それから少し眠って、おれたちは朝を迎えた。
せいあと、昼過ぎに荷物を持って、『ガーリック』の前で落ち合う約束をして、いったん別れた。
おれは、昨晩、この街に帰ってきた時、サラ婆の家に投げ出していったままの荷物を取りにいって、その後、京一の家に向かった。
彼らは、一ヶ月ぶりのおれの来訪に、心底驚いていた。京一とリズに、「せいあとこの街を出ていく」と告げて、まだベビーベッドで眠っている京太郎に、「元気でな」と声をかけて、頭を撫でて、出ていった。
ヨースケのバイト先にも顔を出した。京一たちに告げたことと同じことを告げると、彼らと同じように驚いて、「そうか…」と、同じことをつぶやいて、同じように、少し寂しそうな顔をして、それから笑った。
そして最後に、『ガーリック』に行った。店長に同じことを告げると、彼は、少し驚いて、それから、おれの目を見て、黙ってうなずいた。
彼らに伝えておけば、他の仲間たちに伝わるのも、そんなに時間はかからないはずだ。
ちなみにバスは、片づけが面倒臭いので、そのままにして出てきた。
せいあを待った。
待ち合わせの時間が来ても、彼女は来なかった。
5分後に、彼女が来た。
「おせー。ちこくー」
ぶすっとして言った。「自分はダチと待ち合わせしても、いつもさんざん待たすくせに、よく言うよな」と、ちょっと心の中で苦笑した。
だが、少し離れた所に立っている、せいあの姿をちゃんと見て、顔色が変わった。
「お前…荷物は?…ラウも」
彼女が持っているはずの荷物も、一緒にいるはずのラウも、そこにはいなかった。
潮風に髪を少し揺らしながら、彼女はおれの顔を見て、ちょっと困ったように、寂しそうに微笑んで言った。
「あたし、やっぱり行けない。この街にいるよ」
「…っ」
≪つづく≫
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はらはら。
一緒に、幸せになるのかと思ったのに・・
読者としてはこの後の展開が気になるところですw