新聞の広告で見て面白そうだったので読んでみた。現代の栄養に関わる常識が意外と危うい土台のもとに築かれていることを示してくれたのは、非常に興味深かった。生物学的に見て、人間が炭水化物をあまり必要としていないのかどうかは、それでも良く分からなかったが、歴史的には人間は生きるために炭水化物を必要としていた。すなわち安定して得られる食物ということだ。確かに糖類(砂糖)まで行くと、麻薬的な側面はあることは私 . . . 本文を読む
ハリー・ボッシュ・シリーズ邦訳最新刊を読了。スピーディーなサスペンス・ミステリー。初期の頃のコナリーは文章から音楽が聞こえてきそうだったが、最近はそういうことはない。自分の頭の中にある映像も、より鮮明で、テレビドラマっぽい。これは主人公が成長により、より犯罪に対して純粋に向かった結果かもしれないし、ただ単純にアメリカの流行りの連続ドラマのような軽快な展開が影響しているのかもしれない。シリーズ全体か . . . 本文を読む
1992年に出版された本で、高度成長期、安保闘争の時代からバブルの時代にかけての背景の中で、価値観の変化も登場人物などを通して見ることができる。他の作品と比べても、闇と戦う主人公というような感じではない、書かれた時代も影響しているのだろうか。株や土地取引の話、青山周辺の富裕層の日常的な買い物の話など、作家の冷徹な視線を感じ、今の自分の生活も何となく反省をさせられる。
物語としては、この作家独特 . . . 本文を読む
私は本を読むのが本当に遅いのだが、この作品も2カ月近くかかって、やっと読み終えた。毎日、電車の中で30分ずつぐらい読んでいるだけでは、これだけのボリュームの作品を読み切るのは(私には)難しい。とにかく長かったなぁという印象はあるが、最後の4分の1は、3日ぐらいで読んでしまったので、やはりクライマックスはそれだけ面白かったということだろう。
昨年話題になったスティーブン・キングの作品で、主人公が . . . 本文を読む
一昨年の年末に出版されたミステリのランキング本(イメージ的には1年ちょっと前に出た)の海外部門でかなり高いランクに評価されていた作品。特捜部Qシリーズの3作目である。ビンに詰められた手紙から捜査が始まるという結構あり得ない設定なのだが、手紙自体が判読しづらい状態ということもあって、読者は手紙の送り主に何があったのかとりあえず知りたくなり、登場人物同様、事件に引き込まれていく。
この作品は確かに . . . 本文を読む
何を今更という感じだろうが、やっと「ダンス・ダンス・ダンス」を読んだ。
この本は、私が大学生になりたての頃に、「ノルウェイの森」などと一緒に大学生協の本屋に平積みされていた。そして、友人のK君の部屋にもあったし、確かウーさんとK君がこれらの本について話していたのも記憶している。彼らとは映画については、同等に話ができたが、本については話をしたことはないように記憶していう。私は単に子供だったので、 . . . 本文を読む
NHKのラジオ講座で著者の作品を英語で読むというものがある。今年度の下期はこの短編集にある作品を読んでいるのだが、とても気に入ったので短編集一冊を読んでみたいと思って買い求めた。知らずに買ったのだが、これは「After the quake」という阪神大震災の後に書かれた作品で、いずれの短編作品も震災が背景にあり、人間の心の中を描いた物語である。
読みやすい文章で、情景がビジュアルに浮かび上がる . . . 本文を読む
恐慌前のベルリンで警察の風紀科に配属されたラート警部が、殺人科復帰のために奔走するミステリである。全体にユーモアのセンスが溢れていて、ラート警部もドジなことを次々としてしまうところから、比較的軽く読める。しかし、ドイツ人の名前は馴染みが無いため、人物像が固まらなくて、物語の筋が分かりづらかった。恐慌前、大戦前の少し危険な時代背景に繰り広げられるドラマの登場人物は、ギャングあり、政治犯ありと、ちょっ . . . 本文を読む
新宿鮫の最新刊(ノベルス版)を読んだ。自分が好きな作家ということもあるかもしれないが、ハードボイルドでありながら、文体が非常に自然で、演出を狙って無理に格好つけた表現が少ない。読みやすいことは当たり前で、でも余計なところに気をつかわなくて済むと言う点で、私としては好ましいと思っている。久しぶりにこの作家の本を読んだが、安心して読めるなぁというのが印象。
物語自体も比較的単純なプロットで構成され . . . 本文を読む
少し前に「羊をめぐる冒険」を読んで、読んだ後にそれが一応三連作の三番目だということを知り、あわてて前の二作、すなわちデビュー作と第二作目を読んだ。「風の歌を聴け」は大学生の時に読んだことがあるのだが、それ以後、続けて読むことがなかったのは、当時の自分を振り返って見て、何となく分かった。文章として(こう言っては失礼かもしれないが)青臭く、広告代理店の作ったようなスタイルが当時の自分には合わなかったの . . . 本文を読む