「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.524 ★ 開き直る中国 見た目はパクリでシリーズ名まで継承、“貫徹メーカー”新車でかすむ日本のホンダ新型EV

2024年07月29日 | 日記

MAG2NEWS (by 『CHINA CASE』)

2024年7月28日

 

ホンダと中国の国有自動車メーカー東風汽車との合弁外車「東風ホンダ」。2003年に設立された同社が中国で開発した現地向けEV「イエ」ですが、はたして中国市場に受け入れられるのでしょうか。

日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は今回、7月に中国で登録された新車のラインナップを伝える記事概要を掲載。併せて東風ホンダ「イエ」の売れ行き予想も紹介しています。


※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:相変わらず盛りだくさんの中国新車登録でかすむホンダ新EVイエ

相変わらず盛りだくさんの中国新車登録でかすむホンダ新EVイエ

中国工業・情報化省が発表した2024年7月登録の新車において、各社様々趣向を凝らしている。

満を持して今期に登録されたホンダ「イエシリーズ」の初弾となる東風ホンダ「イエS7」がかすむほど。

実質的にはモデルチェンジだったり、新たなパワートレイン(BEVのみからPHEVも)設定だったりだが、その状況を見ていく。

BYDは最新PHEV

まずはBYD、王朝シリーズで、「漢」と「宋Pro」にDM-iを設定、先日発表した第五世代DM5.0を搭載した。

「漢」に至っては、レーザーレーダーを搭載、スマートドライブ版と位置付けた。

BYDがレーザーレーダーを採用すること珍しく、またスマートドライブは高級ブランド「騰勢(DENZA)」を中心としていたが、今後は王朝・海洋シリーズでも適応されていく可能性がある。

BYD軍艦への苦悩

海洋シリーズでは「アシカ(シーライオン)05」が登録された。

もうすでに完全な「宋Pro」の姉妹車で全く同一スペック。

しかも車名に合った生物フェースではなく、むしろすでに死に体の軍艦シリーズのフェイスを保持。

中国現地でも「去年発表されていれば護衛艦05と呼ばれていただろう」とし、軍艦シリーズ終焉を匂わせた。

Xpengはセンサー非搭載

小鵬(Xpeng)はフラグシップBEVセダン「P7」の「P7+」を登録。

BYDはレーザーレーダー重視だが、この「P7+」でXpengはレーザーレーダと決別。

高額ハードを削ることで価格引き下げを図った形だが、中国およびグローバルの流行からは外れる形。

ZEEKRとLUXEED

吉利(Geely)のハイエンドBEVブランド「ZEERK」と、ファーウェイ「鴻蒙智行(HIMA)」の「智界(LUXEED)」がそれぞれ既存セダンのSUV改良版を出しているのも特徴的。

ZEERKは初のセダン「007」のSUV版として「7X」を、LUXEEDは初弾モデルのセダン「S7」のSUV版として「R7」を、それぞれ登録している。

とにかく商品ラインナップ拡充を、という思いの強さがうかがえる。

パクリ貫徹Chery

奇瑞(Chery)のサブブランド「捷途(Jetour)」は、現在力を入れているSU PHEVシリーズ「山海」のLシリーズの新車「L7」を登録。

先日登録した「L9」は見た目、理想(Lixiang)初弾で終売の「理想ONE」そっくりとされたが、「L7」もLixiangのLシリーズに特徴的なヘッドライトの形を採用。

そもそもシリーズ名もそのままだし、パクリに開き直った形か。

ホンダ「イエ」、微妙

東風ホンダ「イエS7」は中国で研究開発され製造された中国向けEV。

外観は今までのホンダらしさはなく、現在の中国の風潮とも違う角ばった印象。

中型SUVに位置付けられるが全長は4.8mを切り、しかも価格は15-20万元が予想され、そこまで販売が伸びるような感じは受けない。

出典: https://auto.gasgoo.com/news/202407/16I70399028C107.shtml

CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。

CHINA CASE 

急速に進む中国のCASE(Connected,Autonomous,Shared&Service,Electric)やMaaS、自動車産業についての最新情報「CHINA CASE」が有料メルマガに! 進撃の中国イノベーション chinacase.xyz 日本は、「XYZ(後がない)」? 1日1本のメールで中国自動車業界キャッチアップ!

*左横の「ブックマーク」から他のブログへ移動


No.523 ★ 日本の沖ノ鳥島近海に観測ブイを設置した中国の軍事・経済的思惑  地球温暖化から沖ノ鳥島を守るために日本は科学技術を総動員せよ

2024年07月29日 | 日記

JBpress (横山 恭三:元空将補、現在(一財)ディフェンス リサーチ センター研究委員)

2024年7月25日

沖ノ鳥島は激しい風雨や強烈な太陽光により護岸コンクリートの劣化が激しく、頻繁な補修が必要になる(国土交通省のサイトより)

 2024年7月5日、政府は、中国の海洋調査船「向陽紅22」が太平洋の「沖ノ鳥島」北方に位置する日本の大陸棚(「四国海盆海域」)の海域にブイ(浮標)を設置したことを明らかにした。

 中国のブイは、これまで沖縄県・尖閣諸島周辺で確認されていたが、太平洋側では初めてである。

 目的や計画などの詳細を示さないまま設置したとして、林芳正官房長官は記者会見で「遺憾だ」と表明するとともに、「中国の海洋活動全般に様々な懸念や疑念がある」と指摘した。

 海洋の法的秩序の根幹を成す「国連海洋法条約」は、排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)(以下、EEZとする)および大陸棚における「海洋の科学的調査」について、沿岸国の同意を義務付ける一方で沿岸国は通常同意を拒絶できないとする「同意レジーム」を柱に、具体的な手続き規定を設け、沿岸国と調査国の権利義務を定めている。

 我が国は、国連海洋法条約等に基づき、我が国の大陸棚および排他的経済水域において、外国が「海洋の科学的調査」を行うことは我が国の同意がない限り認めないこととしている。

 このため、外国海洋調査船等に対し巡視船艇・航空機により監視を行い、我が国の同意がないものに対しては、現場海域において中止要求を行うとともに、外務省等関係機関に速報するなどにより対処している。

 さて、上記の日本の指摘に対して、中国側は「ブイは津波観測用で、日本が大陸棚に対して有する主権的権利を侵害するものではない」と応じたという。

 筆者は、今回の中国のブイの設置は、沖ノ鳥島を基点とするEEZと大陸棚の設定は認めないとする中国の意思表示であり、かつ中国は将来この海域をなし崩し的に中国海軍が自由に航行できる公海にしようとする思惑があると見ている。

 沖ノ鳥島について、日本は沖ノ鳥島は国連海洋法条約のもとでも島であり、沖ノ鳥島を基点にしてEEZと大陸棚を設定することができるとの見解を示している。

 一方、中国は、沖ノ鳥島は国連海洋法条約121条3項で規定されている岩であるので、沖ノ鳥島を基点としてEEZと大陸棚を有することはできないと主張している。

 日中の主張の詳細は後述する。

 沖ノ鳥島を取り巻く危機には、地球温暖化によって水没する危機と同島の法的地位が「島」から「岩」へ変わる危機がある。

 本稿では、沖ノ鳥島を取り巻く危機への対応と、沖ノ鳥島近海で活発に活動する中国海軍の狙いについて述べてみたい。

 以下、初めに沖ノ鳥島の概要について述べ、次に日本政府による大陸棚限界延長申請と中国による口上書の提出について述べ、最後に西太平洋海域へ進出する中国の狙いについて述べる。

1.沖ノ鳥島の概要

 本項は、国土交通省「沖ノ鳥島の直轄海岸管理」などの資料を参考にしている。

(1)沖ノ鳥島の重要性

 沖ノ鳥島は、我が国の国土全体の面積(約38万平方キロ)を上回る約40万平方キロものEEZをもつきわめて重要な島である。

 なぜなら、EEZを持つ国はその水域内にある生物や鉱物などの資源を調査、開発、保存する権利をもつことができるからである。

 周辺海域にはコバルトやマンガン(いずれも特殊鋼の材料等に使用)など貴重な海洋鉱物があると考えられている。また、周辺海域は、漁業資源が豊富で、漁場としても有望である。

(2)全景写真

 下の図1は沖ノ鳥島の全景写真である。写真左側が北小島、右側奥が東小島、右側手前が保全拠点と観測所基盤である。

図1:沖ノ鳥島の全景写真

出典:国土交通省「沖ノ鳥島の直轄海岸管理」

(3)地理

 沖ノ鳥島は、北緯20度25分、東経136度04分に位置し、東京から約1700キロ、小笠原諸島父島からでも約900キロ離れた我が国最南端の島である。

 この島は東西に約4.5キロ、南北に約1.7キロ、周囲11キロの卓礁で、我が国の国土面積(約38万平方キロ)を上回る約 40万平方キロのEEZを有する国土保全上極めて重要な島であるが、満潮時には北小島、東小島の2つの島が海面上に残るのみとなっている。

「高潮時、沖ノ鳥島の北小島は16センチ、東小島は6センチしか海上に出ていない」(出典:日本財団「沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団」報告書2005年2月)

 この2つの小島が侵食により水没する恐れがあったため、1987年から護岸の設置等の保全工事を実施した。

 このような背景のもと、1999年には国土保全上極めて重要である沖ノ鳥島の保全に万全を期するため、全額国費により国土交通省(当時建設省)が直接海岸の雑持管理を行うことになった。

(4)沿革

1543年:スペイン船サンファノ号が発見(沖ノ鳥島かどうか異議あり)
1931年:「沖ノ鳥島」と命名し、東京府小笠原支庁に編入(内務省告示)
1939年~41年:気象観測所ならびに灯台建設工事
1952年4月28日:米国の信託統治下に置かれる
1968年6月26日:小笠原の返還に伴い、沖ノ鳥島およびその領水(国家の領域に属する一切の水域)が米国より日本に返還される
1982年12月10日:国連海洋法会議において、海洋法条約成立(200海里のEEZ等を規定)
1983年2月7日: 国連海洋法条約に署名
1987年10月14日:東京都により海岸保全区域に指定
1987年11月1日:建設省による直轄工事の開始
1994年11月16日:国連海洋法条約発効
1996年6月14日:「領海及び接続水域に関する法律」の改正および「EEZ及び大陸棚に関する法律」を公布
2004年:観測施設上にCCIVカメラを設置
2004年8月:東京都において、「伊豆・小笠原諸島沿岸海岸保全基本計画」を策定
2005年:観測施設上に海象観測用レーダーを設置
2005年5月20日:石原慎太郎東京都知事(当時)沖ノ鳥島視察のため上陸
2007年3月16日:沖ノ鳥島灯台の運用開始
2019年7月:新観測拠点施設の運用開始

(5)筆者コメント

 地球温暖化により今後100年間で40センチの海面上昇が予想されている。高潮時、沖ノ鳥島の北小島は16センチ、東小島は6センチしか海上に出ない。

 島が水没すれば領海すら認められなくなる。何もしなければ、沖ノ鳥島が水没するのも時間の問題であり、早急に対策を取らなければならない。 

 日本財団の「沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団」報告書では、主として次のことを提言している。

ア.「サンゴ及び有孔虫の培養による砂浜の自然造成」

 沖ノ鳥島リーフ内の潮流を研究し、吹き溜まりを作り砂浜の自然造成を行なう。

 砂の材料としてサンゴや有孔虫(星の砂)の培養を行なう。

 環礁内の一部に防波堤を造り、潮流に合わせ吹き溜まりができやすい状態にする。

 できた砂浜には、即座にマングローブや熱帯性の低木を植樹する。

イ.「沖ノ鳥島地球温暖化対策サンゴ礁研究施設」の設置

 ア項の研究・実験を行なうための「沖ノ鳥島地球温暖化対策サンゴ礁研究施設」を設置する。

 地球温暖化による海面上昇で影響を受けるのは、沖ノ鳥島に限らず太平洋上の環礁、卓礁の島に共通の問題であるので、この研究施設は、国内の研究者だけでなく太平洋島嶼国やオーストラリア等の国々の研究者にも参加を呼びかけて国際的な共同研究施設として運営するものとする。

 上記ア項及びイ項の実施のためには、ヘリポートの建設と現在ある観測施設を改築し研究者の滞在に耐えられるものにしなければならない。

 さて、既述したが、沖ノ鳥島は、我が国の国土面積(約38万平方キロ)を上回る約 40万平方キロのEEZを有する国土保全上極めて重要な島である。

 近年の地球温暖化による海面上昇や波の侵食によって、「島」の存在が危ぶまれている。政府は、官民の力を結集して、沖ノ鳥島の水没を防止しなければならない。

2.日本政府による大陸棚限界延長申請と中韓両国による口上書の提出

 本項は、参議院外交防衛委員会調査室 加地良太氏著「沖ノ鳥島を基点とする大陸棚限界延長申請への勧告」を参考にしている。

(1)大陸棚の延長に関する規定

 国連海洋法条約は、沿岸国の領海を越える海面下の区域の海底およびその下にあって領海の基線から200海里の距離までのものを当該沿岸国の大陸棚とすることを規定するとともに、大陸縁辺部が200海里を超えて延びている場合、この条約が定める一定の条件の下で200海里を超えて大陸棚を延長できる旨を規定している。

 すなわち、下の図2の右側下部の「大陸棚の延長が可能」と示された部分を延長できる。

図2:海洋の区分

出典:海上保安庁海洋情報部「領海等に関する用語」

 各海域における沿岸国の権利、管轄権等は次の通りである。

領海:沿岸国が主権を有する。ただし、すべての国の船舶は、無害通航権を有する。

 

接続水域:沿岸国に、出入国管理(密輸入や密入国等)などの法令の違反の防止および処罰を行うことが認められている。

 

排他的経済水域:沿岸国に、天然資源の探査、開発、保存および管理等のための主権的権利や海洋の科学的調査に関する管轄権などが認められている。

 

公海:公海はすべての国に開放され、すべての国が公海の自由を享受する。

 

大陸棚:沿岸国に、大陸棚を探査しおよびその天然資源を開発するための主権的権利を行使することが認められている。

 

深海底:いずれの国も深海底またはその資源について主権または主権的権利を主張または行使できない。

 

(2)日本政府による大陸棚限界の延長の申請

 日本政府は、1982年に国連海洋法条約が採択されたことを受けて、その直後の翌1983年以降、海上保安庁による大陸棚の延長の可能性についての調査を続けてきた。

 2000 年に入り、国土面積の1.7 倍に相当する面積が新たに大陸棚として主張できる可能性が判明した。

 日本政府は2008年に調査を完了させ、2008年11月12日に7つの海域における大陸棚延長申請を国連の大陸棚限界委員会に提出した。

 7つの海域とは①茂木海山海域、②四国海盆海域、③小笠原海台海域、④南鳥島海域、⑤南硫黄島海域、⑥沖大東海嶺南方海域及び⑦九州-パラオ海嶺南部海域である。

 それぞれの位置は下の図3の通りである。

図3:大陸棚の延長を申請した7つの海域

出典:海上保安庁「大陸棚の限界の申請について」

 2009年3月から4月にかけて、国連大陸棚限界委員会(以下、委員会という)が開催され、日本政府の代表が申請の内容について委員会へのプレゼンテーションを行った。

 日本の申請を審査する小委員会は、同年8月から9月に開催された委員会において設置され、審査が開始された。

(3)韓国および中国が口上書を提出

 日本の申請に対しては、米国、パラオ、韓国および中国の4か国から口上書が提出された。米国およびパラオの口上書の内容は、日本との間で大陸棚として認められる範囲が重複する可能性があるが、その境界画定に影響を及ぼさないことを前提として、委員会による審査および勧告に対し異議を唱えないとするものである。

 他方、中国および韓国の口上書は、沖ノ鳥島は国連海洋法条約上大陸棚を有することのできる「島」ではなく「岩」であり、沖ノ鳥島を基点とした大陸棚の延長海域について委員会は行動をとらないよう要請するという趣旨のものであった。

 国連海洋法の第121条には次のように規定されている。

第1項:島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。

第2項:第3項に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、EEZ及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。

第3項:人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、EEZ又は大陸棚を有しない。

 中韓両国は、沖ノ鳥島は同条約第 121 条3項に規定される「居住又は経済的活動のできない岩」にすぎないとの見解を示している。

 これに対し、日本政府は、沖ノ鳥島は同条約第 121 条1項に規定される「島」であり、歴史的にその地位は既に確立しているとの立場をとっている。

 このように見解が対立する原因は、EEZまたは大陸棚を設定できる「島」または「岩」について同条約が明確な基準を示していない点にある(注1)。

 既述したが、本条の解釈をめぐっては、国際社会においても見解が相違しており、EEZまたは大陸棚を有することのできる「島」として認められる基準は、今後の国際判例や諸国の実行の積み重ねによって確立していくものと考えられる。

(注1)121 条3項の「岩」を一般の島から区別する基準として、海洋法会議において、その大きさや、地質学的な特徴を提案するものもあった。しかし、たとえば地質学的に強固な岩質からなる比較的大きな島が「岩」とされた場合は EEZや大陸棚は設置することができず、他方土砂が中心の小島が通常の島として扱われることは不公平などの理由で、地質学的な形成過程による区別はされることなく扱われ、最終的には「岩」の用語のみが残された。こうして法的な意味での岩は、一般にはサイズや地質学的特徴に関係なく、たとえば砂洲、環礁なども含まれるとするのが通説となっている。(出典:島嶼研究ジャーナル第10 巻1号「島・岩についての国際法制度」2020年10月)

 (4)大陸棚限界委員会による日本の申請に対する勧告の採択

 2012年3月から4月に開催された委員会の全体会合において日本の申請に対する勧告が採択された。

 委員会の勧告の内容は詳細が明らかになっていないが、これまでに外務省が公表した事項を取りまとめると以下のとおりとなる。

  • 日本が申請した7海域のうち6海域について勧告が出された。
  • 「九州パラオ海嶺南部海域」については、勧告が先送りとなった。

 これらが、いわゆる公式見解であるが、さらにマスコミ各社の報道内容等を加え、筆者なりに整理をしてみたい。

 まず、日本が申請した6海域のうち、「南鳥島海域」と「茂木海山海域」の2海域については、大陸棚の延長が認められなかった。

 残りの4海域のうち、「小笠原海台海域」と「四国海盆海域」については、その大部分の海域が大陸棚として認められたのに対し、「南硫黄島海域」と「沖大東海嶺南方海域」については、一部しか延長が認められなかった。

 また、中国および韓国から口上書が提出されていた沖ノ鳥島の南に位置する「九州パラオ海嶺南部海域」については、口上書に言及された事項、すなわち沖ノ鳥島の地位に関する問題が解決されるときまで、本海域に関する勧告を出すための行動をとる状況にないと考えるとして、勧告は先送りされた。

 4月27日、勧告の受領を受け、日本政府は「四国海盆海域について、沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の延長が認められた」と歓迎する外務報道官談話を発表した。

 この外務報道官談話に対して、中韓両国が「根拠がない」として即座に異議を唱え、さらに中国は、「日本が沖ノ鳥礁(筆者注:中国は「島」を使用せず「礁」を使用している)を基点として大陸棚延長を求めていた九州パラオ海嶺南部海域は認定されておらず、認定を受けた四国海盆海域はあくまで日本の他の陸地に基づく延長であって、沖ノ鳥島とは関係ない」とする見解を示した。

 (5)大陸棚の延長に向けたその後の取り組み

 2014年7月、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため内閣に設置された総合海洋政策本部は「大陸棚の延長に向けた今後の取組方針」を次のように決定した。

①「四国海盆海域」および「沖大東海嶺南方海域」については、EEZおよび大陸棚に関する法律(以下「法」という)第2条第2号に基づく政令の制定に速やかに着手する。

②「小笠原海台海域」および「南硫黄島海域」については、関係国(米国およびパラオ)との間における必要な調整に着手し、当該調整を終了後、法第2条第2号に基づく政令の制定に速やかに着手する。

③「九州パラオ海嶺南部海域」については、「大陸棚限界委員会」により早期に勧告が行われるよう努力を継続する。

 2014年10月1日、「四国海盆海域」および「沖大東海嶺南方海域」における延長大陸棚を設定する政令が施行された。

 2023年12月19日(米国時間)、米国は「小笠原海台海域」と重複する海域を含む7つの海域について、延長大陸棚の外縁を公表した。

 これにより、米国が公表した延長大陸棚と重複する海域を除いた「小笠原海台海域」の大部分を我が国の延長大陸棚として定めることができることとなった。

 2024年6月25日、政府は閣議で太平洋の小笠原諸島・父島東方に位置する「小笠原海台海域」の大部分を日本の大陸棚と定める政令改正を決定した。

 政令により新たに設定された延長大陸棚は下の図4の通りである。

図4:政令により新たに設定された延長大陸棚

出典:海上保安庁海洋情報部「日本の領海等概念図」

(6)筆者コメント

 沖ノ鳥島については、中国が、同島は「人の居住または独自の経済生活を維持することのできない岩」(国連海洋法条約第121条第3項)であって、EEZや大陸棚を有しない、と主張したことから、同島の法的地位が問題となっている。

 沖ノ鳥島が日本の領土であることに異論を唱える国はないであろう。中国も沖ノ鳥島が日本の領土であることを認めている。

 しかし、沖の鳥島が島であるという日本政府の主張が国際社会において確立したものであるとは現在のところ断定できない。

 その理由は、既述したが、国連海洋法条約に「岩」の定義がないために、第121条第1項で定める「島」と同条第3項の「岩」との関係については学説が分かれているからである。

 そこで、前出の日本財団の「沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団」報告書は、「沖ノ鳥島の国際法上の地位」研究プロジェクトを立ち上げてこの問題を研究し、我が国が不当に不利益を被らないようにすることを提言している。

 具体的には、国際法の専門家による研究会を組織して、国連海洋法条約第121条の成立過程における議論を整理するとともに、世界中に散らばっている沖ノ鳥島と同様な状況にある島(仏クリッパートン島、英ロッコール島、墨クラリオン島、ベネズエラのアベス島ほか多数)の状況と各国の実行を調査し、国連海洋法条約第121条の解釈、適用を研究し、その成果を内外に発表する。

 この研究では必要に応じて海外の専門家の意見も聴取するとしている。

 他方、中国も2021年から2022年にかけ、我が国が大陸棚延長を国際機関に申請している九州パラオ海嶺南部海域に中国海洋調査船を派遣して海洋調査を実施し、我が国の主張を否定しようとする科学論文を複数発表している。

 ところで話は変わるが、中国は日本政府が「四国海盆海域について、沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の延長が認められた」とする外務報道官談話に反発し、「四国海盆海域はあくまで日本の他の陸地に基づく延長であって、沖ノ鳥とは関係ない」とする見解を表明している。

 日本政府が言うように、「四国海盆海域」について、沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の延長が認められたたとすると、大陸棚限界委員会は沖ノ鳥島が第121条第3項で言う「岩」でないことを認めたことになる。

 そうすると、沖ノ鳥島の南に位置する「九州パラオ海嶺南部海域」の延長が先送りされた理由が分からなくなる。

 四国海盆海域について、沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の延長が認められたのかどうかについて、専門家のご意見をお聞かせいただければ幸いである。

3.中国の西太平洋海域への進出

(1)沿岸海軍から近代海軍へ

 文化大革命で地位を追われていた鄧小平は、1977年7月に3度目の復権を果たすと、新憲法に「4つの現代化」を明記(1978年3月)するとともに米中国交樹立を実現(1979年1月)した。

 しかし米国のレーガン政権が台湾との関係を再強化する姿勢を示し始めると、鄧小平は海軍司令員(中国海軍司令官)劉華清に「第1列島線」概念の具体化を指示し(1982年8月)、中国は海洋進出と海軍建設への関心を強めていった。

 劉華清は近代海軍建設の工程表を作成した。

 それによると「再建期」1982年から2000年の18年間に中国沿岸海域を完全に防衛できる態勢を整備し、「躍進前期」2000年から2010年には第1列島線内部(中国近海)における制海権を確保し、「躍進後期」2010年から2020年に第2列島線内部の制海権を確保し、そのために航空母艦(注2)を建造する。

「完成期」2020年から2040年にかけ米海軍が太平洋とインド洋を独占的に支配する状況を打破する。

 そして、最終的には2040年段階で米海軍に対抗できる海軍建設を完了させる――というものであった。

 1997年に劉華清司令員の後継者となった石雲生は、海洋権益を固守することを明記した国防基本法である「国防法」の制定(1997年3月)に合わせて「沿岸海軍」を「近代海軍」へ変革させるための「海軍発展戦略」を策定し、この中で第1列島線と第2列島線の概念(注3)を明確に打ち出した。

 もちろんこれらの概念は軍内部の国防方針であったが、次第に中国共産党政権の基本的国防方針として広く世界に認識されるようになっていった。

(注2)現在3隻の空母を保有;①1隻目、「遼寧」(旧「ヴァリャーグ」)就役2012年9月25日(メディア発表)、②2隻目、初の国産空母「山東」就役2019年12月17日、③3隻目、初のカタパルト空母 「福建」進水2022年6月17日、就役予定2024年。

(注3)第1列島線は九州から沖縄・台湾・フィリピンからボルネオ島に至る線を指し、これらの島嶼線を第一潜在敵の米国が侵入するのを阻止するものとして規定されている。一方、第2列島線は、伊豆諸島から小笠原諸島、グアム、サイパン、パフアニューギニアに至る線を指し、台湾有事の際(台湾が独立を宣言する場合)に米軍海軍の接近を拒否する海域と理解されている。

(2)西太平洋海域へ進出する中国の狙い

 中国は1970年代から南シナ海に、80年代からは東シナ海に進出し、そして21世紀に入ってからは西太平洋に進出してきている。

 西太平洋の中心にある沖ノ鳥島の周辺海域において、中国は「海洋の科学的調査」や軍事演習を頻繁に行っている。

 近年では、2010年4月10日、キロ級潜水艦2隻を含む約10隻の艦隊が沖ノ鳥島海域を抜け出て西太平洋域に進出し訓練を実施した。

 これらの監視に当たった海自・護衛艦に対して中国海軍艦載ヘリが異常接近する事態も発生し、外務省は抗議をした。

 2020年7月9日、海上保安庁巡視船が沖ノ鳥島の北北西約310キロの日本のEEZにおいて、中国の海洋調査船が観測機器を海中に投入しているのを確認した。

 EEZの沿岸国の同意を得ずに行われる「海洋の科学的調査」は国際法違反である。

 2023年5月、防衛省の発表によれば、中国海軍の空母「山東」の艦隊は宮古島の南約220キロの地点で活動した後、日本のEEZの外縁をなぞるように東へ移動し、日本最南端の地・沖ノ鳥島の南東約370キロまで航行。

 そして数日間、その武威を誇示するように艦載機の発着訓練を繰り返した。

 さて、中国は米国が2隻の航空母艦を派遣した1996年の台湾海峡危機以来、その領域への米軍のアクセスを阻止できるレベルの兵器システムを配備することとし西太平洋の軍事バランスを変えようと努力している。

 関連する情報であるが、2008年3月米上院軍事委員会公聴会で、米太平洋軍司令官ティモシー・J・キーティング海軍大将は「2007年5月に司令官として中国を訪問した際、(中国海軍幹部から)米国がハワイ以東を、中国がハワイ以西の海域を管理するというアイデアはどうか」と打診された事実を明らかにしている。

 また、2015年5月17日に訪中したジョン・ケリー国務長官に対して、習近平主席は「広大な太平洋には中米2大国を受け入れる十分な空間がある」という提案していた。

 中国は太平洋分割統治論を持ちかけつつ、「接近拒否・領域拒否戦略」を進めていると見られている。

(3)筆者コメント

 中国海軍が沖ノ鳥島近海など西太平洋海域へ進出する狙いは、沖ノ鳥島は島ではなく岩であると主張し、同島周辺海域の日本のEEZにおける日本の管轄権行使を否定し、同島周辺海域で軍事目的の海底地形、水温や潮流などのデータを収集し、それにより原子力潜水艦を含む米国海軍艦艇の第2列島線内部へのアクセス阻止を企図していると考えられる。

 沖の鳥島は西太平洋上の孤島であっても、沖縄と米領グアムを結ぶ航路のほぼ中間に位置している軍事的要衝であることを忘れてはいけない。

おわりに

 2014年に小笠原諸島と伊豆諸島周辺の日本の領海とEEZでの中国の漁船によるサンゴ密漁への対応では、取締りを行う海上保安庁の巡視船の投入隻数が追いつかず、仮に積極的に違法漁船を摘発した場合、本土への移送に巡視船とヘリコプターが割かれてしまい、残りの漁船が野放しになってしまうため、摘発せずに漁船に警告をして、領海から追い出す措置にとどめていたという報道があったが、これが事実ならば言語道断である。

 海洋法条約で定める沿岸国の義務である法執行は、いかなる理由・事情があるにせよ厳格に実施されなければならない。

 この事案を教訓として、海上保安庁は、2022年12月16日に、新たな「海上保安能力強化に関する方針」を策定した。

 その中で、「新技術等を活用した隙の無い広域海洋監視能力」や「海洋権益確保に資する優位性を持った海洋調査能力」などの能力の強化および海上保安能力の強化に必要となる巡視船・航空機等の勢力の増強整備を謳っている。

 新技術等を活用した広域海洋監視能力では、無人機をはじめとした新技術を活用するものとし、無人機と飛行機・ヘリコプターとの効率的な業務分担も考慮した監視体制を構築するとした。

 海洋権益確保に資する海洋調査能力では、測量船や測量機器等の整備や高機能化を進めるとともに、取得したデータの管理・分析およびその成果の対外発信能力の強化や、外交当局等の国内関係機関との連携・協力を図るとした。

 また、巡視船・航空機等の増強については、必要性や緊急性の高いものから段階的に大幅な増強整備を進めるものとした。

 前出の「海上保安能力強化に関する方針」には、その目標達成時期が明記されてないので、何時とは言えないが、近い将来、我が国の主権または主権的権利が及ぶ海域等で違法活動する外国船を拿捕し、確実に罰せられる態勢ができていることを筆者は期待している。

 また、沖の鳥島が将来にわたって、島として存続することも願っている。

 

横山 恭三

元空将補、1970年防衛大学校卒業・航空自衛隊入隊、要撃管制官を経てフランス軍統合大学留学、在ベルギー防衛駐在官、情報本部情報官、作戦情報隊司令などを務め2003年航空自衛隊を退職。現在(一財)ディフェンス リサーチ センター研究委員。

*左横の「ブックマーク」から他のブログへ移動