現代ビジネス (中島 恵:ジャーナリスト)
2024年4月2日
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写真提供: 現代ビジネス
4年半ぶりに中国に帰省して
3年以上に及んだ新型コロナウイルスの流行で中国に帰省できなかった在日中国人は多いが、私の友人の張さんもそのひとり。張さんは今年の春節、実に4年半ぶりに、故郷に帰省した。張さんは日本に住んで30年。日本人よりも律儀でまじめな人柄だが、帰省の感想を聞くと、おだやかな張さんの表情が曇り、少し怒りを込めながら“本音”を語り始めた。
張さんの故郷は吉林省の中堅都市。吉林省の省都、長春にある国際空港からクルマで約1時間の距離にある。2月初旬、故郷へのお土産をスーツケースに詰め込んだ張さんが空港に到着すると、母親や親戚たちが出迎えてくれて、感動の再会を果たした。いつもSNSでビデオ通話していたが、直接母親の手を取って抱き合えたことに張さんは心から感激した。
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Photo by ISTOCK
今回の帰省のため、特別に職場から1ヵ月以上の休暇をもらい、家族で水入らずで過ごすことも楽しみにしていた。
帰省前、張さんは私にこう語っていた。
「仕事の関係で、コロナ禍前も、いつも1週間ほどしか帰省できず、慌ただしかったんです。それに、春節の時期は飛行機代も高かったので、家族でお正月を祝うのは、もう10年ぶりくらいでしょうか。今回は長く実家にいられるので、本当にうれしくて、涙が出る思いですよ」
それから1ヵ月半が経ち、久しぶりに張さんに会ったので、中国の感想をたずねてみた。家族との再会はもちろん、故郷の料理や景色にさぞ感激しているかと思いきや、意外にもそうではなかった。
「家族との再会はもちろんうれしかったですが、それよりも、もう大気汚染がひどくて、空気が悪すぎて、息ができないくらいでした。一時期騒がれたPM2.5(微小粒子状物質)もあるし、公害がひどいんですよ」
「ここは工場地帯で、真冬は石炭を多く使っていることも関係ありますが、マンションの窓を閉めていても、細かい砂のようなものが入ってくるし、街を歩いていても、先のほうが霞んで見えないんです。
これまで私は夏に帰省することが多かったので、気がつかなかったんですね。大気汚染がひどいせいで、地面に積もった雪も黒い。真っ白い雪なんてない。ここは、冬はマイナス30度以下になり、雪もよく降るのですが、日本の真っ白な雪とは大違いでした。この雪にかかった黒いものを自分たちが毎日吸っているかと思うと、ぞっとしました」
スーパーに出回る“解毒作業”が必要な食品
私が驚きながらうなずいていると、張さんは、その1ヵ月半の間に経験したことについて延々としゃべり始めた。最も力を込めて話したのは、スーパーで販売されている食品の「やばさ」についてだ。
「母親とスーパーに行ったときのこと。最近は自分たちが住んでいる中堅の都市にも大きなスーパーがあって、品揃えも豊富です。私が幼かった頃は、冬は白菜だけ、果物なんてほとんどなかったですが、今では物流事情がよくなって、南のほうからナスやキュウリ、トマトなどの夏野菜も運ばれてきますので、一年中食べられます。
でも、よく見てみると、まるで食品サンプルみたいにツヤツヤで、置物みたい。ナスの表面なんて、絵具で紫色に塗ったようにきれいなんです。
兄に聞いてみると、南のほうから輸送してくるのに時間がかかるので、腐らないように薬品を振りかけてあるのだとか。そのことを皆知っているので、買ってきたら、まず、おコメのとぎ汁に数時間つけて、薬品を抜く作業をするそうです。ときには、そこに小麦粉をちょっと入れるといいとか……。そうしないと食べられないと聞きました」
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Photo by ISTOCK
私もその話は知っていた。十数年前、すでに、北京や上海の友人たちも、野菜や果物の農薬がひどいので、農薬を除くための専用の洗剤を購入し、それで洗ったり、つけ置き洗いしたりしていると聞いていたからだ。しかし、いまもそうした“解毒作業”が必要とされていることに驚かされた。
しかし、こういった“解毒作業”が必要な食材はレストランでも同じように出回っているという。これは農家の人たちの考え方にも起因している。
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