「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.268 ★ なぜ最近「激安の中国製品」が大量に出回っているのか…「世界の工場」がお荷物と化した習近平政権の自滅 欧米が制裁を課せば、貿易戦争は避けられない

2024年04月17日 | 日記

PRESIESIDENT Online (真壁 昭夫:多摩大学特別招聘教授)

2024年4月15日

米国の財務長官が直接“警告”する異例

4月5日、広東省広州市の米国商工会議所にてイエレン米財務長官は、「中国の過剰製造能力が世界経済に及ぼす影響に対する懸念が高まっている」と述べた。米国の財務長官が自ら中国を訪問し、過剰生産能力の増加は世界経済のリスク要因になりつつあると表明した意味は重い。

写真=E訪問先の中国・北京で記者会見するジャネット・イエレン米財務長官=2024年4月8日

イエレン財務長官の真意は、「中国の習近平政権が国内の需要不足を輸出の増加で埋め合わせようとすると、世界的な不均衡で貿易戦争が勃発しかねない」と中国政府に直接言いたかったのだろう。それほど、中国問題は深刻化する可能性があるということだ。

余った安い製品をどんどん輸出している

足許、中国では不動産バブル崩壊の深刻化によって、不良債権は大きく膨らんでいる。人々の節約志向は高まり消費は低迷し需要が低迷する一方、中国政府は生産能力の強化を加速している。当然の結果として、過剰生産能力の増加に拍車がかかる。本来、中国政府は金融緩和に加え財政出動と規制緩和などを強化し、需要を喚起することが必要なのだ。

しかし、中国政府は重要喚起策には慎重で、政府系企業などの生産能力をさらに強化する方向に向かっている。現在の経済環境下で供給力が増大すると、国内で余った安価な製品を輸出に向けることになる。

主要先進国は自国企業を守るため、中国製品への関税引き上げなどの必要性は高まる。欧米の対中圧力に、中国も無策でいられない。中国政府は報復措置を打ち出し、世界的な貿易戦争が勃発、熾烈化する危険性は上昇傾向にあると考えられる。

「不当な価格競争の圧力が及んでいる」

イエレン米財務長官の中国訪問の主たる目的は、中国の過剰な生産能力が世界経済のリスク要因になる懸念を伝え対応を求めることだった。米国の財務長官自ら中国を訪問したケースは珍しい。

イエレン氏は、「主要な企業に対する支援は、政府の産業育成と強く関連していることを理解している」と発言した。中国製造2025などの産業振興策の強化もあり、中国企業の生産能力は、国内外の需要を上回る部分が増えているとの認識も示した。

その上でイエレン氏は、米国、メキシコなどに不当な価格競争の圧力が及んでいると強い懸念を表明した。中国政府は、過剰生産能力の問題に適切に対処し、市場原理に基づいた改革を推進する必要性も高いと指摘した。

国民を守るような政策発動の兆しは見えない

中国の過剰生産能力は累積し、世界経済全体を下押しし始めている。世界経済の成長鈍化は、中国経済にとっても逆風だ。その影響を軽減するため、中国は構造改革を進め需要創出につながる経済政策を強化する必要性は高い。

中国では、不動産バブルの崩壊により、中小の金融機関だけでなく大手行の一角にも信用不安が及び始めた。4月5日、大手国有銀行の一つである中国建設銀行は、世茂集団(シーマオ・グループ)に対する清算を香港の裁判所に申し立てた。

現在、中国の不動産市況の悪化に歯止めはかかっていない。それに伴い、雇用・所得環境は悪化し個人消費は弱含んでいる。デフレ圧力は高まった。そうした負の連鎖から脱却するため、金融緩和策の強化、社会福祉制度の拡充などで国民に安心感を与えることが重要なのだが、今までのところ、習政権にそうした政策発動の兆しは見えない。

中国政府関係者は“イエレン発言”に反発

米財務長官自ら中国を訪問し懸念を伝えるほど、中国の過剰生産能力は深刻である。ところが、中国政府関係者はイエレン発言に反発したようだ。

中国政府は供給サイドを強化することで、中国企業の世界シェアを高め、世界経済の中での地位向上を目指したいのだろう。3月の全人代以降、政府はEVおよびバッテリーや関連インフラ、半導体、半導体製造装置などの生産能力を強化する方針を示した。

在来分野では、不動産バブル崩壊で余った鉄鋼製品などが、海外向けの輸出に向かっている。2024年1~2月、ベトナムの中国製鋼材流入は前年同期の約3倍に達した。家具や家電などの分野でも、安価な中国製品が海外に向かっている。

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中国から海外へ、行ってみれば“デフレの輸出”は加速している。足許の主要先進国経済では、欧州諸国がその負の影響に直面した。北欧などEVシフトが急速に進んだ国を中心に、中国製(米国のテスラも含む)のEVの販売台数が急増した。中国製EVは相応の性能を備え、独仏の自動車メーカーのモデルより安い。

“世界の工場”から一転、制裁関税が発動するか

欧州委員会は、中国の産業補助金政策などが不当な価格競争につながっていると判断し、中国製EVの調査を開始した。欧州委員会は税関登録時点にさかのぼって、制裁関税を課すことも検討しているようだ。

産業補助金による研究開発や生産体制の強化、海外企業からの技術強制移転などにより、中国企業のコスト負担は低い。主要先進国などにとって、中国企業との価格競争から自国の企業・産業を守る必要性は高まった。米国は政権が代わっても、トランプ政権が導入した対中制裁関税を維持した。

戦略物資として重要性が高まる半導体分野でも、米欧は中国の価格競争に懸念を強めた。米国と欧州連合(EU)は、旧世代の半導体供給網に関しても対中規制などを強化する方針だ。米政府がオランダの半導体製造装置メーカーASMLに、中国向けサービス業務を打ち切るよう要請したとの報道もある。

トランプ元大統領は「60%の関税」を検討

今後、米国政府は中国に対して過剰生産能力の削減を求め、国有企業の民営化など構造改革を推進するよう対話を求めるだろう。ただ、すぐに中国が要請を聞き入れ実行に移すとは考えづらい。

今後、米欧を中心に、供給サイドを強化する中国に対する懸念は上昇するだろう。自国の経済、雇用を守るため、欧米諸国が中国企業に対する規制や制裁関税などを発動する必要性は上昇する。

実際に欧米諸国が中国製品の関税を引き上げると、中国も報復関税など対抗措置を繰り出すだろう。展開次第では、中国で海外製品の不買運動が発生するかもしれない。

米国の大統領候補として注目集まるトランプ氏は、再選した場合に中国からの輸入品に一律60%の関税を検討していると報じられた。中国の対抗措置を見越してのことだろう。関税の引き上げに加え、米国が同盟国や友好国に、中国企業との取引を制限、禁止するよう要請を強めることも考えられる。

中国を火種とした貿易戦争リスクが高まっている

世界的な貿易戦争のリスクは高まっている。反グローバル化というべき世界経済の環境変化は加速するかもしれない。1990年代以降、自由貿易の促進などによって国境のハードルは下がった。

国境を越えたヒト・モノ・カネの再配分は加速し、ジャスト・イン・タイムの供給体制の整備も加速した。米国などの企業は最もコストの低いところで生産を行い、高い価格で供給する体制を強化した。それは世界経済の成長と物価の安定に寄与した。

今後、逆の変化が加速する懸念は高い。中国が供給サイドの強化策を実施するに伴い、米国などは中国の安価な製品を自国市場から締め出そうと対策を強化する。世界全体で関税率は上昇し、自由貿易体制は不安定化する。世界全体で経済運営の効率性は低下するだろう。今回のイエレン氏訪中は、中国が貿易戦争の重要なリスク要因になりつつあることを確認する重要な機会となった。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)

多摩大学特別招聘教授。1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。

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No.267 ★ 中国外交、苦肉の「戦略的互恵」復活 24年版外交青書

2024年04月17日 | 日記

日本経済新聞

2024年4月16日

上川陽子外相が16日に閣議報告した2024年版外交青書で、日中の「戦略的互恵関係」の記述が5年ぶりに復活した。中国の経済規模や軍事力が大きくなるのを踏まえ、衝突回避へ日中の安定的な関係維持を優先する。

外務省が毎年作成する外交青書の書きぶりは相手国への現状認識や向き合い方をあらわす。19年版以来消えていた戦略的互恵関係を再び記したのは経済と安全保障で対中リスクを低減する狙いがある。

06年に当時の安倍晋三首相が提起した戦略的互恵関係は政治と経済を両輪に、日中が共通の利益を目指す意味で用いられた。

今回は23年11月の日中首脳会談で岸田文雄首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席が戦略的互恵関係を再び確認したのを受け、解決困難な課題で対立を深めず関係を保つ意図がある。

24年版外交青書は日中間に「数多くの課題や懸案が存在する」と触れた。中国の軍事力強化を巡り「日本と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的挑戦だ」との認識を強調した。

「『建設的かつ安定的な日中関係』を双方の努力で構築していくことが重要だ」と訴えた。

米大統領選など大型選挙が24年に相次ぐと指摘し「各国の内政と国際関係が相互に影響を及ぼし、国際情勢は重要な局面を迎える」と記載した。

主要7カ国(G7)や日米豪印の4カ国による「Quad(クアッド)」、日米韓などの同盟・同志国の枠組みの重要性が相対的に増していると明記した。

11日に初めて首脳会談を開いた日米比の枠組みについて「連携を一層強化し、協力の具体化を進めていく」と定義した。

学習院大の江藤名保子教授(中国政治)は「『戦略的』の意味は競争関係にはあるが、協力できる部分は協力するということだ」と分析した。

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No.266 ★ 中国、1〜3月GDP5.3%増 生産・投資堅調で景気下支え

2024年04月17日 | 日記

日本経済新聞

2024年4月16日

工事が中断したままのマンションの建設現場(2月、北京)=共同

中国国家統計局が16日発表した1〜3月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比5.3%増えた。2023年10〜12月の5.2%から加速した。生産や投資が堅調で景気を下支えした。

1〜3月の前年同期比増加率は日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予測の平均(4.5%)を上回った。

季節要因をならした前期比での伸び率は1.6%と、23年10〜12月(1.2%)から加速した。先進国のように前期比伸び率を年率換算した成長率は6.6%程度となる。

生活実感に近い名目GDPは前年同期から4.0%拡大した。23年10〜12月の増加率は3.7%だった。

16日はGDPと同時に他の統計も公表した。1〜3月の生産は6.1%増えた。3月単月では前年同月比4.5%増だった。電気自動車(EV)向けの充電設備や3Dプリンター設備、電子部品は4割程度増えた。

マンションや工場などの固定資産投資は1〜3月に4.5%伸びた。このうち民間投資は0.5%増えた。不動産市場はさえない状況が続く。1〜3月の開発投資は9.5%減少した。新築の販売面積も19.4%減となった。

百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売などを合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は3月、前年同月比3.1%増だった。全体の1割を占める飲食店の収入は6.9%増だった。1〜3月の小売売上高は前年同期比4.7%増加した。

外需も経済成長の押し上げ要因となった。1〜3月の輸出(ドル建て)は前年同期を1.5%上回った。輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は前年同期比で2.0%増えた。

中国政府が24年の成長率目標として掲げる「5%前後」を上回る水準だった。アジア開発銀行(ADB)が11日公表した予測によると、中国の成長率は23年の5.2%から24年は4.8%に伸び悩む。不動産市況の低迷が長引き、民間投資が頭打ちになると指摘した。

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No.265 ★ iPhoneの販売が急減、中国市場で苦戦

2024年04月17日 | 日記

CNN.co.jp

2024年4月16日

(CNN) 米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の2024年1~3月期の出荷台数が前年同期比で10%減少したことがわかった。調査会社IDCが明らかにした。iPhoneの販売は中国市場で大きく落ち込んでいる。

アップルは中国市場で勢いを失っている。中国国内のナショナリズムや厳しい景気、競争の激化などが過去数カ月、アップルにとって打撃となった。

IDCの調査ディレクター、ナビラ・ポパル氏はCNNの取材に対し、「アップルにとっては大きな落ち込みだが、過去4年間の状況を考えると、アップルは恐らく最も回復力のあるブランドであり、他のブランドよりもサプライチェーン(供給網)の問題やマクロ経済的な課題を克服してきた」と述べた。

韓国のサムソン電子が12年間にわたって、スマートフォン市場で業界の首位にいたが、アップルが昨年、その座を奪っていた。しかし、わずか1四半期で、サムスンが再び首位に返り咲いた。

 ポパル氏は「サムスンが首位に返り咲いたことも非常に重要だ」と指摘。ポパル氏によれば、今年はサムスンが使う基本ソフト(OS)の「アンドロイド」がアップルのOS「iOS」の2倍のペースで成長するとみているという。

これは、アンドロイドのほうが過去数年、大きな落ち込みをみせていたため、現在は成長の余地がより多くあるためだ。

IDCによれば、全体では1~3月期の世界のスマートフォンの出荷台数は前年同期比7.8%増の約2億8900万台だった。このことは、スマートフォン市場が過去2年のマクロ経済的な苦境を乗り越えて再浮上しつつあることを示している。

 サムスンの市場シェアは約20.8%。アップルが同17.3%で続く。中国の小米科技(シャオミ)は同14.1%だった。

IDCは最新の報告書の中で、アップルとサムスンが引き続き市場で支配的な地位を維持するとの見方を示しているが、小米科技や華為技術(ファーウェイ)といった中国勢の復活も続く可能性が高い。

かつてはアップルを検討した中国の消費者は今、中国のブランドに目を向けている。 中国はアップルにとって依然として重要で、米国に次ぐ最大の市場。アップルは売り上げを伸ばそうと、中国で値引き販売を行っている。

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