「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.522 ★ 今や中国人が“ジリ貧日本”の救世主か?人口減少に歯止めをかける  「戦略的な移民考」

2024年07月28日 | 日記

DIAMOND online  (沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント)

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増え続ける外国人留学生。じつにその4割は中国人だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

恐ろしい勢いで進む人口減少 300年後は日本の総人口が100万人台に?

「異次元の少子化対策」と岸田首相は言ったものの、財源は国民からの徴収となった。子どもが欲しい人に産みやすい環境を整えること、たとえば不妊治療の健康保険適用の拡張は政策として素晴らしいと思うが、単に人口を増やすために子ども産むことを国民に仕向けるのには違和感を覚える。

 その違和感の理由は、少子高齢化の人口構成では、現在の年金制度や健康保険制度が破綻することを回避することが目的化しているように感じるからである。私は20年以上、仕事で人口予測を行ってきた。その仕事が発生するのは、厚生労働省の外郭団体である国立社会保障人口問題研究所が発表し、無償で使用することができる人口予測が外れ続けていることが主要因となっている。

 それは、年金制度や健康保険制度が破綻しないように見せかけるために、常に出生数を多めに、死亡数も多めに予測されているのが原因だ。統計は多めにも少なめにも出すことができるが、その確率は50:50となるのが普通で、100:0になると恣意性があるものとして信用を失ってしまう。

 移民を除くと、日本の総人口を維持するには、親世代の人数分だけ子どもが産まれなければならない。その数は合計特殊出生率で2.1という数字になる。女性は全員2人以上子どもを産まなければ、この数字を達成できない。先進国でこの数値を達成している国はほぼない。現在の日本は1.2で、親子間の年齢差が30歳とすると、30歳の人口100に対して0歳人口は60になる。3世代、つまり90年後には21.6になる。おおよそ100年で2割になる計算だ。

 200年すると4%になり、300年すると0.8%となる。ざっくり言うと、300年後に日本の出生人口は年間数千人となり、総人口も100万人台になっている見通しだ。そして長期的には、日本の総人口はゼロに近づくことが不可避な状況にある。このような状況で出生率を多少上げたところで人口維持は不可能で、100万人に減少するまでの時間稼ぎにしかならない。

 そんな日本にあって、人口減少に歯止めをかけている要因がある。外国人居住者の増加である。在留外国人というが、直近1年の外国人の増加数は26万1889人(在留外国人統計・出入国管理庁)で、日本人は83万7000人減少(人口推計・総務省)している。日本人の減少を外国人の流入で補っているのが現状であり、差し引きで57万人超の純減となっている。

在留資格別にこの1年で最も人数が増え外国人は、特定技能に従事する人々で8万5629人となる。特定技能とは、人手不足の分野(介護・宿泊業、建設、農業など)で一定の技能がある外国人を労働者として受け入れるものだ。2019年度に始まった制度で、5年間で34.5万人を受け入れ上限にしている。コロナ禍期間に受け入れが遅れたが、最近急ピッチで増えて、受け入れ上限まで急上昇している。

 2024年度から自動車運送業や鉄道など4業種が追加になり、政府は5年間の受け入れ枠を以前の約2.4倍となる82万人とすることを閣議決定している。そのため、今後も特定技能者は年間16.4万人ペース(直近1年の約2倍)と急増が見込まれる。つまり、少子高齢化で日本の働き手となる年齢層の人口が減るに従って、外国人を増やす政策が取られているので、今後も在留外国人はこれまで以上に増えていく可能性が高い。

働き手は増えても労働生産性は低下 ジリ貧日本の救世主は中国人?

 とはいえ、実は近年、日本における働き手は増加している。就業者数は2013年に6326万人だったが、2023年には6747万人となり、6.7%増加している。これは女性の社会進出と高齢者の就業率が増加し、さらに外国人労働者も増えているからである。しかしながら、日本のGDP(国内総生産)はほぼ横ばいで増えていない。ということは、「GDP=就業者数×労働生産性」と考えると、1人当たりの労働生産性は落ちていることになる。確かに、女性と高齢者と外国人は非正規雇用の単純労働が多い。これでは経済的に繁栄しそうにない。

 毎年年収が上がっていく高度な仕事の担い手として、外国人の大学留学生はコロナ禍前に30万人に達していた。その留学生の4割は中国人で、米中の関係悪化から日本を留学先に選ぶ人は多い。中国では若年失業率が高く、就職が難しいため、日本で就職する人も増えている。東南アジアの国々からすると、日本は先進国であるし、若年失業率の高いヨーロッパの国々(スペイン、イタリア、フランスなど)は多いが、日本の2023年平均の完全失業率は2.6%と先進国では最も低い部類に入るため、就職先には困らないはずだ。

加えて、日本には治安の良さ、人の優しさ、街の清潔感など、日本では当たり前だが、諸外国ではあり得ない社会的な安心感がある。それは、外国人留学生には魅力的な面もあるだろう。そうした日本の長所を生かして、日本で働く外国人を増やすことは可能だと考える。国に対する信用の端緒として、東京都文京区の有名公立小学校に中国人生徒が増えていることは、先日ニュースとして大きく報道された。こうした子どもたちも、日本の担い手として育つ可能性が高い。

日本の少子化を補う外国人留学生 戦略的な活用を考えるべき

 そこで、少子化対策の提案をしたい。日本国民については「産む気がある人」を国を挙げて支援すべきだが、若い世代に単なる出産奨励を行う必要はない。一方で外国人については、単純労働ではなく高度な労働の担い手となる留学生を積極的に支援したい。「高度な」とは、総合職として年収が上がっていくことを指す。その際、大学時代に日本の文化・生活習慣を学び、実践し、身に着けてもらいたい。日本人ではないものの、日本の精神文化を大切にしてもらいたいのだ。

 また、卒業後に日本で一定期間以上働き続けることにインセンティブを設け、優秀な労働力として取り込んでいく。私は、日本で働く優秀な中国人やベトナム人を少なからず知っている。彼らの経済的なメリットは、生産性の高さだけでなく、育成期間のコストにある。日本人なら生まれてから一人前の労働力に育てるまでに22年ほどかかる期間を、外国人ではわずか4年(大学院を入れても6年)に短縮することができる。これは、日本人が18歳の子どもを産んでいるのと同じことを意味する。2023年の日本の出生人口は72万7277人なので、30万人の留学生を足すと100万人に達することになる。

 日本は世界で見ても、外国人の受け入れ数が上位の国となっている。ちなみに、経済協力開発機構(OECD)は統計上、「国内に1年以上滞在する外国人」を移民と定義しているので、ほとんどの在留資格者はこの定義上は移民に相当するが、日本では移民とは呼んでいない。しかし、この「実質的な移民」を少子化対策、労働力確保、経済成長をバランスよく実現する手段と捉えてもいいのではないだろうか。それが、国としての戦略性というものである。

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