遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古活花を探る(9)稀少写本『遠州流挿花圖式』『遠州流挿花淵源集 筒之巻』

2024年07月18日 | 花道具

先回、祖父の残した写本のうち、遠州流生花の基本書と思われる『遠州流挿花淵源集』を紹介しました。ノート等5冊にビッシリと書き込まれた写本は、いかにも活花を習得するためのテキストという感じでした。

今回は、さらに、和綴じの写本、2冊を紹介します。内容から、かなり希少な写本と思われます。

『遠州流挿花圖式』(左)と『遠州流挿花淵源集 筒之巻』(右)です。

『遠州流挿花圖式』:

「遠州流 挿花柳の緑」抜翠 廿二画略ス

            明治三十三年孟春之寫

 

まず、江戸後期の漢詩人、大窪詩佛の跋文があります。

非常に薄い和紙に、ものすごく細い筆で墨書してあります。透けて裏の模様が重なるので、これ以降、白紙を差し込んで写真を撮りました。

様々な活花が、130図ほど載っています。

   芍薬         松竹梅

かきつ(かきつばたの略) かきつハ(第一)葉ノ表裏ヲ記ス事(二)二剪刀ヲ對照セシムル事(三)春夏及初秋迄ハ葉ノ両方ヲ長クシ中ヲ短クシ季秋ヨリ冬ハ反對(注)乳呑忘レザル様二スル事-ハ多ク前付根〆二用フル事(但シ其限リ二アラザルコトアリ)

芍やく 杓薬ハ花ノ無キ枝ヲ用フべカラズ

四君 梅 八朔梅 竹 寒竹 菊 白鳳 蘭 葉蘭

ここまでは、二世 春楊庵一豫が文政八年に記したものを、明治三十三年に写した、とあります。

以降は、『貞松斎米一馬撰  挿花衣之香』の写しです。貞松斎米一馬;江戸時代の活花作家、正風遠州流の祖。俳諧にも通じていた。

狗子柳 小菊 地目

したれ柳 菊七りん     仙人菊

馬蘭廿一枚  

松竹梅 竹筒より笹生したるまま

竹枝がついたままの筒をつかって、松梅を活けるなんてシャレてますね(^.^)

 芍薬葉らん     籠二仙人菊 馬蘭九枚

とにかく、和紙が非常に薄く、ページをめくるのにも骨が折れます。さらに、使われている筆の細さに驚きます。柳の細長い枝など、糸のように細い線でよく描いたものだと思います。

 

もう一冊の写本です。

『遠州流挿花淵源集 筒之巻』:

 

「遠州流挿花淵源集 花筒之巻弘化三春二月 郷貢實貞」とあります。元々、御望村(現、岐阜市御望)の郷家に秘蔵されていたものを、明治三十七年に白桃園主人が写し、それをさらに、大正十三年に祖父、淡松斎一蛍が写した、ことがわかります。

全部で100種の竹筒花生けが載っています。そのうちの一部を紹介します。

    鶴首        あんこ

   掛ケ満月        大黒

    手桶形      川太郎

  菅船 筒守り     五重伐り

音曲又小田原筒とも云 音曲ハ上の口廣し 千利休作

禅僧切り 天正之頃に小田原仁之砌箱根湯本早雲寺之竹ニテ切ル 千利休作

端之坊 端之坊の筒は下の口廣し

旅枕 夏ノ夜とも云 千利休作 

大欠 遠州公作

 矢倉切 千利休作   山鮟鱇 遠州公作

二重筒 石州公作     瀧壷 遠州公作

早船 遠州公作   翁船 大政大臣良房公作

活花遠州流は、結構、道具に凝っていることがわかりますね(^.^)

 

 

 

コメント (10)
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