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本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録。

いしいしんじ『麦ふみクーツェ』あらすじと感想

2012-05-02 09:43:43 | 紙の書籍
新潮文庫 いしいしんじ『麦ふみクーツェ』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
第一章
手術台で/吹奏楽の王様/いちばんうしろの高いところ/恐竜/コンクール/黒いマーチ/雨と楽園/みえないねこの声が街にひびく/麦ふみがこの世でとるさまざまなかたち/恩返しのための用務員さんのマーチ/あめ玉ください
第二章
遅刻する機関車/ちょうちょおじさん/赤い犬と目のみえないボクサーのワルツ/十月十二日のスクラップブックより/十一月三日のスクラップブックより/十二月二十一日のスクラップブックより(投函されなかった手紙)/三月二十三日のスクラップブックより/夏の盲学校/ぴかぴかの黒い羽根があなたを新世界へお連れします
第三章
せんたくばさみ/ねずみ男の末路/麦わら/きんたまつながり/女の子は船旅をたのしみにしている
第四章
みどり色/鏡なし亭にて/へんてこさに誇りをもてる唯一の方法/五月七日のスクラップブックより/六月十二日のスクラップブックより/ボクサーたち/生まれかわり男のみじかい思い出/やみねずみ再び/手術台で/心電図/この世では、待つことを学ばねばならない/灰皿/七月六日のスクラップブックより/七月八日のスクラップブックより/ものすごくからだのおおきな女性/麦畑のクーツェ

すべての話のつづきとして 栗田有起


【あらすじ】
ぼくは、とある海辺の町で、吹奏楽に取り憑かれている祖父と数式に取り憑かれている父と暮らしている。ぼくは、猫の鳴き声がとてもうまかったので、祖父から「ねこ」と呼ばれていたり、自分の部屋で「麦ふみクーツェ」と出会ったりする。
ぼくは、年齢よりはるかに大きな体と厄介な心を持て余しながら、音楽を志して住み慣れた町を出て、いろいろな経験をしながら少しずつ成長していく。


【感想】
いしいしんじの作品は以前に『雪屋のロッスさん』を読んだことがある。『雪屋のロッスさん』と違って『麦ふみクーツェ』のほうはなんというのか、読んでいてひりひりするような感じがしてたまらなかった。ファンタジーといえば聞こえがいいのだが、ただそんなに単純な話ではなく、痛いところを小さな針でチクチクされるような感覚がある。

「麦ふみクーツェ」
「ねずみ男」
「ねこ」
「黄色い土地」

これらが第一章から第四章までを通してつながっていき、最後には見事にあらゆることに辻褄が合い、「ああ。。そうだったのか」と思えるのだ。

とん、たたん、とん
とん、たたん、とん
黄色い土が麦ふみの足元から、もうもうと舞い上がる。

あとがきに栗田佑起が書かれていた文章が感慨深い。
>この本に、こどものころ出会いたかった、と思う。どんなふうに生きればいいかわからなくて、不安で、きょろきょろとお手本を探していたあの当時、もしもこの本を読む幸運に恵まれていたら、きっと夜は安心してぐっすりと眠ることができたにちがいない。じぶんがここにいることの不思議さや、元気すぎる同級生、理不尽な命令ばかりくりかえす大人たちを、あれほど恐れなくてもすんだだろうに、と思う。


【余談】
この作品を読んでいて、大島弓子『夏の夜の獏』を思い出した。主人公のぼく、実年齢は8歳の小学生、精神年齢は+10くらいだ。実年齢と精神年齢のギャップに苦しむ姿が重なった。
周囲と違和感を感じつつ、その場所にいなければならない辛さは、実はそこかしこに転がっているのかもしれない。


【リンク】
新潮社 いしいしんじ『麦ふみクーツェ』













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