Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

ウィキメディア財団の今次募金の使途は動画鯖購入

2008-12-04 23:55:12 | ウィキメディア
11月初めよりウィキメディア財団の寄附金募集活動が行われています。
WPをはじめとするWMのページに行くとヘッダにでかいバナーが付いてて、テラウザスとか言われてるアレです。

メタからの翻訳でWikipedia:お知らせに載った財団側の説明によると、

・現会計年度の年間支出はおおよそ6百万ドルである
・そのうち2百万ドルしか調達できておらず、残りを募金で賄う必要がある。
・収入目標を達成できなければ、最終的にはスタッフを解雇し、サーバーと帯域を"予定していた能力"より縮減しなくてはならない。
・ウィキペディアの"運営を続けるため"には、収入目標を達成しなければならない。
・この募金活動は1月15日まで続けられる。

とのことです。


"to continue to operate Wikipedia" なんて文言を見ると、一見、ウィキメディア・プロジェクトそのものの存続の危機であるかのようにも見えます。
ところが、鯖と帯域は「現在の能力」から減らされるのではなく、 "capacity planning for servers and bandwidth" 「予定していた能力」から減らされる――としているところには注意しておく必要があります。

もちろんWMへのアクセスは日々増え続けており、また編集と履歴保存を続けるためには現状維持では(常に)足らず、
時が経つにつれてより多くの鯖と帯域が必要になるということは理解できます。
基本非営利なので、寄附(それと、公共的な目的に対する寄附の文化)に頼るというのも間違ってはいません。

しかしそれにしても、現時点でのプロジェクト運営のための費用がいくらなのかは存じませんが、
財布の中身の3倍もの予算を組んどいてからに殊更に財政危機を煽り立てるってどんだけなんだよ、とも思うのです。

   *  *  *  *

きょうは募金活動の論評をしたいのではありません。ここからが本題です。
少し前にこんなニュース記事が出ていました。

Wikipedia gears up for flood of video and photo files
http://news.cnet.com/8301-17939_109-10103177-2.html
 (CNET News 2008年11月19日 22:07 (PST))

サン・マイクロシステムズ社の発表によると、ウィキメディア財団はサンから大量のサーバを購入する。
ウィキメディアはファイル投稿機能の仕様を変更し、ファイルサイズの上限を 100 MB に拡大する予定だ。
またウィキメディアはオンライン・ビデオエディタを動画編集ソフト開発業の Kaltura 社と共同開発しており
これが実装されれば、テキストと同様に他者の動画をオンラインで編集し、編集履歴も参照できるようになる。
これらはまず、オープンソースのビデオコーデック Theora をネイティブサポートするウェブブラウザ Firefox 3.1 上で実現することとなる。
現在、全ウィキペディアにある画像と動画・音声ファイルは 5 TB 以内に収まっているが、
新サーバと新サービスの稼働により、2009年末にはこれが 10~15 TB に増えることを見込んでいる。

というのが大意。


なるほど、募金の使途はこれですか。

これはなかなか面白そうですね。
先月にバージョン 1.0 がリリースされた Theora はまだ普及した形式ではありませんが、
Firefox の次期バージョン 3.1 がネイティブサポートすることで、ある程度の普及が見込まれています。
WMがそれを使ったオンラインサービスを大々的に始め、それが流行ってくれば、
Theora は現在オンライン動画のデファクトスタンダードである FLV 形式の対抗馬としての存在感を持つことになるでしょう。

願わくば、もっと多くのブラウザが Theora をサポートしてくれれば……


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