「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.412 ★ Tシャツ1枚321円の中国系“激安”通販「Temu」、アメリカ人1億人が「疑わしい」のにどっぷりハマる理由

2024年06月22日 | 日記

DIAMOND online (小倉健一:イトモス研究所所長)

2024年6月21日

中国発の激安通販ショッピングサイト「Temu」が世界中でたくさんの顧客を獲得している。アマゾンや楽天と比べても商品は激安だが、問題はないのか。安さの正体と、利用者がどっぷりハマる理由に迫った。(イトモス研究所所長 小倉健一)

毎月15200万人弱のアメリカ人が利用

「Temu」(ティームー)という名の中国発の激安通販ショッピングサイトが、世界中でたくさんの顧客を獲得していることをご存じだろうか。

 6月12日に米ブルームバーグが報じたところによれば、「消費者1000人を対象に4月に行われた調査によると、少なくとも月1回はTemuから購入するとの回答は34%に上り、イーベイの29%を上回った。ロンドンを拠点とするオンラインマーケティング会社オムニセンドが調査を実施した」という。

 Temuは、米国デビューからわずか2年足らずで、30年近い歴史を持つeコマースの草分け的存在であるイーベイを追い抜いてしまったのだ。

「アナリストのSimilarWebが収集したデータによると、Temuは毎月1億5200万人弱の米国人が利用しており、世界のアプリダウンロードチャートで常にトップとなっている」「中国の消費者市場を追い風に、PDDホールディングス(Temuの運営会社)は以前の成功を確かなものにしたのと同じモデルを使って、Temuで海外進出を果たした。同社は大きな誇りと愛国心の源となっている」(英BBC、3月19日)という。

 日本には、昨年(2023年)7月に上陸している。扱っている商品は、ほとんどが中国製で、ファッションアイテム、家電、日用雑貨と幅広い。サイトへアクセスして気付くのが、「-70%」「-59%」「-66%」など極めて高い値引き率の「数量限定」「タイムセール」だ。

 Tシャツが1枚321円、腕時計が223円で販売されているなど、アマゾンや楽天で売っている同じノンブランドの商品と比べると、値段が総じて安い。どうして、こんな「激安セール」を常時開催できるのか。なぜ、世界中で広がっているのか。今回はその秘密に迫りたい。

中国の工場や倉庫から直接空輸して運ぶ

1.安さの秘密

 アマゾンや楽天と、Temuは何が違うのだろうか。アマゾンは注文をすると、アマゾンの日本にある倉庫から運ばれてくることが一般的だ。楽天は日本の各商店からの発送となる。ただし、アマゾンの商品の中には各商店から発送されたりすることもあるし、楽天も楽天の倉庫から発送されることもある。

 Temuでは中国の工場・倉庫から直接、日本の消費者の元へ、空輸して運ぶという形をとっている。

 この「直接」というところが安さを実現するポイントの一つだ。一般に、海外からモノを輸入する際には、「関税」がかけられる。関税を知らない人はいないと思うが、念のためにかんたんに説明をすると、関税とは、国境を越えて輸入される商品に対して課される税金のことだ。国内産業を保護するなどの目的で課税されている。

 そして、日本や米国を含む多くの国で、少額のものについては関税はかからなかったり、非常に低い税率が適用されたりしている。

 例えば、クロネコヤマトのホームページを見ると、「通販で購入された個人使用目的の関税額については、16,666円以上で課税対象となります。(為替レートで指定額未満でも課税対象となる場合があります。)/一部例外品もございます」などと書いてある。

 つまり、日用品など比較的安価な商品を、中国から直接日本の消費者に届けることによって、関税を免れることができる。さらには、日本に物流倉庫を造る必要がなくなるというメリットが生まれる。これが物流におけるTemuの安さの秘密である。

 さらにいえば、最近になって、この輸送にかかるコストを、Temuは加盟店に押し付けたようだ。「Temuは物流費用を販売者が負担する『半委託モデル』を導入したため、予想よりも早く収益性が改善すると見込んでいます」(24年5月23日、モーニングスターレポート)という。

 ただ、中国から直接、送られてくるということで、包装がボロボロになっていたというような報告がSNS上でも散見される。中国には日本ほど商品を丁寧に扱うという感覚がないのかもしれない。

期待との落差が大きくなりがちな商品とは

2.安さの秘密2

 もう一つの安さの秘密は、ノンブランドであることだ。Temuのサイトへアクセスし、販売されている商品のリストを見ると、スピーカーからTシャツ、靴下まであらゆる生活用品が並んでいる。ほとんどが中国製で、買い物客はほとんどの商品にブランドがないことに気付くだろう。あったとしても、有名なロゴは付いていない。厳しいインフレ時代の申し子とも呼ぶべきなのだろうか、とにかく安い商品を求める消費者にとっては最適なサイトといえる。

 PDDホールディングスの創業者であるコリン・フアン氏は18年のインタビューで、「都市部の富裕層だけでなく、『北京五環路』の外に住む人々、つまり郊外に住む中低所得層にもアピールしたい」と述べた。「とにかく安い」を突き詰めていくということであろう。

 インターネット犯罪、節約術やお金の最新情報などに精通するコラムニスト・山野祐介氏は、日本におけるTemuの実態をこう解説する。

「ゲーム機やゲームソフトなどを検索してみると分かりやすいですが、日本で買えるゲーム機やソフトは全く売っておらず、日本の小売店で売っていない周辺機器しか出てきません。つまりこれは『中国の工場から出荷されるような商品しか取り扱っていない』ということ。日本の通販ではメーカーや仕様を見ることである程度の品質を推測できるが、temuの場合はメーカーや仕様などがほとんどわからないので『出たとこ勝負』になりがち。目論見通りにいかないパターンがあることを織り込んで買わないと、期待との落差が大きくなってしまうでしょう」

絶え間なく届く広告はスパムに近い

3.プロモーション

 このプロモーションには多くの疑念が上がっているようだ。SNSでTemuと検索すると、無数の「無料商品を8点もらえるように、招待を受け入れてくれませんか? 超最新ショッピングアプリのTemuは現在、皆さまに無料ギフトをプレゼント中!」という個人によるキャンペーン投稿で溢れかえっている。

「中国のeコマース親会社であるPDDホールディングスの支援を受け、Temuは超低価格、大規模な広告費、そしてクーポンやゲーミフィケーション戦術(ゲーム要素を取り入れてユーザーの関与を高める手法)の多用によって米国の消費者の財布をつかんできた。この戦略により、長い配送時間、疑わしい製品品質、そしてスパム(無差別な迷惑メール)に近いような絶え間ない宣伝活動にもかかわらず、アプリは米国で成長を続けている」(FORTUNE、6月12日)というような厳しい指摘も受けている。

 逆にどっぷり漬かっている人もいるようだ。「週刊FLASH」(5月21日号)には、編集部の記者が実際にTemuを利用した模様を報告している。

「本誌記者が初めてTemuを利用したのは、2024年2月26日。ちゃんと届くのか不安を感じながら、日用品を2個、748円で購入した」

「3月2日に無事到着。/梱包に緩衝材などは入っていなかったが、商品自体に問題はなかった。その後、毎日のようにメールで「お客様専用のクーポン」が届き、再び商品を購入。「大幅値引き」「今だけ大特価」的なメールが届くたびに、何か必要なものはないかと探しまわるように。/結果、バッグや電化製品などにも手を広げ、現在まで計7回購入している」

 広告がうっとうしいというデメリットはあるものの、7回購入したというのだから、どっぷりハマっているということだろう。

10分間限定」のカウントダウンが表示されても、焦ってはいけない

 Temuがメールで配布するクーポンについて、山野氏はこう注意を喚起している。

「私が実際に受け取ったクーポンを例にとります。もらったクーポンをよく見てみると、配布されるのは割引額の合計が1万5000円のクーポン5枚。そして、これは無条件で使えるクーポンではなく、最低注文金額が設けられている。

 クーポンはそれぞれ『7500円以上の注文で3750円引き×1枚』『1万5000円以上の注文で4500円引き×1枚』『1万1250円以上の注文で2250円引き×3枚』となっており、1回の注文で1枚しか使えないため、それなりの額を買わないと使えない上、最大でも半額しか得にならないことが分かる。

 このクーポンが単なる演出に過ぎないことを知らないと、慌てて要らないものをたくさん買ってしまうことになりかねません。また、このクーポンは『10分間限定』と画面上にカウントダウンが出てきて消費者を焦らせてきますが、10分がたってタイムアウトになっても、トップページに戻れば再度クーポンは使えるので、焦らないようにしてください」

 安いが、プロモーションは煩わしそう。私が利用するのはもう少し待っていようと思う。

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