品川区民芸術祭2011 ラ・フランス・コンサート
La France Concert
2011年11月6日(日)14:00~ きゅりあん・8F大ホール 全席指定 SB席 22番 4,000円
指 揮: 飯森範親
ヴァイオリン: 川久保賜紀
チェロ: 遠藤真理
管弦楽: 山形交響楽団
【曲目】
モーツァルト: 歌劇『フィガロの結婚』K.492 序曲
ブラームス: ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
シューマン: 交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」
「品川区民芸術祭2011」は、9月17日から12月6日までの間にさまざまな芸術関連イベントが企画されているが、そのひとつにあたるのが今日のコンサートだ。春に行われる「さくらんぼコンサート」に続いて、「ラ・フランス・コンサート」と題して山形県の観光・物産の振興を目指したイベントを兼ねている。
コンサート自体は音楽監督の飯森範親さん率いる山形交響楽団の東京公演であり、今回はヴァイオリンの川久保賜紀さんとチェロの遠藤真理さんをゲストに招き、ブラームスの二重協奏曲がプログラムに載せられた。彼女たちのドッペル・コンツェルトを聴くのは初めての機会なので、いつものようにステージ近くに(2列目センター)に席を確保しておいた。
開演に先立ち、会場の「きゅりあん・大ホール」のロビーでプレ・コンサートが開かれた。モーツァルトの弦楽四重奏第14番の第3楽章と第4楽章を演奏したのは、コンサートミストレスの犬伏亜里さんを始めとする各パートの主席奏者たち。なかなか贅沢な催しである。
さらに開演直前まで、マエストロ飯森さんによるプレ・トークがあった。今日のコンサートでは、金管楽器群を古楽器のレプリカを使用して、作曲当時に近い響きを目指すという。バルブのないホルンやトランペット、現代のものとは趣のかなり異なるトロンボーン3種(アルト、テナー、バス)などが紹介され、これはとても興味深かった。金管が古楽器なら、弦楽は当然ピリオド奏法に近い演奏スタイルを試みるとのことだ。
1曲目の『フィガロの結婚』序曲は確かに古色蒼然とした雰囲気に包まれてはいた。ここではあまり金管楽器は活躍しないので、背景でリズムを刻むホルンの音色などが、確かに変わっていた。飯森さんの指揮は、相変わらず少々気負いすぎ(?)。肩に力が入り過ぎているような感じで、リズム感にやや軽快感が感じられないのが惜しい。モーツァルトの序曲では、もう少しワクワク感が欲しいところだ。
2曲目はブラームスのドッペル・コンツェルト。分厚くシンフォニックなオーケストラにヴァイオリンとチェロが有機的に絡みつく曲である。通して聴き終えての印象は、やはりふたりのソリストの演奏の素晴らしさであろう。あくまでその精神が内側に向いているブラームス晩年の作品だけに、ややもすると暗く枯れたイメージになりがちな曲であるが、まず遠藤さんのチェロの基本的に明快な音色と闊達な演奏スタイルが、冒頭から曲想を若返らせて行く。続く川久保さんのヴァイオリンの音色は、今日は一段と繊細かつ流麗な美しさを放っていた。さすがに三浦友理枝さんを含めたトリオでの活動が続いていることもあって、お二人の演奏は息がピッタリ合っている。というより、その場のアイコンタクトだけでなく、お互いの音をよく聴いているし、互いに信頼し合っているのが音楽を聴いているだけで伝わってくるようだ。おそらくこの曲は、互いに初共演になると思われるが、それでも絡み合うような協奏部分も、ユニゾンのアンサンブルも、お見事。今日は「合わせる」演奏をしているのがよく分かった。例によって重めになりがちな飯森さんの指揮も、この曲では二人のソリストのリズム感に引き寄せられる感じで、瑞々しい演奏になった。
美しいデュオを聴かせてくれた川久保賜紀さんと遠藤真理さん
後半はシューマンの「春」。4つの楽章を通して、弾むような躍動的なリズムに支配されていて、曲想のイメージから「春」と呼ばれる曲だ。第1楽章冒頭の金管のファンファーレが、例の古楽器の難しさで、ちょっと外してしまったのが残念だったが、後は概ね何とかこなして…。確かにトランペット、ホルン、トロンボーンの3種の金管楽器の音色が〈ぷぁん〉とした音で普段とは違っている。そこが何とも長閑な感じがして面白いのだが、やはり演奏は難しいようで、バルブがない訳だから音程が不安定になるのと、旋律の演奏時にリズムが狂いやすい。もう少し演奏の技術を…と言いたいところだが、それよりは大変素晴らしい試みを評価したいと思う。また木管楽器は普通に上手く演奏していたし、弦楽も問題なくアンサンブルをまとめていたので、演奏全体としてはなかなか良かったのではないだろうか。飯森さんの指揮も、さすがに弾むリズムはいつもよりは軽快だった。不思議なことに、飯森さんの指揮は、録音で聴くととても良いのに、ナマで聴くと何故かリズムが重々しい。他の指揮者ではあまり感じられないことなので、妙な特質を持っているのかも…。
普段の山形交響楽団は、本プログラムに全力を尽くすのでアンコールはしない主義だという。ところが今日はせっかくの古楽器が冒頭でヤッてしまったので、リベンジ(?)というわけで、特別なアンコールに、シューマンの交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」の第1楽章のファンファーレを。今度はうまくいった。現代の楽器よりも暖かみのある音が響き渡った。
山形交響楽団の東京公演は、終演後のサイン会や物産の売店などが賑わって楽しいのだが、今日はこの後もうひとつコンサートがあるので、早々に会場を抜け出さざるを得なかったのが、なんとも残念。
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La France Concert
2011年11月6日(日)14:00~ きゅりあん・8F大ホール 全席指定 SB席 22番 4,000円
指 揮: 飯森範親
ヴァイオリン: 川久保賜紀
チェロ: 遠藤真理
管弦楽: 山形交響楽団
【曲目】
モーツァルト: 歌劇『フィガロの結婚』K.492 序曲
ブラームス: ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
シューマン: 交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」
「品川区民芸術祭2011」は、9月17日から12月6日までの間にさまざまな芸術関連イベントが企画されているが、そのひとつにあたるのが今日のコンサートだ。春に行われる「さくらんぼコンサート」に続いて、「ラ・フランス・コンサート」と題して山形県の観光・物産の振興を目指したイベントを兼ねている。
コンサート自体は音楽監督の飯森範親さん率いる山形交響楽団の東京公演であり、今回はヴァイオリンの川久保賜紀さんとチェロの遠藤真理さんをゲストに招き、ブラームスの二重協奏曲がプログラムに載せられた。彼女たちのドッペル・コンツェルトを聴くのは初めての機会なので、いつものようにステージ近くに(2列目センター)に席を確保しておいた。
開演に先立ち、会場の「きゅりあん・大ホール」のロビーでプレ・コンサートが開かれた。モーツァルトの弦楽四重奏第14番の第3楽章と第4楽章を演奏したのは、コンサートミストレスの犬伏亜里さんを始めとする各パートの主席奏者たち。なかなか贅沢な催しである。
さらに開演直前まで、マエストロ飯森さんによるプレ・トークがあった。今日のコンサートでは、金管楽器群を古楽器のレプリカを使用して、作曲当時に近い響きを目指すという。バルブのないホルンやトランペット、現代のものとは趣のかなり異なるトロンボーン3種(アルト、テナー、バス)などが紹介され、これはとても興味深かった。金管が古楽器なら、弦楽は当然ピリオド奏法に近い演奏スタイルを試みるとのことだ。
1曲目の『フィガロの結婚』序曲は確かに古色蒼然とした雰囲気に包まれてはいた。ここではあまり金管楽器は活躍しないので、背景でリズムを刻むホルンの音色などが、確かに変わっていた。飯森さんの指揮は、相変わらず少々気負いすぎ(?)。肩に力が入り過ぎているような感じで、リズム感にやや軽快感が感じられないのが惜しい。モーツァルトの序曲では、もう少しワクワク感が欲しいところだ。
2曲目はブラームスのドッペル・コンツェルト。分厚くシンフォニックなオーケストラにヴァイオリンとチェロが有機的に絡みつく曲である。通して聴き終えての印象は、やはりふたりのソリストの演奏の素晴らしさであろう。あくまでその精神が内側に向いているブラームス晩年の作品だけに、ややもすると暗く枯れたイメージになりがちな曲であるが、まず遠藤さんのチェロの基本的に明快な音色と闊達な演奏スタイルが、冒頭から曲想を若返らせて行く。続く川久保さんのヴァイオリンの音色は、今日は一段と繊細かつ流麗な美しさを放っていた。さすがに三浦友理枝さんを含めたトリオでの活動が続いていることもあって、お二人の演奏は息がピッタリ合っている。というより、その場のアイコンタクトだけでなく、お互いの音をよく聴いているし、互いに信頼し合っているのが音楽を聴いているだけで伝わってくるようだ。おそらくこの曲は、互いに初共演になると思われるが、それでも絡み合うような協奏部分も、ユニゾンのアンサンブルも、お見事。今日は「合わせる」演奏をしているのがよく分かった。例によって重めになりがちな飯森さんの指揮も、この曲では二人のソリストのリズム感に引き寄せられる感じで、瑞々しい演奏になった。
美しいデュオを聴かせてくれた川久保賜紀さんと遠藤真理さん
後半はシューマンの「春」。4つの楽章を通して、弾むような躍動的なリズムに支配されていて、曲想のイメージから「春」と呼ばれる曲だ。第1楽章冒頭の金管のファンファーレが、例の古楽器の難しさで、ちょっと外してしまったのが残念だったが、後は概ね何とかこなして…。確かにトランペット、ホルン、トロンボーンの3種の金管楽器の音色が〈ぷぁん〉とした音で普段とは違っている。そこが何とも長閑な感じがして面白いのだが、やはり演奏は難しいようで、バルブがない訳だから音程が不安定になるのと、旋律の演奏時にリズムが狂いやすい。もう少し演奏の技術を…と言いたいところだが、それよりは大変素晴らしい試みを評価したいと思う。また木管楽器は普通に上手く演奏していたし、弦楽も問題なくアンサンブルをまとめていたので、演奏全体としてはなかなか良かったのではないだろうか。飯森さんの指揮も、さすがに弾むリズムはいつもよりは軽快だった。不思議なことに、飯森さんの指揮は、録音で聴くととても良いのに、ナマで聴くと何故かリズムが重々しい。他の指揮者ではあまり感じられないことなので、妙な特質を持っているのかも…。
普段の山形交響楽団は、本プログラムに全力を尽くすのでアンコールはしない主義だという。ところが今日はせっかくの古楽器が冒頭でヤッてしまったので、リベンジ(?)というわけで、特別なアンコールに、シューマンの交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」の第1楽章のファンファーレを。今度はうまくいった。現代の楽器よりも暖かみのある音が響き渡った。
山形交響楽団の東京公演は、終演後のサイン会や物産の売店などが賑わって楽しいのだが、今日はこの後もうひとつコンサートがあるので、早々に会場を抜け出さざるを得なかったのが、なんとも残念。
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