世間がクリスマスで騒いでいる一方で、私は伊勢神宮へ参拝してきた。特別に信心があるわけではなく、単に青春18きっぷが余っていたので、日帰りで行ける近場の観光地へ行っただけのことだ。実は伊勢へゆくのは初めてだ。私があらかじめ調べておいたのは(1)伊勢神宮には「外宮」と「内宮」があって、外→内の順番にお参りするのが正しいらしい、(2)外宮は伊勢市駅から近くて、内宮は遠いらしい、この2点のみ。年中観光客や参拝客が押し寄せているのだから、行けば何とかなるだろうという(甘い)推測のもとに。
朝9時前に出発。名古屋駅から関西線で亀山へ、亀山から伊勢市へ。途中松坂で「快速みえ」の乗り継ぎがあったが、混雑していたのでそのまま鈍行で行った。これが大失敗。進むのが遅いわ、多気では連絡待ちで20分ぐらい待たされるわ、散々な目に合った。伊勢市駅は観光地の雰囲気があまりなく、単なる地方都市という感じ。駅前はだだっ広く、何がどこにあるのか、反対側へ渡るのにどこを通ればいいのか、ぱっと見てもわからない。観光地にしては不親切である。
そんなこんなで、何とか外宮の前まで来た。お腹が空いていたので、通り沿いの食堂で名物「伊勢うどん」をいただく。卵入りに挑戦だ。麺はやや透明感があるが、表面はざらっとしている。スーパーで買ってくるいつものよりもさらにモチモチふわふわで柔らかい。たれは真っ黒だが、見た目ほどキツい味ではない。卵をかけてみる。グジュグジュとした食感が合う。なるほど、邪道かもしれないがおもしろい。
お腹が落ち着いたところで外宮へ。橋を渡り、手水で手と口を清め、心静かに森の中へ進んでゆく。数日後には「戦争状態」になるのだろうが、この日は参拝客もまばら。「ご一行様」も1組だけ。本殿で二礼二拍手一礼のお参りをする。神道式のお参りはあっけないもので、その最中に何か願い事をしようと思っても、念じ切らないうちに動作が終わってしまう。そこで、私はあらかじめお願いすることを心の中で思い描いておいて、それからお参りするようにしている。これが正しいやり方かどうかわからないが、当たらずとも遠からずであろう。
なお写っている人は別の参拝客で、私には関係ない。このあと、別宮とよばれる風の宮、土の宮、多賀の宮にもお参りした。結構アップダウンがあり、いい運動になる。
内宮はそこから4~5キロ先の山の中にあるらしい。そこまで歩くのは大変なので、外宮前からバスに乗った。橋を渡り、手水で手と口を清め、また心静かに森の中へ進んでゆく。途中五十鈴川の川岸が一望できるところがあって、素晴らしい景色だった。外宮にまして内宮は広い。たくさん歩いてようやくお札を売るところへ出た。そこからさらに奥へ進んだ突き当たりが本殿だ。
この階段を上った上がお社である。ここでも願い事を心に決めて二礼二拍手一礼する。脇の出口から外へでて、名前を忘れてしまったが、もう1つ別宮にお参りした。神道で一日にこれほどいろいろお参りしたのは初めてだと思う。神社の敷地内には尾の長い鶏が放し飼いになっている。
内宮のわきから土産物屋が並んでいる。神社の中よりずっと人が多い。途中の店で「蒸し牡蠣」をいただいた。大粒の牡蠣を殻ごと蒸したもので、なかなか珍味であった。3個600円は悪くないお値段。また別の店では猫が店番をしていた。(いや、本当は寝ていた。)
土産物屋の通りの奥には、さらに土産物屋の並ぶ「おかげ横丁」がある。ここで本日2杯目の伊勢うどんをいただいた。1杯目よりもさらに透明感があり、柔らかかった。両親へのお土産にも伊勢うどんのセットを買った。おかげ横丁では、屋根瓦に猫が眠っている飾りがついていた。伊勢ではあっちでもこっちでも猫が寝ているのである。
両親の好みからすると時雨煮の方が喜ぶだろうけど、などと思いつつ。再びバスで伊勢市駅へ向かう。伊勢のバスは結構運転が荒い。そして、地形のせいか道がクネクネしている。山がちなところはまだしも、近鉄宇治山田駅から伊勢市駅へ向かう間は、市街地なのにF1コースのように(?)ぐるぐる回る。乗物酔いをする人にはつらそうだ。
外宮・内宮・土産物屋通りでたくさん歩いて疲れた。帰りは伊勢鉄道の料金を払ってでも、快速みえで名古屋へ直行しよう。30分以上時間があったので、よせばいいのに、駅のうどん屋で仕上げの伊勢うどんを食べた。柔らかいうどんをすすっていると、高校生のカップルが来て、男の子の方はそばを、女の子は伊勢うどんを食べていた。次に高校生ぐらいの男の子の集団が来て、「俺ネギ抜き」「柔らかめ」などと注文していた。伊勢うどんは決して観光客専用の名物ではなく、地元の人たち、それも若い人たちに愛されているメニューであることを確認した。
そういえば、赤福は食べなかったな。名古屋でも普通に売っているしな。18時01分の快速みえで名古屋へ帰った。名古屋まで2時間たらずだ。