遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

中観音堂の円空仏

2021年02月01日 | 故玩館日記

岐阜にも緊急事態宣言が出ています(愛知と連動(^^;)。

ずっと巣籠り状態なのですが、最近、NHKで円空特集をやっていたので、こんな時こそ円空さんと思い、出かけることにしました。

向かう先は、円空が開基したと言われている中観音堂です。休日なのに、電話を掛けても誰も出ないし、やはり閉館でしょうか。まあ、ダメもとで出かけることにしました。

 

やっぱり閑散として誰もいません。

外に置いてある円空仏のレプリカなどをながめてぶらぶらし、

横にある円空上人産湯の井戸を覗いたりしていました。

まあ、今日は帰ろうかと思っていた時、

「よろしければ見ていってください」

と声がかかりました。

地元の人で、午前中当番とのこと。

寒い中でウロウロしているのを見かねたのでしょう。まるで仏様のような人です(^.^)

中観音堂はこれまで何度も訪れているのですが、今回は、他に誰もおらず、心ゆくまで円空仏を見ることができました。

 

       高 222.0cm

この十一面観音像が中観音堂の本尊です。

ここにある17体の円空仏のうち最大で、観音堂の中央に置かれ、その両脇に他の円空仏が配置されています。

観音堂と円空仏は、地元の人々によって大切に守られてきました。現在は脇に円空資料館が併設され、地元の人が毎日、交代で詰めています。

円空の生誕地には諸説ありますが、現在、美濃の国のこの地、羽島市上中町中が最も確からしい所だと考えられています。寛永9(1632)年、美濃国(羽島市上中町中)で生まれた円空は、幼い頃、母親を洪水で亡くしました。円空が全国行脚をし、12万体もの円空仏を彫ったのは、母親を供養するためだったと言われています。円空仏がたたえる微笑みは、母親の面影が投影されているのかも知れません。

新幹線羽島駅から数km東南東のこの場所は、西に長良川、東に木曽川の2大河川に囲まれた水田地帯です。河川の配置がこのようになったのは天正十四年の大洪水以降です。それまで、長良川、木曽川ともに定まった流れはなく、多くの分流がこの辺りを流れていました。堤防などは何もなく、毎年洪水にみまわれました。その頃、この辺りは、美濃ではなく、尾張だったのです。ですから、信長が美濃を攻略するには、多数の分流、特に、一番西の大きな分流、境川(現在は排水路に近い小河川)を越えて西へ侵攻せねばならなかったのです。

天正十四年の大洪水以降、木曽川の本流は、数km東に変わったため、この地は、地理的には、尾張から美濃になりました。江戸時代に入ると、徳川御三家尾張藩は、慶長13年(1608)木曽川左岸に、「御囲堤」と呼ばれる大堤防を築き、藩内を洪水から守りました。西側の地域はそのままですから、この地の洪水はかえって増加しました。西の美濃側には、慶安3年(1650)、「篭堤」と呼ばれた堤防が築かれたましたが、この堤防は「尾張より低きこと3尺たるべし」というもので、増水時は、西の美濃側の堤防が決壊するようになっていたのです。

円空が生まれたのは、寛永9(1632)年です。ですから、当時、この地は尾張藩の犠牲となり、毎年のように激しい洪水に襲われていました。円空の母親もその犠牲になったのでしょう。

本尊十一面観音像の背面には四角にくりぬいた痕があります。内には円空が使った鉈が入っていて、「中を見た者は目が潰れる」と言われてきました。そのため、この観音像の内部を見た人は誰もいませんでした。

この度、地元の人々は意を決して、内部調査を行うことにしたのです。350年ほども闇の中に閉ざされていたのは、小型の銅鏡とボロボロになった九重経、そして、数珠と思われる透明の玉類でした。これらは母親の遺品の銅鏡、供養の経典、仏具と考えられ、ここが円空生誕の地であることの裏付けとなりました。

 

       30.3㎝、ヒノキ

 

  阿弥陀如来像 66.0㎝、ヒノキ

 

102.5㎝、ヒノキ   103.5㎝、ヒノキ

 

       114.2㎝、クス

 

       28.0㎝、ヒノキ

 

     68.5㎝、ヒノキ

 

   不動明王像 73.9㎝、ヒノキ

 

       57.5㎝、ヒノキ

 

       45.0㎝、ヒノキ

 

この地は、濃尾平野のまん中に位置します。地形的に上流で降った雨が集まりやすく、繰り返し大洪水に襲われました。人々は、円空仏にすがりながら、日々を送ってきたのでしょう。

中観音堂を守ってきたのは、100軒ほどの地元集落の人たちです。多くの家には、小さな円空仏が残されいて、大切に受けつがれています。

 

 

コメント (10)
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