chuo1976

心のたねを言の葉として

「けしゴム」    まどみちお

2012-04-20 06:03:53 | 文学
「けしゴム」    まどみちお

自分が 書きちがえたのでもないがいそいそと けす

自分が書いた ウソでもないがいそいそと けす

自分がよごした よごれでもないがいそいそと けす

そして けすたびにけっきょく
 
自分がちびていってきえて なくなってしまう

いそいそと いそいそと 正しいと 思ったことだけを

ほんとうと 思ったことだけを美しいと 思ったことだけを

自分のかわりのように のこしておいて

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「ぞうさん」   まどみちお

2012-04-19 06:03:39 | 文学
「ぞうさん」   まどみちお



ぞうさん
ぞうさん
おはなが ながいのね 
そうよ
かあさんも ながいのよ

ぞうさん
ぞうさん
だあれが すきなの
あのね
かあさんが すきなのよ
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「いま!」   まどみちお

2012-04-18 06:28:50 | 文学
「いま!」   まどみちお


空いちめん 星だらけの星の中の
あちらの あの一つの 星にでもなく
そちらの その一つの 星にでもなく
どちらの どの一つの 星にでもなく

ここの この地球の 星に
ぼくたちは 生きている

イヌや
チョウチョウや
夕やけや
友だちや
森や
にちようびや
やまびこなどと いっしょに

どんなに遠い近い 昔にでもなく
どんなに遠い近い 未来にでもなく

落ちつづける たきのように
ごうごう ごうごうの
いま!
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「ぼくがここに」    まどみちお

2012-04-17 06:41:30 | 文学
「ぼくがここに」    まどみちお




ぼくがここにいるとき
 ほかのどんなものも
  ぼくにかさなって
ここにいることはできない

ああこのちきゅうのうえでは
 こんなにだいじに
まもられているのだ
  どんなものがどんなところに
   いるときにも

その「いること」こそが
 なににもまして
  すばらしいこと として
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「闇は光の母」    谷川俊太郎

2012-04-15 04:50:55 | 文学
 「闇は光の母」    谷川俊太郎




  闇がなければ光はなかった
  闇は光の母

  光がなければ眼はなかった
  眼は光の子ども

  眼に見えるものが隠している
  眼に見えぬもの

  人間は母の胎内の闇から生まれ
  ふるさとの闇へと帰ってゆく

  つかの間の光によって
  世界の限りない美しさを知り

  こころとからだにひそむ宇宙を
  眼が休む夜に夢見る

  いつ始まったのか私たちは
  誰が始めたのかすべてを

  その謎に迫ろうとして眼は
  見えぬものを見るすべてを探る

  ダークマター
  眼に見えず耳に聞こえず

  しかもずっしりと伝わってくる
  重々しい気配のようなもの

  そこから今もなお
  生まれ続けているものがある

  闇は無ではない
  闇は私たちを愛している

  光を孕み光を育む闇の
  その愛を恐れてはならない
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「かっぱ」   谷川俊太郎

2012-04-14 20:51:30 | 文学
「かっぱ」   谷川俊太郎




かっぱ かっぱらった

かっぱ らっぱ かっぱらった

とって ちってた



かっぱ なっぱ かった

かっぱ なっぱ いっぱ かった

かって きって くった



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「二十億光年の孤独」   谷川俊太郎

2012-04-13 06:01:18 | 文学
「二十億光年の孤独」   谷川俊太郎




人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或はネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったく確かなことだ

万有引力とは
引き合う孤独の力である

宇宙は歪んでいる
それ故みんなは求め合う

宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
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「明日」   谷川俊太郎

2012-04-12 05:32:23 | 文学
「明日」   谷川俊太郎




ひとつの小さな約束があるといい

明日に向かって ノートの片隅に書きとめた時と所
そこで出会う古い友達の新しい表情

ひとつの小さな予言があるといい

明日を信じて
テレヴィの画面に現れる雲の渦巻き 〈曇のち晴〉
天気予報のつつましい口調

ひとつの小さな願いがあるといい

明日を想って 夜の間に支度する心のときめき
もう耳に聞く風のささやき川のせせらぎ

ひとつの小さな夢があるといい
明日のために
くらやみから湧いてくる未知の力が
私たちをまばゆい朝へと開いてくれる

だが明日は明日のままでは
いつまでもひとつの幻
明日は今日になってこそ 生きることができる

ひとつのたしかな今日があるといい
明日に向かって
歩きなれた細道が地平へと続き
この今日のうちにすでに明日はひそんでいる
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「春に」  谷川俊太郎

2012-04-11 04:50:31 | 文学
春に
                谷川俊太郎

        この気もちはなんだろう
        目に見えないエネルギーの流れが
        大地からあしのうらを伝わって
        ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ
        声にならないさけびとなってこみあげる
        この気もちはなんだろう
        枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく
        よろこびだ しかしかなしみでもある
        いらだちだ しかもやすらぎがある
        あこがれだ そしていかりがかくれている
        心のダムにせきとめられ
        よどみ渦まきせめぎあい
        いまあふれようとする
        この気もちはなんだろう
        あの空の青に手をひたしたい
        まだ会ったことのないすべての人と
        会ってみたい話してみたい
        あしたとあさってが一度にくるといい
        ぼくはもどかしい
        地平線のかなたへと歩きつづけたい
        そのくせこの草の上でじっとしていたい
        大声でだれかを呼びたい
        そのくせひとりで黙っていたい
        この気もちはなんだろう
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「舞姫」    森鴎外

2012-04-09 06:11:07 | 文学
「舞姫」

森鴎外




 石炭をば早や積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと靜にて、熾熱燈しねつとうの光の晴れがましきも徒なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ來る骨牌かるた仲間も「ホテル」に宿りて、舟に殘れるは余一人のみなれば。
 五年前の事なりしが、平生ひごろの望足りて、洋行の官命を蒙り、このセイゴンの港まで來し頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新ならぬはなく、筆に任せて書き記しつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけむ、當時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりておもへば、穉をさなき思想、身の程知らぬ放言、さらぬも尋常よのつねの動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるしゝを、心ある人はいかにか見けむ。こたびは途に上りしとき、日記にきものせむとて買ひし册子もまだ白紙のまゝなるは、獨逸にて物學びせし間に、一種の「ニル、アドミラリイ」の氣象をや養ひ得たりけむ、あらず、これには別に故あり。
 げに東ひんがしに還る今の我は、西に航せし昔の我ならず、學問こそ猶心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言ふも更なり、われとわが心さへ變り易きをも悟り得たり。きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感觸を、筆に寫して誰にか見せむ。これや日記の成らぬ縁故なる、あらず、これには別に故あり。
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札幌国際芸術祭

 札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf