「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.223 ★ 「中国EV」が窮地に立たされた「本当の理由」…アメリカで加速する「中国ぎらい」と、エスカレートする「アジア排斥運動」恐怖の実態 アメリカで広がる「反中×反EV」のヤバすぎる実態

2024年03月29日 | 日記

現代ビジネス (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティングフェロー)

2024年3月28日

photo by gettyimages

 

 中国製EVが国内どころか、世界でつまはじきにあっている。  前編「EVが米中「共倒れ」…! トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで、習近平の「経済粛清」とアメリカの「嫌中感情」が過熱…! 「EV新時代」の悲惨な末路」では、中国製EVの悲惨な現状についてお伝えした。

 中国の消費不況で国内では売り上げが減少し、海外では高性能でありながら、かえって安全保障上の「中国脅威論」の標的とされているのだ。  一方で、中国製EVが嫌われる背景には、単に安全保障上からの懸念だけでなく新型コロナのパンデミックが起きた2020年頃から続く嫌中感情の高まりがある。

中国人不動産王にむけられた「反中感情」

 今年1月、オンラインゲームで富を築いた中国人が、アメリカの土地所有者のなかで82番目にランキングされた(外国人では2位)。  かねてアメリカでは中国人の土地所有への警戒感が高まっていたが、この中国人富裕層の不動産取引は火に油を注いだ。すでに半分近くの州で中国人による土地取得に制限措置が講じられるようになっているにもかかわらず、82位にランクされるほどの土地を買い集められたことが、よほどショックだったようだ。  

下院の超党派議員団は3月14日、中国など安全保障上の懸念をもたらす買い手による土地取得に関し、政府の調査を厳格化する法案を提出した。  このように、アメリカの憎悪は中国製EVだけにむけられているのではなく、中国人そのものへと向かっているのだ。

アメリカ人の4割が「中国にNO!」

アメリカの反中意識は、年を追うごとに高まっている…Photo/gettyimages

 米調査企業ギャラップが3月18日に発表した世論調査によれば、「米国にとって最大の敵国はどこか」との設問に対し、41%のアメリカ人が「中国」と答え、4年連続で首位となった(2番目に多い回答は「ロシア」の26%)。  党派別に見ると、共和党員(67%)と無党派層(47%)の間で中国が首位となっている。

 ワシントン界隈でも中国に対する警戒感は強まるばかりだ。  バイデン政権は19日、各州に対し水道システムへのサイバー攻撃に警戒するよう注意を促した。「中国政府などとつながりのあるハッカーからの脅威が続いている」というのがその理由だ。

水道が中国に襲われる…?冷静さを失うアメリカ

 国民に清潔で安全な飲料を提供する水道システムに支障が生ずれば、米国民は多大な被害を被ることになる。だが、水道システムは資金や人員の不足が常態化しており、米国のインフラの中でも最も脆弱だと指摘されている。  「アキレス腱」とも言える水道システムを標的に定めた中国のハッカー集団は、米国の国家安全保障にとって深刻な脅威だと言っても過言ではない。  中国への過度な警戒感は、ホワイトハウスだけではない。米政府以上に中国への警戒感を露わにしているのが連邦議会であり、そのことを如実に示したのが下院の超党派議員団だ。

 先述したとおり、彼らは土地取得に関する政府調査の厳格化を求める法案を連邦議会に提出したが、それだけではない。  20日には、国家安全保障上の明確な脅威となる技術が米国市場に大量に拡散することを阻止するため、中国製ドローン(無人機)に対する関税の引き上げなどをバイデン政権に要求した。

 中国製ドローンにはすでに25%の追加関税が課されているが、議員団は「それでは不十分だ」とし、さらにマレーシアなど第3国からの迂回輸出についても取り締まるよう求めている。

中国移民の「犯罪活動」が槍玉に…

 アメリカにおける中国人の違法活動も槍玉に挙がっている。  カリフォルニア州ロサンゼルス郡保安局は1日、中国人が運営・管理する3ヵ所の大麻栽培施設を強制捜査した。この施設で栽培される大麻の質が高いことから、ニューヨークなどの大都市で「高級品」として違法に取引されており、この施設から毎月何百万ドルのカネが海外に持ち出されているという。

 犯罪の温床となっているケースはここだけではない。当局によれば、中国人が入国して土地を買い、そこで違法な大麻を栽培する事案が各地で多発している(3月1日付FOXニュース)。  犯罪集団のせいで、米国における中国人の土地取得が今後ますます困難になるのは間違いないだろう。

思い出されるアメリカの「アジア排斥」

20世紀初頭から太平洋戦争にかけて、日系アメリカ人は「黄禍論」に苦しめられた Photo/gettyimages

 気がかりなのは、「土地取得の制限が移民の排斥につながった」という悲しい歴史の前例があることだ。20世紀前半の米国では「黄禍論(黄色人種警戒論)」が猖獗を極めていた。  1913年にカリフォリニア州で外国人土地法が成立したが、目的が日系人の締め出しだったことから、「排日土地法」と呼ばれていた。

その後、1924年にいわゆる「排日移民法」が連邦議会で成立し、日米関係が極度に悪化した経緯がある。  中国系米国人は2021年時点で550万人に達し、米国で最も増加している人口集団の1つだが、パンデミック以降、彼らに対する「憎悪犯罪」が急増している。

米国の結束は「反中運動」という悪夢

 「忌まわしい過去が繰り返される」と断言するつもりはないが、他国との対決が米国を国家として結束させてきたのは歴史的事実だ。  分断が進む米国で「打倒中国」が国内の結束を生み出す「唯一のよすが」となりつつあるが、この構図は両大国を直接激突に向かわせる極めて危険なものではないだろうか。

さらに連載記事「「EV」がアメリカだけでなく中国でも絶不調に…トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで「中国EV大ピンチ」の深刻すぎる実態」では、EVを取り巻くアメリカと中国の関係をさらに詳しく報じているので参考としてほしい。

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No.222 ★ 中国でガソリン車工場が〝ゾンビ化〟する懸念 世界最大EV生産国が直面する窮地

2024年03月29日 | 日記

THE NEWS LENS JP編集部

2024年3月28日

EV生産ライン(イメージ写真)

欧米諸国では、中国からの電気自動車(EV)輸入の急増がもたらす安全保障や経済的リスクへの懸念が高まっているが、中国の習近平政権にとって、国内での急速なEV産業の台頭は別の問題を生み出している。それは、ガソリン自動車の衰退にどう対処するかというものだ。

中国の自動車産業は販売、生産、輸出の台数において世界最大となっている。

上海のコンサルティング会社オートモビリティによると、中国の2023年の自動車生産台数は、過去最高だった2017年の2890万台を上回る3010万台という記録的な数字となった。これは米国の約3倍にあたる。

だが、現在では国内乗用車販売の30%以上を占める中国のEV産業の急成長により、非EV車の販売が激減しているという事実が陰に隠れている。中国は昨年、国内市場向けに内燃機関を搭載した自動車を1770万台生産したが、これは17年の2830万台から37%の大幅減となった。

ここにきて、何十年にもわたり成長を続けてきた自動車市場の、ガソリン車からEVへの転換は、中国で事業展開している多数の外資系のみならず、国営のカーメーカーにとっても存続の危機となっている。

フィナンシャル・タイムズ紙によると、習近平指導部は、ここ数十年にわたる中国の産業発展の特徴である供給過剰のリスクを公に認めている。

2024年の経済政策を決定する年次会合である昨年12月の「中央経済工作会議」後に発表された習氏の発言によると、「一部の産業の過剰生産能力という問題は、経済回復を達成するために取り組まなければならない困難な課題」の一つだという。実際、供給過剰による新興EVメーカーの倒産が相次いでいるという。

一方、ガソリン車の生産ラインの問題に対処する明確な計画は示されなかった。一部の工場はEV用に再利用でき、別の工場はガソリン車の輸出向けだが、すでに需要を上回り、今後10年間で何百もの〝ゾンビ工場〟が出現するのではないかとの懸念が高まっている。

「The New China Playbook」(23年)の著書で知られる英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのケユ・ジン准教授は、中国が伝統的な製造業から、新たなクリーンテクノロジー産業へと移行する中、「中国の経済計画立案者らは、国家レベルで労働力の再配分という〝古典的な移行問題〟と闘わなければならない」と述べた。

中国の労働力資源の再配分で主要な〝障壁〟となるのは、同国独特の「戸口(フーコオ)と呼ばれる戸籍制度にあるとジン氏は指摘する。この制度により、約4億人が仕事を求めて都市部などへ自由に移住する権利を制限されているという。戸口とは、出生地をもとに全人民をいくつかの戸籍に組み入れ、その戸籍の種類によって教育権や労働時間、福祉について、異なる水準の権利が与えられるというものだ。

さらに、中国製EVをめぐる欧米など各国の動きも活発化している。

ロイター通信によると、欧州連合(EU)の欧州委員会は、中国製EV輸入の税関登録を3月7日に開始した。EU調査で中国製EVが不当な補助金を受けているとの結論が出た場合、税関登録時点にさかのぼって関税を課す可能性がある。欧州委は中国製EVに関する補助金調査を実施中で、EU製品を保護するため関税を課すか判断する。調査は11月までに終了する予定だが、7月にも暫定的な関税を課す可能性がある。

また、米国のバイデン大統領は2月、高い関税により、現在は米国にほとんど輸入されていない中国製EVが、米国人の機密データを収集し、中国政府に送信する懸念があり、いずれ国家に重大なリスクをもたらす可能性があると表明。「中国のような懸念のある国から輸入された自動車が、わが国の国家安全保障を損なうことがないよう前例のない措置を発表する」とし、警戒心をあらわにした。

その米国ではテスラに始まったEV需要は踊り場を迎えたとされる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ここにきてトヨタを筆頭に日本メーカーのハイブリッド車(HV)の人気が急上昇している。トヨタ「プリウス」は20年以上前にHV技術を導入して以来、米国の自動車市場で小さいながらも安定したシェアを占めてきた。それが、ガソリン価格の高騰や、EVの寒冷地での脆弱さにより、日本製HVが再び見直されているというのだ。

一方、中国ではエンジン車への需要減退による工場閉鎖が迫られるなか、香港のNGO団体「中国労働報知」は、過去5年間に自動車産業の労働者らによって60件以上のデモが組織されたことが明らかになった。

産業統計データなどを提供する企業CEICによると、EV産業の成長にもかかわらず、中国の自動車製造業の従業員数は2018年に約500万人に達したものの、現在までに50万人減少している。

ドイツ・テュービンゲン大学で中国の労使問題を研究するアビー・ヘファー氏は、一部の地方行政当局者が工場閉鎖や大規模な失業者問題に対応した経験があるが、自動車業界の労働争議が雪だるま式に拡大し、中央政府を巻き込む事態に発展するリスクを指摘した。

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No.221 ★ 欧米でアジア人が無視される「透明化」現象に抗議すべき2つの理由「気のせい」で終わらせてはいけない…

2024年03月28日 | 日記

PRESIDENT WOMAN  (柴田 優呼:アカデミック・ジャーナリスト)

2024年3月27日

欧米でアジア人が無視される「透明化」現象に抗議すべき2つの理由「気のせい」で終わらせてはいけない…

2024年3月10日、アメリカで行われた第96回アカデミー賞授賞式。全世界が生中継で注目したその晴れやかな場で、アジア人俳優を差別する振る舞いがあったのではという疑惑がある。アメリカで大学教員をしていた柴田優呼さんは「欧米では、アジア人がそこにいないものとして無視される現象がしばしば起きる。それを『気のせいだ』と問題視しないことは間違っている」という――。

写真=iStock※写真はイメージです

前年は『エブエブ』旋風で中国系俳優がダブル受賞したが…

2024年の第96回アカデミー賞授賞式は、昨年と打って変わった展開となった。昨年は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』主演の中国系マレーシア人で、香港映画界でも活躍してきたミシェル・ヨーが主演女優賞を受賞した。共演者であるベトナム華僑でアメリカ人のキー・ホイ・クァンも、助演男優賞を受賞。ヨーの主演賞受賞は、アジア系俳優では初めての快挙。クァンの助演男優賞受賞も、アジア系俳優では38年ぶりのことで、日本でも受賞を喜ぶ声が広がった。

それまで2020年頃から、コロナ禍のアメリカでは、アジア系の人々をターゲットにした暴力事件が多発してきた。「ブラック・ライブズ・マター」運動を全米に広げた黒人に比べ、おとなしいと思われてきたアジア系アメリカ人から強い抗議の声が上がり、それをアメリカのメディアも大きく報道した。アジア系の人々の存在が以前よりアメリカ社会でクローズアップされるようになり、そうした中で起きたオスカーのダブル受賞だった。それまで影の薄かったアジア系の人々も、ようやく日の目を見る時がきたように思われた。

ところが今年のアカデミー賞授賞式は暗転。昨年の高揚感に、冷や水を浴びせるような出来事が起きた。最初は、助演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jr.が、昨年受賞したキー・ホイ・クァンからトロフィーを受け取る際のことだった。ダウニー・Jr.はクァンを一顧だにしないまま、トロフィーだけ片手で彼から取ると、壇上にいたティム・ロビンスと握手し、サム・ロックウェルとは互いのこぶしを当てて、しっかりあいさつを交わした。その間クァンは全く無視され、受賞者の名前が入った封筒を渡すことすらできない様子がカメラに映し出された。

白人の受賞者が前年受賞者のアジア人俳優を無視?

受賞トロフィーは、前年受賞者が渡すのが恒例だ。だが今回は珍しく、過去の受賞者が5人も壇上に並び、その中央にキー・ホイ・クァンが立つ設定となっていた。このため対応の落差が際立つ結果にもなった。プレゼンターが5人になるのは、2009年に行われた形式にならったもの(2010年にも規模を縮小して行われた)。俳優同士のつながりや交流も披露することができる、といった理由で今回、復活していたのは皮肉だ。その時は白人に交じってハル・ベリー氏ら黒人俳優も一部壇上に上っていたが、アジア系俳優の姿はもちろんなかった。

ロバート・ダウニー・Jr. の振る舞いに続いて起きたのが、主演女優賞を受賞したエマ・ストーンを巡る一幕。ストーンに授与するためミシェル・ヨーが手にしていたトロフィーはなぜか、ヨーの隣にいたジェニファー・ローレンスの手元に移り、トロフィーは、ローレンスからストーンに渡された。ローレンスを後ろから止めようとするサリー・フィールドの姿がカメラに映った。

授与後、エマ・ストーンとジェニファー・ローレンスは間髪を入れず、ハグ。続けてストーンはサリー・フィールドともハグしたが、近くにいたミシェル・ヨーは素通り。壇上にいた他の2人に軽く挨拶した後、最後にストーンは申し訳程度に、ヨーにも軽く挨拶した。

クァンと目を合わせなかったロバート・ダウニー・Jr.

キー・ホイ・クァンにしてもミシェル・ヨーにしても、栄えある前年受賞者にふさわしい扱いだったようには見えなかった。この出来事に対し、X(旧ツイッター)などで、大きな批判の声が上がった。海外在住者や渡航経験者の間で、自分も同じような扱いを受けた、という投稿が相次いだ。このアカデミー賞授賞式の様子を見て、やっとあの時の自分の経験が何だったかわかった、という声もあった。キーワードは「透明化」。まるでその場にいない人であるかのように無視されることだ。

第7回アジア・フィルム・アワードのミシェル・ヨー、2013年3月18日、香港

私自身、約20年海外に住み、教員として大学で教えたりしてきたが、白人がマジョリティーの国々では、数えきれないほどそうした扱いを受けた。食事や買い物など日常の場面だけでなく、大学内部や学会などでもそうだった。あまりによく起きるので気のせいだとは思えず、何か自分に問題があるのだろうかと思ったほどだ。でも香港や台湾、東南アジアで経験したことはない。明らかに私がアジア人女性であることと関係している。

これは人種差別というほど露骨ではないが、日常生活の行動や表現において、ささいな形で起きるマイクロアグレッション(自覚なき差別)の結果だと言えるだろう。今回のアカデミー賞授賞式で私たちが目にしたのも、それが形を取った出来事のように思える。Xでは問題にしすぎだという声も上がったが、こうした出来事を無視するべきでない理由は2つある。

アジア人の「透明化」は問題視するべきではないのか

1つは、アジア人である私たち自身のためだ。というのは、こうしたマイクロアグレッションを受けると、知らないうちに心理的に大きな負担がかかる。自身もアジア系アメリカ人男性であるデラルド・ウィン・スーは著書『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』(明石書店)で、そう指摘している。

今回多くの人たちがXで声を上げたということは、ささいなことのように見えて、喉に刺さった小骨のように、そうした経験がずっと彼らの心に引っかかっていたことを示している。こうしたことがきっかけで、海外留学や就労、移住、海外とのビジネスや海外旅行を考えていたのに、二の足を踏むようなことになったとしたら、個人的にも大きな損失だ。そんな不利益を、私たちがこうむるゆえんはないからだ。

もう1つは、マジョリティーである白人のためだ。彼らにしても、差別的な振る舞いをしたように見られたくはないはずだ。しかし今回、実際はどうであれ、彼らが多くのアジア人やアジア系の人々に良くない印象を与えてしまったのは確かだ。

多数派である白人は自分たちの差別意識に気づいていない?

マイクロアグレッションの特徴の1つに、加害者が自分の行為に気づかない、ということが挙げられる。ダメージを避けるために、アカデミー賞のように世界の衆目を集める場で、アジア人の同輩に対しどのように振る舞うべきか、彼らは知っておくべきなのだ。もちろん日常生活でも、同じように振る舞うべきだが。

ではこの2つのケースで、彼らはどうすればよかったのだろう。一言で言えば、ロバート・ダウニー・Jr.はキー・ホイ・クァン、エマ・ストーンはミシェル・ヨーの存在をきちんと認めて応えればよかったのだ。英語で言う「acknowledge」をするという行動を取ればよかった。例えば、目を合わせて握手やハグをしたり笑顔で短く言葉を交わしたりするという、ただそれだけのことだ。

ロバート・ダウニー・Jr.はクァンからトロフィーを受け取る時、そうすれば良かったし、エマ・ストーンはミシェル・ヨーではなく、ジェニファー・ローレンスからトロフィーを受け取る形になっても、その場ですぐヨーに対し、皆にわかる形で謝意を示すべきだった。またローレンスもヨーに対し、授与役をさせてもらったことを感謝するしぐさをするべきだった。それが「acknowledge」する行為を通じて、リスペクトを示すということだ。

だが、彼らはそうした行動を取らなかったので、本意ではなかっただろうに、まるで植民地時代や奴隷制の下、非白人を無視して平気な白人植民者であるかのようにも見えてしまった。

 

写真=iSto※写真はイメージです

「エマの親友と一緒にトロフィーを渡したかった」

ここでもう一つ考えたいのは、ミシェル・ヨーの対応だ。ヨーはインスタグラムで「エマ・ストーンの親友であるローレンスと一緒に、トロフィーを渡したいと自分が考えた」と明かした。これをどう考えるべきだろうか。私から見ると、ヨーの意図は成功したとは言えない。上記で述べたように、もしそうであるならヨーの計らいに対して、ストーンとローレンスが謝意を示すジェスチャーを取らないと、この目的は完遂しない。それなしには、2人の態度が失礼に見えてしまうことに変わりはないからだ。

エマ・ストーンがミシェル・ヨーに、トロフィー授与時に即座に謝意を示さなかったのも、ミシェル・ヨーの意図が正確に伝わらず、とまどっていた可能性もある。

ミシェルが一人でトロフィーを渡さなかった理由は?

また、なかなか直視しにくいことだが、マイクロアグレッションの被害を受けた当人が、加害者のために、わざわざ言い訳をしてあげることも、少なからず起きる。

そもそもなぜミシェル・ヨーは、自分一人でトロフィーを渡さなかったのだろう。なぜローレンスと一緒に渡すことを考えたのだろう。ヨーは先述のインスタグラムで、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で共演したジェイミー・リー・カーティスとの友情にも言及しており、アジア人女性と白人女性との間のシスターフッドの存在を強調したかったのかもしれない。だが、そのように受け取っている人はほとんどいないのが現状だ。

私が気がかりなのは、ミシェル・ヨーにどこか気後れはなかったのかということだ。歴史的に白人が牛耳ってきたアカデミー賞授賞式の場で、「この場の主役は白人のあなたたちで、アジア人の私ではない」という意識がどこかになかったのだろうか。

ミショル・ヨーのアカデミー賞受賞を祝うマレーシアのパネル、2023年(※写真はイメージです)

ミシェルの振る舞いは後進のアジア人のためにならない

欧米では、アジア人女性は往々にして、自己犠牲を美徳とする、というステレオタイプを押し付けられてきた。オペラ「マダム・バタフライ」のストーリーはその典型だ、とアジア研究の分野では長く批判されてきた。本来そのつもりはなくても、結果として、ミシェル・ヨーはそのステレオタイプを自ら演じてしまわなかっただろうか。

ミシェル・ヨーが主演した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、アジア系移民の世代間格差が大きなテーマで、最終的には、理解できない娘のことを母が受け入れる物語となっていた。でも残念ながら、アカデミー賞授賞式でのヨーの行動は、アジア系の娘たちのロールモデルになるもののようには見えない。

若い世代のために「自己犠牲をするアジア人」から脱するべき

私がアメリカの大学で教えていた時、アジア系アメリカ人やアジア人の女子学生がクラスにたくさんいた。教室では彼女たちは活発で、白人や黒人やヒスパニック系などの学生たちに交じり、それぞれ自分の個性と性格に基づいて、思い思いに行動していた。彼女たちが教室を出て社会に入っていった時、アジア人女性というカテゴリーに押し込められ、自己犠牲の名の下に、自分より白人女性を優先するのが良いことであるかのような経験はしてほしくない。

ミシェル・ヨーは既に、アジア人初のアカデミー主演賞受賞という偉業を成し遂げた。それは、これまで他の誰にもできなかったことだ。多くのプレッシャーの中でそこまで達成した彼女に、全てを求めるのは酷なことでもある。

だから、彼女が到達してくれたところから、今後さらに私たちがバトンを引き継げばいいということだ。アジア人が白人社会で、きちんとリスペクトを払われるようにするため、私たち一人ひとりがもっと働きかけていくことが、アジア人と白人、またその他の非白人の人々のためにもなることだと思う。

柴田 優呼(しばた・ゆうこ)

アカデミック・ジャーナリスト。コーネル大学Ph. D.。90年代前半まで全国紙記者。以後海外に住み、米国、NZ、豪州で大学教員を務め、コロナ前に帰国。日本記者クラブ会員。香港、台湾、シンガポール、フィリピン、英国などにも居住経験あり。

プロデュースされた〈被爆者〉たち』(岩波書店)、『Producing Hiroshima and Nagasaki』(University of Hawaii Press)、『“ヒロシマ・ナガサキ” 被爆神話を解体する』(作品社)など、学術及びジャーナリスティックな分野で、英語と日本語の著作物を出版。

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No.220 ★ 世界ビリオネア、中国勢は最多814人=胡潤研究院

2024年03月28日 | 日記

NNA ASIA

2024年3月27日

中国民間シンクタンクの胡潤研究院が25日発表した資産10億米ドル(約1,510億円)以上の富豪「ビリオネア」をまとめた2024年版の長者番付で、中国勢(香港など含む)は814人となり、国別で最多だった。ただ前年からは155人減り、22年(1,133人)をピークに2年で450人近くがランク外に転落した。

中国勢のビリオネアの総資産は約19兆元(約398兆円)で、前年から15%減少した。前年に比べ資産を増やしたのは241人。中国勢のビリオネアの数は16年に米国を抜き、9年連続で世界首位を維持しているが、24年は米国との差が14人まで縮まった。

中国勢の資産首位は飲料大手の農夫山泉の創業者、鍾センセン氏(セン=目に炎)で、4年連続のトップ。資産は4,500億元で、前年から9%減少した。傘下で新型コロナウイルスワクチンなどを手がける北京万泰生物薬業の業績低迷と株価下落が響いた。

2位は共同購入方式の電子商取引(EC)サイト「ヘイ多多」(ヘイ=手へんに并、ピンドゥオドゥオ)の創業者である黄崢氏で、71%増の3,850億元。海外で展開する越境ECサイト「Temu(ティームー)」が好調で、中国勢で最も資産を増やした企業家となった。

3位はインターネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)創業者の馬化騰最高経営責任者(CEO)で、10%減の2,500億元だった。

中国勢で今年新たにビリオネアとなったのは55人。データセンター運営の潤沢科技発展の周超男董事長やプリント基板メーカーの深セン嘉立創科技集団の袁江濤総経理がともに資産180億元でランクに入った。

世界のビリオネアは3,279人で、前年から167人(5%)増えた。ビリオネア全体の資産は9%増の108兆元。480人が新たにビリオネアとなり、半数以上を人工知能(AI)関連の企業家が占めた。

世界首位は米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEOで、資産は47%増の1兆6,700億元。2位は米インターネット通販大手アマゾン・コム創業者のジェフ・ベゾス会長で57%増の1兆3,300億元、3位は高級ブランド世界最大手、フランスLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのベルナール・アルノー会長兼CEOで13%減の1兆2,600億元だった。

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No.219 ★ 中国の国有企業「東風集団」が赤字に転落 なぜ“ホンダと日産の不調”が原因なのか?

2024年03月27日 | 日記

MAG2NEWS (by 『CHINA CASE』)

2024.03.26

中国の国有企業である「東風集団」。傘下に東風ホンダ、東風日産という日系メーカーを抱える同集団が、2022年の2,000億円以上の黒字から一転、23年の最終損益が800億円を超える赤字となったことが伝えられています。その原因はどこにあるのでしょうか。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』が今回、国有企業を直撃した「報われない価格戦の影響」を解説しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

中国の国有企業「東風集団」が23年は赤字転落 ホンダ、日産とNEVが原因

中国国有メーカー東風集団は2024年3月8日、2023年の最終損益は2022年の102.65億元(約2,098億円)の黒字から、40億元(約800億円)を超える赤字となると発表した。

注目すべきは、東風汽車ではなく、東風集団であること。つまり、日系の東風ホンダ、東風日産も関わっている、というより、現状はこの両日系が主力の企業と言っても良い。

「巻き」による報われない価格戦の影響が、中国国有企業を直撃した形。

東風の最終利益

東風集団はここ10年、毎年100億元(約2,000億円)以上の最終利益を上げていた。しかし2023年6月期の中間決算で最終利益は12.7億元(約260億円)にとどまり、前年比で急減していた。

ただ、中間決算の最終利益が低めに出ることは今までもあったことで、今回の発表まで、業界でもまさか赤字転落になるとは思いもよらなかった。

東風集団は今回の赤字転落について、二つの要因を挙げている。

ホンダ・日産の不調

一つは、東風ホンダ、東風日産の合弁が価格競争に巻き込まれ、かつ販売が伸び悩んだこと。東風集団の合弁は他に仏シトロエンなどもあり、これも不振だが、そもそも販売台数が極めて少なく、無視できるほど。

2023年から始まった中国自動車業界の価格競争は2024年も厳しさを増している。

数年前まで10万元(約200万円)を超えていた東風日産の完全な主力であるコンパクトセダン「シルフィー」は現在、エントリーで8万元(約160万円)台になっている。

また、両合弁の販売台数は2023年、前年比で東風ホンダが-6%、東風日産が-18%となっている。

NEVも不振

もう一つの要因は、オリジナルの新エネルギー車(NEV)が依然としてスタートアップ期であること。

東風集団の傘下には、ハイエンドNEVブランド「嵐図(VOYAH)」、ハイエンドオフロードNEVブランド「猛士」、ミニBEV「納米」などがあるが、いずれも販売台数は大きくなく、収益など望みようがない段階であることがある。

挽回厳しく

ここ数ヶ月、VOYAHや猛士でファーウェイと連携しているが、すぐに効果が発揮される見通しはない。

ホンダ、日産の両合弁のNEV強化も遅々として進まない状況であるし、客観的に言うと不得手なNEVよりはHEVを伸ばした方が得策だと思われる。

2024年も2023年と状況は変わりそうもなく、2期連続赤字に陥る可能性が指摘されている。

株価も大幅に下落しているものの、中央国有企業としては、国有資産を目減りさせるわけにはいかないというプレッシャーとも戦わなくてはならない。

出典: https://chejiahao.autohome.com.cn/info/14803205/

CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。

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