■結審
2019年2月18日、原告・小林勝の被告・学校法人中央学院に対する損害
賠償請求訴訟は結審した。
■原告最終準備書面の一部公開
以下は、原告が東京地方裁判所に提出した「原告最終準備書面」(全文51頁)の
冒頭の「はじめに」の部分である。
■解説
原告は、大学院経済学研究科の博士課程を出ているが、中央学院大学法学部
や商学部の教授や学部長に専任教員にすると約束され、あるいはその意向を示され、
自分の専門分野である経済学とは全く異なり、法律科目である「EC法(後の
EU法)」や、学際的科目である「国際関係論」、さらには社会学科目である
「社会学」や「社会学概論」を担当することになった。
大学院での専攻科目とまったくことなり、もちろん研究業績もない多数の
専門科目を、教員(専任教員、非常勤講師を問わない)に担当させることなど、
まともな大学においてはありえない。こんな雇い方は、全国でも中央学院大学
だけであり、それも非常勤講師の原告一人に対してだけである。
こうして原告の担当科目と担当コマ数は、次のように増えた。
1993年度(計3コマ)
ドイツ語3コマ
1998年度(計4コマ)
ドイツ語3コマ+EC法
1999年度(計7コマ)
ドイツ語3コマ+EC法+社会学2コマ+社会学概論
2000年度(計8コマ)
ドイツ語3コマ+EC法+社会学2コマ+社会学概論+国際関係論
2001年度~2015年度(15年間は計6コマ)
ドイツ語+EU法+社会学2コマ+社会学概論+国際関係論
中央学院大学の専任教員の義務的担当コマ数は5コマであり、これを超えて
担当すると、給与等とは別に「超過コマ手当」が別途支給されることになって
いる。
通常、専任教員は、自分の専攻科目を担当し、全くの畑違いの科目を担当する
ことなどありえない。原告のように、経済学部の大学院博士課程を出ている者に、
法律科目である「EC(EU)法」を担当させることなどありえない。ところが、
被告の学校法人中央学院は、これをやったのである。
専任化を餌に、低賃金で専門以外の多数の学問を行わせ、原告の学者としての
人生を変えたことについて、被告の学校法人や佐藤英明・前学長は、準備書面
や陳述書で、「専任教員化の約束はなかった」「がんばれば専任化されるかも
という程度の話だった」、「1か所で多数のコマを持てるから効率的だったので、
原告のほうから積極的に多数のコマを引き受けた」などと、臆面もなく主張して
いる。(特に、佐藤前学長の陳述書は後日公開する。)
その程度のことで、すでに当時、外国研究を15年も続け、書籍の完成が
目前で、学位の申請を計画していた原告が、この計画を中断し、自分の専門外の
4科目もの専門科目を新たに引き受けることなどありえないことは、まともな
学者なら誰でも理解できるが、この前学長は、先のようにぬけぬけと言って
のけた。
以下に公開する原告の最終準備書面の冒頭の【はじめに】では、被告が、各専門
科目を担当する専任教員4人を雇わずに、原告1人に担当させることによって
手にした「節約」は、15年間で7億1250万円であると指摘している。
これは原告が4コマの専門科目を15年間担当した期間の計算であり、3コマの
専門科目を担当した4年間の「節約」額も加えると、合計8億5000万円にもなる。
「平成28年(ワ)第36999号 損害賠償等請求事件
原 告 小林 勝
被 告 学校法人中央学院
第6(最終)準備書面
2019年(平成31年)2月18日
東京地方裁判所
民事第36部 合議係 御中
原告訴訟代理人
弁護士 加 藤 晋 介
同 指 宿 昭 一
同 河 村 健 夫
同 吉 田 伸 広
同 河 村 洋
同 山 田 大 輔
同 早 田 賢 史
同 内 村 涼 子
【はじめに】
原告は、1993年(平成5年)4月に政治史の専任教員採用含みで被告経営に
係る中央学院大学(以下被告大学という)への教員としての就業を勧誘されたが、
結局政治史の講座は休講となったため、同年4月以降被告大学における専任教員化
の期待を持たされたままドイツ語の非常勤講師の地位に甘んじさせられた。
そして、被告大学はこの様な原告の専任教員化の期待に乗じて、原告の将来に
おける被告大学における専任教員化を匂わせながら、1998年(平成10年)から
原告の専門外であるEC法、1999年(平成11年)からは同じく原告の専門外で
ある社会学、社会学概論、2000年(平成12年)からはこれらに加えてこれも
原告の専門外である国際関係論の授業を「非常勤講師」として担当させ続けた。
被告大学は、この様な大学における「専門科目」を①「専任教員」を配置すること
なく、しかも②15年以上の長期に亘って、③専門分野外で何の経験もなかった原告
に関連性の薄いEU法、社会学、社会学概論、国際関係論等の授業を担当させて
きた。
大学においては専門科目について、学生に責任を持った専門科目の教育を受け
させるために「専任教員」の配置が求められているにも拘わらず、被告大学は、
専任教員の人件費の5分の1(専任教員の平均年間人件費は約1250万円、原告
が被告から支払われた非常勤講師としての人件費は年間約250万円)にすぎない
非常勤講師としての地位に甘んじてきた原告の厚意のうえに胡座をかいて、「専任
教員」を雇う人件費を節約してきた。
被告は「主要授業科目」である「専門科目」4科目を、「専任教員」を雇用し
ないまま15年以上に亘って学生に提供してきたのであり、原告の負担のうえに
被告が得てきた専門科目4科目の授業について「専任教員」を雇用しないままに
学生に提供できた「人件費節約分の利得」としては、4科目に専任教員を雇用した
場合の人件費は年間1250万円×4科目=5000万円、これが15年間分で
5000万円×15年=7億5000万円、そしてこの間に原告が被告から支払わ
れた講師料を年額250万円として、250万円×15年=3750万円にすぎない
から、7億5000万円-3750万円=7億1250万円が、被告が専門4科目に
ついて「専任教員」を雇用せず非常勤講師である原告に負担をかけることによって
得てきた「利得」に他ならない。
原告と被告との間に非常勤講師としての契約が存在することから、「法律上の原因」
を欠く不当利得とはならないものの、原告の4科目にも及ぶ専門外科目をも学習して
各専門科目を被告大学の大学生に教えるという著しい負担の一方、被告が得た「利得」
は膨大で、公序良俗に反する「暴利行為」とでも言うべきもので、経済的な「搾取」と
しても是認しうるものではない。
他方、原告は、被告大学に就業した時から被告大学での専任教員への採用期待を持た
され続け、被告の誠実な対応に期待して非常な努力をしながら4科目にも及ぶ専門科目
を引き受け、当時大学時代の恩師から持ち込まれた他大学での専任教員としての就職
斡旋も辞退して、他大学での専任教員としての職を得る機会も失った。
そして、当時の被告大学の法学部長であった齊藤教授は、原告のそのような状況を
知って、その在任中、原告の専任化に向けて行動したがその在任中これを果たせず、
その後2006年(平成18年)ころ法学部長に就任した土橋教授は、原告への同情を
装って原告の専任教員化を約束したが、専任教員化の約束を自らの学位論文の出版の
ための作業に原告を利用するだけ利用して、約束を反故にした。
原告は、これらの経緯を、被告大学と原告所属の労働組合との団体交渉において
説明し、原告の専任教員化を要求したが、被告大学はその理由も明らかにしない
まま、原告の専任教員化を拒否してきたのが本件事案である。
原告の境遇を亡くなった館教授や、証人に立った平澤教授が同情し、また被告大学の
職員や理事の中にも同情者が少なからず存在するのは、この様な経緯があるからである。
原告は、被告大学の専任教員化を匂わせての4科目にも及ぶ専門科目の授業の担当を
非常な努力のうえに15年を超える長期に亘って、劣悪な非常勤講師の労働条件に甘ん
じながら実行してきた。しかし、被告は原告のこの様な努力と被告の経営への協力・貢献
に何ら誠実に応えることをしない。
原告も既に68歳で、定年年齢も近い。原告は、明らかに被告や被告大学の無責任な
教員らの不誠実な対応によって、研究者としての機会を踏つけにされ、人生を台無しに
され踏みにじられてきたと言っても過言ではない。
原告は、大学教員としての矜恃から、専任教員との対比でも決して劣ることのない
教員としての職責を果たしてきたとの自負から、労働契約法20条を不法行為の請求
原因として掲げるが、労働契約法20条を掲げるまでもなく、被告が本件において
原告に強いてきた境遇、処遇は、経済的には一種の暴利行為としてその「清算」が
求められるべきものであるし、法的には継続的な大学教員としての処遇上、被告に
おいて信義に反する処遇が継続したものとして、不法行為が成立し、原告の誠実な
大学教員としての人生を踏みつけにしたことに対しての相当の賠償が命じられるべき
ことを、原告は主張するものである。」
2019年2月18日、原告・小林勝の被告・学校法人中央学院に対する損害
賠償請求訴訟は結審した。
■原告最終準備書面の一部公開
以下は、原告が東京地方裁判所に提出した「原告最終準備書面」(全文51頁)の
冒頭の「はじめに」の部分である。
■解説
原告は、大学院経済学研究科の博士課程を出ているが、中央学院大学法学部
や商学部の教授や学部長に専任教員にすると約束され、あるいはその意向を示され、
自分の専門分野である経済学とは全く異なり、法律科目である「EC法(後の
EU法)」や、学際的科目である「国際関係論」、さらには社会学科目である
「社会学」や「社会学概論」を担当することになった。
大学院での専攻科目とまったくことなり、もちろん研究業績もない多数の
専門科目を、教員(専任教員、非常勤講師を問わない)に担当させることなど、
まともな大学においてはありえない。こんな雇い方は、全国でも中央学院大学
だけであり、それも非常勤講師の原告一人に対してだけである。
こうして原告の担当科目と担当コマ数は、次のように増えた。
1993年度(計3コマ)
ドイツ語3コマ
1998年度(計4コマ)
ドイツ語3コマ+EC法
1999年度(計7コマ)
ドイツ語3コマ+EC法+社会学2コマ+社会学概論
2000年度(計8コマ)
ドイツ語3コマ+EC法+社会学2コマ+社会学概論+国際関係論
2001年度~2015年度(15年間は計6コマ)
ドイツ語+EU法+社会学2コマ+社会学概論+国際関係論
中央学院大学の専任教員の義務的担当コマ数は5コマであり、これを超えて
担当すると、給与等とは別に「超過コマ手当」が別途支給されることになって
いる。
通常、専任教員は、自分の専攻科目を担当し、全くの畑違いの科目を担当する
ことなどありえない。原告のように、経済学部の大学院博士課程を出ている者に、
法律科目である「EC(EU)法」を担当させることなどありえない。ところが、
被告の学校法人中央学院は、これをやったのである。
専任化を餌に、低賃金で専門以外の多数の学問を行わせ、原告の学者としての
人生を変えたことについて、被告の学校法人や佐藤英明・前学長は、準備書面
や陳述書で、「専任教員化の約束はなかった」「がんばれば専任化されるかも
という程度の話だった」、「1か所で多数のコマを持てるから効率的だったので、
原告のほうから積極的に多数のコマを引き受けた」などと、臆面もなく主張して
いる。(特に、佐藤前学長の陳述書は後日公開する。)
その程度のことで、すでに当時、外国研究を15年も続け、書籍の完成が
目前で、学位の申請を計画していた原告が、この計画を中断し、自分の専門外の
4科目もの専門科目を新たに引き受けることなどありえないことは、まともな
学者なら誰でも理解できるが、この前学長は、先のようにぬけぬけと言って
のけた。
以下に公開する原告の最終準備書面の冒頭の【はじめに】では、被告が、各専門
科目を担当する専任教員4人を雇わずに、原告1人に担当させることによって
手にした「節約」は、15年間で7億1250万円であると指摘している。
これは原告が4コマの専門科目を15年間担当した期間の計算であり、3コマの
専門科目を担当した4年間の「節約」額も加えると、合計8億5000万円にもなる。
「平成28年(ワ)第36999号 損害賠償等請求事件
原 告 小林 勝
被 告 学校法人中央学院
第6(最終)準備書面
2019年(平成31年)2月18日
東京地方裁判所
民事第36部 合議係 御中
原告訴訟代理人
弁護士 加 藤 晋 介
同 指 宿 昭 一
同 河 村 健 夫
同 吉 田 伸 広
同 河 村 洋
同 山 田 大 輔
同 早 田 賢 史
同 内 村 涼 子
【はじめに】
原告は、1993年(平成5年)4月に政治史の専任教員採用含みで被告経営に
係る中央学院大学(以下被告大学という)への教員としての就業を勧誘されたが、
結局政治史の講座は休講となったため、同年4月以降被告大学における専任教員化
の期待を持たされたままドイツ語の非常勤講師の地位に甘んじさせられた。
そして、被告大学はこの様な原告の専任教員化の期待に乗じて、原告の将来に
おける被告大学における専任教員化を匂わせながら、1998年(平成10年)から
原告の専門外であるEC法、1999年(平成11年)からは同じく原告の専門外で
ある社会学、社会学概論、2000年(平成12年)からはこれらに加えてこれも
原告の専門外である国際関係論の授業を「非常勤講師」として担当させ続けた。
被告大学は、この様な大学における「専門科目」を①「専任教員」を配置すること
なく、しかも②15年以上の長期に亘って、③専門分野外で何の経験もなかった原告
に関連性の薄いEU法、社会学、社会学概論、国際関係論等の授業を担当させて
きた。
大学においては専門科目について、学生に責任を持った専門科目の教育を受け
させるために「専任教員」の配置が求められているにも拘わらず、被告大学は、
専任教員の人件費の5分の1(専任教員の平均年間人件費は約1250万円、原告
が被告から支払われた非常勤講師としての人件費は年間約250万円)にすぎない
非常勤講師としての地位に甘んじてきた原告の厚意のうえに胡座をかいて、「専任
教員」を雇う人件費を節約してきた。
被告は「主要授業科目」である「専門科目」4科目を、「専任教員」を雇用し
ないまま15年以上に亘って学生に提供してきたのであり、原告の負担のうえに
被告が得てきた専門科目4科目の授業について「専任教員」を雇用しないままに
学生に提供できた「人件費節約分の利得」としては、4科目に専任教員を雇用した
場合の人件費は年間1250万円×4科目=5000万円、これが15年間分で
5000万円×15年=7億5000万円、そしてこの間に原告が被告から支払わ
れた講師料を年額250万円として、250万円×15年=3750万円にすぎない
から、7億5000万円-3750万円=7億1250万円が、被告が専門4科目に
ついて「専任教員」を雇用せず非常勤講師である原告に負担をかけることによって
得てきた「利得」に他ならない。
原告と被告との間に非常勤講師としての契約が存在することから、「法律上の原因」
を欠く不当利得とはならないものの、原告の4科目にも及ぶ専門外科目をも学習して
各専門科目を被告大学の大学生に教えるという著しい負担の一方、被告が得た「利得」
は膨大で、公序良俗に反する「暴利行為」とでも言うべきもので、経済的な「搾取」と
しても是認しうるものではない。
他方、原告は、被告大学に就業した時から被告大学での専任教員への採用期待を持た
され続け、被告の誠実な対応に期待して非常な努力をしながら4科目にも及ぶ専門科目
を引き受け、当時大学時代の恩師から持ち込まれた他大学での専任教員としての就職
斡旋も辞退して、他大学での専任教員としての職を得る機会も失った。
そして、当時の被告大学の法学部長であった齊藤教授は、原告のそのような状況を
知って、その在任中、原告の専任化に向けて行動したがその在任中これを果たせず、
その後2006年(平成18年)ころ法学部長に就任した土橋教授は、原告への同情を
装って原告の専任教員化を約束したが、専任教員化の約束を自らの学位論文の出版の
ための作業に原告を利用するだけ利用して、約束を反故にした。
原告は、これらの経緯を、被告大学と原告所属の労働組合との団体交渉において
説明し、原告の専任教員化を要求したが、被告大学はその理由も明らかにしない
まま、原告の専任教員化を拒否してきたのが本件事案である。
原告の境遇を亡くなった館教授や、証人に立った平澤教授が同情し、また被告大学の
職員や理事の中にも同情者が少なからず存在するのは、この様な経緯があるからである。
原告は、被告大学の専任教員化を匂わせての4科目にも及ぶ専門科目の授業の担当を
非常な努力のうえに15年を超える長期に亘って、劣悪な非常勤講師の労働条件に甘ん
じながら実行してきた。しかし、被告は原告のこの様な努力と被告の経営への協力・貢献
に何ら誠実に応えることをしない。
原告も既に68歳で、定年年齢も近い。原告は、明らかに被告や被告大学の無責任な
教員らの不誠実な対応によって、研究者としての機会を踏つけにされ、人生を台無しに
され踏みにじられてきたと言っても過言ではない。
原告は、大学教員としての矜恃から、専任教員との対比でも決して劣ることのない
教員としての職責を果たしてきたとの自負から、労働契約法20条を不法行為の請求
原因として掲げるが、労働契約法20条を掲げるまでもなく、被告が本件において
原告に強いてきた境遇、処遇は、経済的には一種の暴利行為としてその「清算」が
求められるべきものであるし、法的には継続的な大学教員としての処遇上、被告に
おいて信義に反する処遇が継続したものとして、不法行為が成立し、原告の誠実な
大学教員としての人生を踏みつけにしたことに対しての相当の賠償が命じられるべき
ことを、原告は主張するものである。」