Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

「参考出展:wikipedia」

2011-04-11 18:47:38 | 作品ネタ
先週 TOKYO MXBS11 で放映された(AT-X では13日から放送)新作アニメ『30歳の保健体育』第1回(監督・絵コンテ・演出: まんきゅう、脚本: 秋山 亮、作画監督: 江上夏樹、アニメーション制作: ギャザリング)の中に、こんなカットが。



ウワーwikipediaッテトッテモヤクニタツインターネットダナー(棒

主題名も内容も全部が全部墨塗りじゃイミナイジャ~ン...

   *  *  *  *

まず前提として、ウィキペディアでは記事内容の検閲は行われていませんので、エロもグロもショッキングな内容も無差別に存在します。中立的な(つまり淡々とした)内容で。
ですので記事内容への墨塗りがあるとすれば、それは記事を二次利用した者の主観的判断のみに拠ることになります。


次に、最近のテレビアニメにおけるエロ・グロ表現の自主規制の一般的情勢に照らしてみてみましょう。
自主規制による画面改変には幾つもの手法がありますが(本題から外れるので詳細は略)、それらのほとんどはいずれも絵面的な問題に対する対処であって、文字表現に対するものではありません。
アニメとは(主に) "絵で見せる" 芸術なのですから、まあそれも当然とも言えますが。(余談ですが、動画表現としてのアニメーションの至上主義的ファンは、絵をあまり動かさずに説明台詞の多用でストーリーを進行する演出やそういう作品を嫌っていますよね)

擬音等の文字を音喩として視覚化表現する手法はアニメにおいても漫画の延長線上で多用されていますが、画面内の文章をガチで読ませるという表現手法はアニメではほとんどみられません。
これが漫画であれば、そもそも漫画自体が書籍の一ジャンルであるが故に、そういう文章を読ませる形の表現を一部の齣に挟むようなことは時々みられます。
しかし第一義的に絵と音声で表現すべきとされているアニメではこれは禁じ手であり、また視聴者にとっても苦痛にしかならないであろうことは明らかであるので、アニメでは通常、こういう場面では説明台詞などの代替手段が採られることになります。

本カットの場合、仮に墨塗りが無かったとしても、別に文章を読ませるためではなく、話のテンポの中で「wikipediaにこんな感じで書いてあった」という状況を数瞬見せるだけのシーンと思われますので、その禁じ手的演出云々というのはたぶん杞憂かと。


しかし最近は、「隠すという行為それ自体をネタ」とする "自主規制" 改変が流行しているのも事実でして。

この流行の発端となったのは言うまでもなく2005年10月放送の『ガン×ソード』第17話(監督: 谷口悟朗、アニメーション制作: AIC A.S.T.A.、脚本: 倉田英之、コンテ: 北村真咲・谷口悟朗、演出: 北村真咲、作画監督: 中谷誠一・西田亜沙子)における所謂 "ロバ祭り" でして、特に2010~11年には「顔アイコン」(いちばんうしろの大魔王)、「鬼印」(B型H系)、「ペンギンとネコ」(お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!)などと隆盛をみせています。
これらに共通する制作側の狙いは、放送される素材だけへと露出表現の制限をかけることで「ビデオグラム化時のプレミアム感を露骨に強調し、セルソフトを買わせる戦略」というのも勿論ありますが、一見なんでもないような場面でも「殊更に一部を隠すことによって、その場面が却ってエロく見える」という効果が現れることも視野に入っていると思います。

翻って本カット。
本アニメのビデオグラム化時にこの墨塗りは無くなるのかどうかはわかりませんが、仮にソフトでこの墨塗りが解けるとすると、それでは単なる背景説明齣の一つになってしまって、この齣の状態自体から発せられるネタの香りというのは全く失われてしまうであろうことは確かでしょうね。


順番が後回しになりましたが、ここで本作についての個別事情の説明をしておきましょう。
本作『30歳の保健体育』は2008年11月に正編が刊行された同題の恋愛・性交ハウツー本が原作で、2010年8月13日にまさかのアニメ化発表(*1, 2)。それも何をトチ狂ったのか公開媒体はテレビ放映だという続報が入り(*3, 4)、2011年4月より放送開始の運びとなって現在に至ります。
放送形態は15分番組で、15分ながらOP・EDあり。第1回放送では枠内で4話分が流されました。ショートアニメの詰め合わせですね。BD/DVD の発売予定によると一巻3回収録・全4巻(*5)なので、全12回予定。

そのアニメというのがいざ始まってみると、内容が内容だけに、伏字、伏せ声、墨塗り等の自主規制だらけ。
サブタイトルにまで伏字が来る始末(1、2話の一部、3話は全部が!)。
あまりに自主規制部分が多くて、わけがわからないよ。なぜこれをTVで流そうと思ったし。
例の改正都条例の表現規制による荒野の体現第一号でも狙ったのか? って位。

その有様を端的に示すのが本カット……なのですが、隠したが故に却って新たなネタとして成立してしまった。というのが現状。
放送版は内容が規制され過ぎで、今のところ面白いかと訊かれるとアレだ(筆者の主観なので参考になりません、というより話の流れ上ここではそういうことで)というのに、ソフト版ではこのネタが解除されてしまいそうで、もしそうなると放送版よりも面白くなくなりそうだし(繰り返しますがあくまでも筆者の歪んだ主観です)。
どーすんのさこれ。

   *  *  *  *

ところで本カットを見直してみると、「参考出【展】:wikipedia」って書いてあるじゃないですか。
これはひどい。弩定番の誤変換ですよ。

「出典」を「出展」と書いてしまう誤記は、実はウィキペディアの井戸端やノートページでも頻出だったりします。
出展て、お前は何かの展示会にブースでも出すんかいな。

要出「展」の乱用』という、ケッサクなウィキペディアのスクリーンショットを思い出したよ。


Creative Commons License


(本件続報あり)

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(*1) = コミケ78:まんたんブロード特別号外を配布 表紙ポストカード、いとうのいぢグッズも - MANTANWEB、2010年8月13日
(*2) = 30歳の保健体育:アニメ化決定 累計30万部のハウツー本、非モテ男子の強い味方 - MANTANWEB、2010年8月15日
(*3) = 「30歳の保健体育」まさかのTVアニメ化決定 - コミックナタリー、2010年10月2日
(*4) = "非モテ"アニメの決定版! 『30歳の保健体育』、まさかのTVアニメ化が決定 - マイコミジャーナル、2010年10月2日
(*5) = 6月24日よりブルーレイ&DVD発売決定! - 30歳の保健体育オフィシャルブログ、2011年3月18日

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30歳の保健体育 (アニメ公式)
http://30sai.jp/
アニメ 30歳の保健体育
TOKYO MX *アニメ「30歳の保健体育」
http://www.mxtv.co.jp/30sai/
アニメ 30歳の保健体育 | BS11
http://www.bs11.jp/anime/1377/
30歳の保健体育 - ニコニコチャンネル (第1回無料配信中)
http://ch.nicovideo.jp/channel/ch60007
30歳の保健体育 | 番組 | AT-X ワンランク上のアニメ専門チャンネル
http://www.at-x.com/program/detail/2711
一迅社WEB | 30歳の保健体育 (原作本公式)
http://www.ichijinsha.co.jp/special/30sai/
一迅社WEB 30歳の保健体育

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Summary of images:
Description = 参考出展:wikipedia
Source = 『30歳の保健体育』LESSON 2 (放送版)
Date = 2011-04
Author = (c) 一迅社/HTPJ
Permission = 日本国著作権法32条1項に基づく引用

Description = 要出「展」の乱用
Source of Wikipedia article = http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=中央新幹線&oldid=24304049#運営会社の問題
Source of image = http://ja.uncyclopedia.info/wiki/ファイル:要出「展」の乱用.png
Date = 2009-02-09
License = CC-BY-SA-3.0, GFDL


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