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まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

「幸福の政治経済学」―人々の幸せを促進するものは何か

2005-07-05 23:59:02 | おすすめ書籍など
幸福の政治経済学―人々の幸せを促進するものは何か

ダイヤモンド社

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そもそも経済学の目的とは何だったのか?
-それは人々を幸せにすること、あるいは人々の苦悩を最小限に食い止めること、それに尽きる。

監訳者の佐和隆光氏は、まえがきでこう述べています。
しかし、この目的は、経済学ばかりではなかったはずです。
20世紀は、工業が目覚しく発達し、あらゆる分野が細分化され、舞台(危機的な問題を含めて)は地球規模に膨らみました。
しかし、この21世紀は、このバラバラになったモノ達、学問も産業も、そして人や智恵や文化までも、これらを再び結び付けること、これこそが最も重要になる時代だと、私は思います。

幸福という概念は、個人によって捉え方が全く違うため、著者は、客観的な評価だけでなく、もっと主観的な評価を取り入れていいというスタンスに立っています。経済学に留まらず、心理学や社会学や政治などにも範囲を広げ、何が人を幸福たらしめるのかを、これまでの幸福に関する相当な数の研究や主張を紹介・概観しながら、独自のアプローチに挑んでいます。
カナダでGNH(国民総幸福量)に関する国際会議が開かれ、イギリスが国をあげて研究に取り組むように、この分野の研究はますます世界の関心を集めることになるでしょう。
彼らの結論を読んで、なぜ私がまちづくりというプロセスにこだわっているのかが、よくわかるように思います。

一つ、本書で残念に思うのは、人の住む地域特性(気候や食糧、地形など)や精神的な成熟度(教育、思想や宗教などがもたらす心の発達)が与える影響が、ほとんど除外されていることです。個人的には重要な要素だと思うのですが。。。

とはいえ、それを差し引いても、このような学問の枠を超えた野心的な取り組みは、大いに評価すべきですし、著者の熱い思いは第10章から容易に伝わってきます。21世紀に入って、学問はますます統合化されていく、そんな傾向の一つと強く感じます。

↓本書に紹介されている資料の一つ。
World Database of Happiness
http://www1.eur.nl/fsw/happiness/

Ken Wallace氏のブログ「GNH2」
http://gnhtwo.blogspot.com/

第二回GNH国際会議に関する記事一覧(賛否両論どちらも掲載してます)
http://www.gpiatlantic.org/conference/media01.htm

本書目次

監訳者まえがき
序文

【第1部 幸福をどうとらえるか】

第1章 幸福とは何か
1-1 幸福は人生の究極の目標か
1-2 幸福という概念
1-3 なぜ幸福が重要なのか
1-4 幸福を増進させるための手続き

第2章 経済学における幸福のとらえ方
2-1 「効用」という概念
2-2 「効用」を考え直す
2-3 主観的な幸福はどのように自己申告されるか
2-4 幸福に関する指標の評価
2-5 幸福に関する他の指標
2-6 第2章のまとめ

第3章 幸福に影響を与えるさまざまな要因
3-1 経済的な観点
3-2 性格的な要因
3-3 社会・人口統計上の要因
3-4 実証的分析:ミクロ計量経済学的な幸福関数
3-5 第3章のまとめ

【第2部 経済的条件が幸福に与える影響】

第4章 所得と幸福の関係
4-1 所得と幸福に関する新旧の考え方
4-2 各国の比較から見た所得と幸福の関係
4-3 時系列で見た所得と幸福の関係
4-4 個人間の所得格差
4-5 第4章のまとめ

第5章 雇用と幸福の関係
5-1 失業をどのようにとらえるか
5-2 個人にとっての失業
5-3 失業全般がもたらす影響
5-4 雇用と仕事に対する満足
5-5 余暇がもたらす満足
5-6 第5章のまとめ

第6章 インフレと幸福の関係
6-1 インフレのコスト
6-2 幸福の研究から見たインフレ
6-3 第6章のまとめ

【第3部 政治的条件が幸福に与える影響】

第7章 現行の政治経済プロセスと幸福の関係
7-1 政治と人々の幸福
7-2 現行の政策に対する個人の評価
7-3 個人の満足度と政府
7-4 具体的な政策と幸福度
7-5 政治党派別に見た幸福度
7-6 第7章のまとめ

第8章 政治体制と幸福の関係
8-1 政治体制の影響
8-2 立憲民主制と幸福の関係
8-3 直接民主制と連邦制が幸福に与える影響
8-4 第8章のまとめ

第9章 政治への参加と幸福の関係
9-1 プロセスの効用
9-2 実際の参加による効用
9-3 参加の権利がもたらす効用
9-4 政治参加の実証分析
9-5 第9章のまとめ

【第4部 結論】

第10章 幸福の政治経済学
10-1 幸福の研究と経済学
10-2 経済及び社会における幸福
10-3 経済政策上の意義
10-4 既存の経済理論
10-5 残された課題

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1 コメント

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Unknown (ひろぽん)
2005-07-24 08:09:25
先日はまちづくり勉強会、おつかれさまです。佐和隆光氏の本、僕も「市場主義の崩壊」という本を読みました。経済学は無知だったんですが、そんな自分でもスラスラ頭にはいってきておもしろかったです。全体にわたって保守派とリベラル派という軸をもってかかれていました。今回紹介してくださった本も読んでみたいなって思いました。

ありがとうございます。
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