくるのだが、そのご飯にカウンターにおいてあるふりかけをかけるのはよくない。ふりかけがまずいのではない。ふりかけの香りが結構強いので、これが口に広がると、ラーメンのスープの風味がよくわからなくなってしまうのだ。ご飯はラーメンのスープや具とともにいただくのがよいだろう。体にやさしくておいしいラーメンというのがお店の方針だそうだが、まさにその通りの味だった。普段あまりラーメンを食べない人にもおすすめしたい。

[池袋]山頭火

2005年11月19日 | 食べ歩き
東京に来ている。有名なチェーン店山頭火の池袋店へ入ってみた。池袋に用事があって、たまたま行き着いたのだった。名古屋でも矢場町あたりにあるらしいのだが、いったことがない。名前は聞いていたが、初めて入った。

基本メニューがどれだかわからず、チャーシュー麺味噌味を頼んでみた。普段はあまり味噌ラーメンを選ばないが、北海道系の店らしいということで、とっさに「北海道なら味噌だろうと」と思ったのだ。(でも旭川といえば醤油味が基本という話もあり、私の早とちりだったかもしれない。)

麺はやや細めで微妙にちぢれている。ストレートではないという程度に。少な目の水で生地を練るようで、ツルツル感よりはモソモソ感がある。

スープはとても上品な味噌味。白っぽくて甘ったるくない味噌を使っており、とがったところのないマイルドな味になっている。胃にやさしい味だ。表面には脂が張っており、結構熱い。スープをすするときには注意がいる。また、モソモソ感のある麺とよく合っていると思う。このやわらかい味のスープにツルツルモチモチのストレート麺では違和感がある。

肉は柔らかい。脂身のある部位だが、よく煮てある(または蒸してある?)のか、脂っこくない。スープと同じく、こちらもおだやかな味になっている。

全体として、麺もスープも肉もよく作ってあり、さすがは有名店という味だと思う。好き嫌いは人それぞれだが、確かに賞味するに価する一品だ。ただし、お食事どきにはずいぶん行列ができるそうだから、時間をはずしてゆくほうがいいと思う。私は1時30分ごろに入ったが、たまたますぐに座ることができた。

今池の丸忠回転寿司

2005年11月15日 | 食べ歩き
仕事の帰りに今池へ寄った。ツルヤで靴を買うためだ。名古屋で靴といえば、私はツルヤと決めている。大きなサイズの靴がたくさんあり、お値打ち品もある。足の大きい人には実にありがたい。

その道すがら、ちょいとお腹が減ったので、ユニーにある丸忠の回転寿司へ入ってみた。ここの特徴はネタが巨大なことで、普通なら2カン分ぐらいのネタで1カンである。米の上に切り身が乗っているというより、切り身の下に米がくっついているというべきだ。だからほんの数皿でお腹がいっぱいになる。いろいろ種類を食べたいときには不向きだが、ちょっと小腹が空いたというときにはいい。3皿ほどいただいて満足。

その後、よく瑞穂でサッカー観戦したあとにゆく中将湯へ行った。ハンター温泉・名古屋銭湯情報さんによると、戦前からやっている風呂屋だそうだ。名古屋大空襲のとき建物本体は壊されたものの、レンガ造りの丈夫な風呂だけ残って、後からその風呂にかぶせる形で現在のビルを建てたとのこと。歴史を感じさせる。

[坂下]サッポロラーメン19番

2005年10月29日 | 食べ歩き
ラーメンの世界に「恐いものみたさ」という概念が通用するなら、この店はまさにぴったりだ。場所は国道19号線の坂下神社の近く。ファミリーマートの並びで中華料理フォルロンの向かいである。ずいぶん昔からある店である。

この店でもっとも魅力的なメニューは「ジャンボラーメン」である。どこが魅力的かというと、その丼のサイズである。直径30センチはある。一言でいって「ありえない大きさ」である。この洗面器のような丼に麺が2.5人前ぐらい入っていて、具がごちゃごちゃ入っている。味は、はっきりいってまずい。スープは味噌の風味がまったくしない味噌スープ。醤油でも塩でもその他でもないから味噌だろうという感じのやる気のない味噌仕立て。別の言い方をすれば、朝作ったみそ汁を夜に飲むみたいな感じのヘタった味。気のせいだろうか、赤だし味噌が入っているように思う。麺は普通の中華麺。太さも普通、茹で加減も普通。ただ量が多い。具はわかめが多いが、ヘタった感じでベトっとしている。チャーシューの切れ端のような肉が2~3片入っていた。もう一度言おう。はっきりまずい。「ありえない丼」「ものすごい量」「抜群のまずさ」この3トップは強力だ。「物事に動じない精神力」と「陶器を愛でる鑑賞眼」と「鉄の胃袋」という強力3バックが必要だ。さらにその前に「あくなき好奇心」と「自己犠牲」という守備的中盤がいなくてはいけない。

味さえ気にしなければ、罰ゲーム・精神修養・ウケ狙い・ネタ作り、あらゆる目的に便利である。それでもやっぱりおすすめしないが、いちおうご紹介しておく。

[池下]豚骨ラーメンのとんぱーれ

2005年10月25日 | 食べ歩き
濃厚なスープで有名なお店。錦通りの仲田北交差点からやや池下駅よりにある。同じ並びにはグランパスの楢崎正剛が好きだというきしめんの「きしや」もある。

前々から噂は聞いていたが、実際に入るには初めて。戸を開けたとたん、きつい臭い。変なたとえ方だが、ラーメン屋の前を通ると豚骨を煮るにおいがすることがあるが、それを何倍も濃縮したムッとするような臭い。噂通りだ。

注文したのはチャーシュー麺。麺は九州ラーメンらしく細くて固い。スープはたしかに濃厚。ただし乳化して白濁しているわけではない。どろっとしてやや透明感のあるスープだ。口の中にえもいわれぬ「豚の臭い」がする。これまた変な言い方だが、臭いと見た目が違う。味は、独特の甘味とコクがあるが、やはり白濁した豚骨スープとは違う感じ。そういえば寸胴の上に白い塊~~たぶん背脂~~が浮いていて、おやじさんがそれを豪快に飛ばしながらスープを作っていた。このどろっとした感じの主成分は脂かもしれない。いずれにしても、豚を文字通り骨の髄までしゃぶっているという、ある意味で野趣あふれる味である。

これはハッキリ好き嫌いが分かれるだろう。ダメな人はダメ。好きな人は好き。中立の立場をとりづらい味だ。私は「たまに食べたくなるかも」というぐらい。はっきり好きというわけではないけど、他にはちょっとない味だし、もちろん自宅で再現するのは難しそうだし。

[新宿]らあめん満来

2005年10月24日 | 食べ歩き
新宿の有名店。東京に住んでいたころからときどき訪れていた。しばらくぶりに来てみた。

このお店の特徴は常軌を逸した量のチャーシューである。チャーシューというよりは茹でた豚肉にのかたまり。手のひらをそのまま乗せたぐらい大きいので、我が家では通称「手のひら」と呼んでいる。また肉ばかりでなく麺の分量もかなり多い。体調の悪いときにチャレンジしてはいけない。いわんや大盛りを選ぶのは、思い切り破滅してもいいとき(というか、破滅してみたいとき)に限る。

そして今日は破滅したい気分だった。ちゃーしゅーらあめん大盛り。

まずそれは目で楽しむものである。通常の2人前~2人前半ほどの麺の上に、明らかに何かが間違っているとしか言いようのない巨大な肉塊が乗っている。さらにそのメイン・チャーシューの脇に、サブ・チャーシュー(といっても、普通なら十分に「ジャンボチャーシュー」といえる代物)が2枚が乗っている。そう、これはチャーシューの三尊像である。なお、肉は時間をかけて茹でてあり、とても柔らかい。歯の悪い人でも心配なく食べられると思う。

私の場合は、まず「菩薩役」のサブ・チャーシューを1枚先に食べてから麺へ移り、適宜もう1枚のサブ・チャーシューをを攻略し、さらに麺を食べ進めつつ、本丸の「如来役」のメイン・チャーシューへ挑戦する。その理由は簡単で、初期段階ではどんぶりの表面をすっぽり肉が覆っていて、最初にサブ・チャーシューを1枚食べないと、麺をすするのが難しいからである。

麺は細めの平麺。自家製とのこと。私は食べたことがないのだけど、青竹を使ってコネルることで知られる佐野ラーメンに似ているという話を聞いたことがある。満来といえば何かと肉ばかりが話題になるが、麺がなかなかいい。

スープはしょうゆ味。鶏がらが基本だと思うけど、いわゆる「昔ながらの中華そば」的なすっきりした味ではなく、もう少しいろいろ入っていると思う。

いやぁ、食べた食べた。苦しい。しばし廃人状態。

[代々木]らすた

2005年10月23日 | 食べ歩き
用事で東京に来ている。

代々木といえば代々木ゼミナール代々木アニメーション学院が有名だ。平日であれば若い人であふれているに違いない。しかし今日は日曜日。通りを行き交う人は他の街とそれほどかわらない。

駅を出て交差点を越えた右側にラーメン屋に入った。「らすた」という。店の外で食券を買うようになっている。基本メニューの「らすた麺」を注文。黒豚と鶏でスープをとっているというが、とてもコクがあって玄妙な味だ。スープにもまして独特なのが、黄色い極太麺。おそらく卵の黄身を入れてあるのだろう。とても食べ応えがある。それでいてつるつるとノドごしがいい。なるほど、これはよく工夫してある。

後で知ったのだが、どうやら横浜の日吉にある同名のラーメン屋の支店らしい。あちらでは誰もが知っている有名店のようだ。いつも行列ができているらしい。代々木のお店もよく繁盛していて、私は並ばずにすぐ座れたけど、ラーメンを待っている間に席がうまって、外には2~3人並んでいた。

[原]九州ラーメン破天荒

2005年10月18日 | 食べ歩き
天白区・原のラーメン屋「破天荒」へいった。ネット上でいろいろ話題の店だ。クセが強くて好き嫌いが分かれるらしい。頼んだのは角煮ラーメン。ランチ時間にはご飯がおまけ。スープはいかにも九州らしい豚骨スープ。表面にどん脂の層があり、口にすると何か独特な臭いがある。それほどキツい臭いではないけれど、たしかにこれは好き嫌いが分かれると思う。トッピングの角煮はよく味がしみているけれど、ややパサパサした感じがあった。肉モノをふやしたければ、柔らかく煮込んだチャーシューの方がいいかもしれない。ただし、脂身が多いのでややしつこいかもしれない。麺もこれまたいかにも九州らしい極細麺。私は通常の固さでお願いしたが、固め、バリ固、さらに生麺というのもあるらしい。生麺というのはお湯で1秒だけ入れるとか。九州ラーメンが好きな人の間では、麺を固めで食べるのが通とされているようだけど、単なる強がりではないかと思う。少なくとも私にはちょっと理解しにくい感覚だ。九州ラーメンの通が、死に際に「いちど柔らかいラーメンを食べたかった……」なんて言わないものだろうか(笑)。麺を作る立場から考えると、麺にコシがあるのと、茹で足りなくて固いのは違う。コシのあるいい麺を作ったら、それを一番味わえるところまで茹でて、充分にコシを楽しんでほしいと思うのだが。

さて、食べ終わったあと少し歩いたのだが、いつになく汗をたくさんかいた。もともと汗かきなのだが、あの汗の量は半端じゃなかった。何か発汗作用のあるものがスープに混じっているのだろうか?

[勝川]敦煌の刀削麺

2005年10月15日 | 食べ歩き
勝川駅南口にある中華料理・敦煌へ行った。ここのウリは刀削麺(とうしょうめん)。生地を刃物で細く削ってお湯に落として茹でる麺である。敦煌では刀削麺が5種類。そのうち私は坦々刀削麺を選んだ。ぱっと見には台湾ラーメンっぽく、汁そばの上にピリ辛のそぼろが乗せてある。さらにチンゲンサイとキクラゲのトッピング。ここの刀削麺は大胆に太く切ってあり、真ん中あたりは厚くて固く、端に行くほど薄くひらひらになる。同じ麺の中で食感の違いを楽しむことができる。なお、麺の量がけっこう多くて、予想していたよりもお腹がふくれた。以前に別のところで刀削麺を食べたときにも、やはり量が多かった。刀削麺といえばどこでもそういうものなのだろうか。スープはよくだしがきいているし、付け合わせのキクラゲもコリコリしているし、全体としてレベルの高い料理だった。なお、一緒に頼んだ水ギョウザは、皮がモチモチしており、餡の風味もよく、これもまたいいできだった。

[天白]参鶏湯ラーメン

2005年09月28日 | 食べ歩き
仕事の都合でよく天白区の原へ行く。用事を済ませて、まだ元気があるときには原から植田まで歩くことがある。天白川のあたりは景色がいい。そうして歩いていたとき、ふと目に止まった暖簾。「参鶏湯ラーメン」。参鶏湯といえば韓国の滋養強壮スープ。それがラーメンになっているとすれば、ラーメン好きとしてぜひとも食べておかなければ。というわけで、前々から気になっていた参鶏湯ラーメンを食べてきた。

お店の名前は「伸乃坊」。いろいろ工夫のあるメニューがあるようだが、とりあえずは参鶏湯ラーメンと小クッパのセットを。どうやらラーメンを食べてから、残りのスープをご飯にかけて食べるのがいいらしい。

問題の参鶏湯スープは、よほど漢方薬臭いかと思いきや、鶏の甘味(プラス糯米?)がメインでフワッとした酸味があるというところ。高麗人参の泥臭い臭いはしない。ただし、最後に何か漢方薬っぽい香りがふっと残る。玄妙な味だが、決してお仕着せがましいというか、「健康にいいから食ってみろホレホレ」みたいな感じはない。むしろ上品で、クセになりそうな味。麺は極細でしっかりした麺だ。繊細な味のスープによく合っている。

麺を食べ終わったら、酸鶏湯スープをご飯にかけてお雑炊にする。一通りラーメンを食べた後でも、するするっと入ってゆく。盛岡ジャジャ麺のチータンタンといい、この小クッパといい、麺モノを食べたあとにスープを別のやり方で楽しむのっていいよな。1杯で2度おいしいみたいな感じ。

というわけで、おいしくてお腹がふくれて楽しかった。そこそこお客さんがいたけど、行列ができるほどではなかった。植田・原方面に用事がある際には、一度お試しあれ。

[神宮前]オリエンタル本舗

2005年09月01日 | 食べ歩き
このブログではオリエンタルカレーの話をたくさんするので、まるで私がオリエンタルの営業マンのようだ。誓っていうが、私はオリエンタル関係者ではない。ただ、今のたぶん社長さんは私の同級生。あの星野君だと思う。

名古屋市内に用事があったついでに、神宮にあるオリエンタルカレー直営のカレー屋「オリエンタル本舗」へ行った。オリエンタル好きとしては、いわば聖地である。場所は名鉄神宮前駅にあるショッピングセンター・パレの5階。パレは8月31日から経営がかわり、「名鉄パレ」から「パレマルシェ」に変わるそうだ。(私は「名鉄パレ」最後の日に行ったことになる。)飲食店街は奥まったところにあってわかりにくいのだが、オリエンタル本舗はその中でも一番奥にある。

今回いただいたのはエビフライカレー。そうそう、この味。マイルドで穏やかだが、コクがあってぎゅっと詰まった味。こういう味を楽しめるようになって、私も大人になったものだ。しみじみそう思う。エビフライが結構大きくて、ちょっと得した気分。

おいしかった。機会があったらまた来たい。帰りにはあのスプーンをおみやげに買った。

[東京・吉祥寺]ベトナム料理フエド

2005年08月25日 | 食べ歩き
諸般の事情で昼過ぎまで東京を離れることができなかった。そうこうしているうちに台風が近づいてきて、今夜移動するのは大変だ。というわけで、もう1泊することとなった。もう1泊するといっても、この天気で外を出歩くことはできない。こんなときには、屋根があってなるべく賑やかなところでジクジクしているのが正解か、あるいは正解に近い。というわけで、私は吉祥寺で1日過ごした。コーヒーをすすり、床屋へ行き、アーケード街をうろつき、ネットカフェでまったりし……まあそんな調子だ。こういう状況は「想定内」だったので、いちおう簡単な仕事道具はもってきた。しかし、仕事とは道具があればできるというものではない。そう、やる気が起きないのだ。東京に住んでいたときはもちろん、東京と名古屋を毎週往復していたころでさえも、東京は「地元」だった。日常の業務をこなすだけの緊張感があった。そして吉祥寺のサンマルクや中野のエクシェルシオールで仕事をしたものだ。しかし、今では東京は完全に旅先である。もうここに私の日常はない。そうなると、仕事をする気になれないのだ。よほど急ぎの用件があるなら話は別だろうが、今はそうではない。せっかく時間があるのにもったいない話である。しかし、人生とはこんなものだ。多分ね。

さて、そういうわけで吉祥寺である。さしせまった用事をすませて、お昼をどうしようか迷ったのだが、久しぶりにランサーンへ行ってみた。しかし、もう2時近くてランチタイムが終わっていた。残念。そこでアーケード街へ戻り、レンガ館モールのベトナム料理家フエドへ行った。初めてゆく店である。ランチはバイキング形式で、曜日によって内容が少し違うらしい。まず生春巻きと汁ビーフンが出てくる。そしてあとは並んでいる料理を思い思いにとって食べる。

タイ料理でもベトナム料理でも基本のスープは同じようだ。おそらく鶏肉と玉ねぎを煮たものだと思うのだが、違うかもしれない。さっぱりしてかつスープの味だけでも十分に料理になるという点で、日本料理のだしに匹敵するすばらしいスープだと思う。このお店はベトナム料理の中でも宮廷料理ということで、どの品も薄めで品のいい味付けだった。私が特に気に入ったのは手羽先を一口大に切って焼いた料理である。口に入れるとかすかにカレーのにおいが鼻にぬける。たぶん調合してあるカレー粉ではなく、そのうちの香り成分のスパイス(ウコン?)を少しだけもみこんであるのではなかろうか。このほのかな香りが後を引いて、何度もおかわりをした。手羽先は骨が残るので、たくさん食べた事がバレバレである。それから冬瓜のスープがおいしかった。例の基本のスープに冬瓜をいれて煮ただけだと思う。冬瓜独特の甘みがスープとみごとに1つになって、えもいわれぬ上品な味だった。

冬瓜については、子供のころの思い出がある。親戚から大きな冬瓜をもらって、それを煮て食べたことがある。子供の私には、その味がつかみどころがなく、形容しがたいものに思われた。さらに、その食感も歯ごたえがあるわけでなし、プリプリしているわけでなし、茫洋としていた。というわけで、そのとき私は冬瓜をおいしいとかおいしくないとか判断する範囲ない、味わうに値しないものと判定した。あのときの、自分が経験したものごとをうまく説明できないもどかしさのような感覚を今でもよく憶えている。こういう経験は、おそらくこの冬瓜の一件だけだと思う。実は冬瓜を口にしたのはあのとき以来である。今日まで意識的に冬瓜を避けてきた。そして、今日30年ぶり(?)ぐらいにその禁を破ったのである。大人の私には、冬瓜の甘みがなんとも上品に思われ、かつ私はその味を理解できた。なるほど、このように風味高いものであれば、中華料理で冬瓜の中身をくりぬいて、いろいろな具材とスープを入れて蒸す料理することも、なんとなく気持ちがわかる。

これは認知心理学の問題である。子供ころ、私の味覚にはごくわずかな分類しかなかったのだと思う。色に例えるなら、クレヨンの箱に赤・青・黄色ぐらいしか入っていないようなものだ。初めて冬瓜に接したとき、私はそれまでの記憶を総動員しても、その味を形容することができなかった。ただし、本能的にまずいとか、食べたら体に悪いとか、そういう感じはなかった。例えばある種の発酵食品(たとえば納豆や青カビチーズなど)が、それを食べなれない人にとってある種の嫌悪感を与えることがあるが、少年の私は冬瓜に対してそれいう感じはしなかった。ただ、私にとってそれは「わけわからん味」だったのだ。私は子供のころから知識欲が旺盛で、知ること、わかること(本当はわかった気分になること)が好きだった。そうでないことはいやだった。そんなわたしにとって、冬瓜はその味を理解できないまま残って、心にひっかかったままのものであった。他にもそういう物事はいろいろあったはずだが、食い意地がはっているせいか、食べ物のことだけは特によく憶えている。

私はもう大人だ。いわゆるグルメとか食通とかそんな立派なものではないが、世間様並にいろいろな味を経験してきた。その中で味を理解し、説明する分類項目が増えた。かつては赤・青・黄色しかなかった私のクレヨン箱に、今はもう少しいろいろな色が入っている。そして、冬瓜の微妙な味わいを理解することができるようになった。今日私は「冬瓜デビュー」をした。8月25日は、私にとって「冬瓜記念日」である。もっとも来年の今日、また冬瓜を食べるかどうかはわからないけれど。(多分食べないと思う。)

[名駅]想吃担担麺

2005年08月17日 | 食べ歩き
名古屋駅エスカ地下街の隅にあるお店。噂は聞き及んでいたけれど、なるほどわかりにくいところにある。担担麺専門店。メニューは普通の担担麺、スープなしの本場四川風汁なし担担麺、そして夏限定の冷やし担担麺。夜は点心類もあるらしい。私は本場四川風汁なし担担麺を頼んだ。

担担麺はもともと屋台の料理で、麺とゴマ風味の辛いタレを和えて食べるものらしい。スープ入りの担担麺を作ったのは、かの陳建民だという。大きな体とつたない日本語でNHKの料理番組に出ていたのが思い出される。20代の人にとっては、「鉄人」陳建一の父という方がわかりやすかろう。いわく、日本ではスープのある麺が人気だから、担担麺にもスープを入れてみようということらしい。確かな技術と客のニーズを的確につかむ感受性、この両方をもっていたからこそ、陳建民は陳建民だったのだ。

さてこの汁なし担担麺。麺は3mmぐらいの平麺。ちなみに普通担担麺と冷やし担担麺は極細麺らしい。この選択は正しい。原則として濃厚なタレには太麺、さっぱりとしたスープには細麺である。なお、この平麺はぷりぷりとしており、自分の経験からすると加水多めの熟成麺である。

ゴマ風味のたれがとても濃厚で、そしてわりと酸味がある。みっちりゴマ味、みっちり酸味、という感じである。その「みっちりねっとり」の中で、平麺が力強く存在感を示している、とまあこんな感じの一品だ。運ばれてきた段階ではそれほど辛くない。そのままでもいいが、少し辣油を加えると味に深みが出る。そして、最後に黒酢を加えるとさっぱりとした味になる。調味料を加えて味の変化を楽しめる。

おいしい・まずいは判断によるが、全体としてはていねいに作ってあって品がいいという感じだった。いい印象だ。あえて難をつけるとすれば、がんばり過ぎだろうか。「さあ、あの濃厚なごまダレを食べるゾ」という気合いがこもらないと、近寄りにくいかもしれない。気合いの入った担担麺好きにはいいと思う。