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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/17(木)N響Bプロ定期/ジンマン+グリモー/ブゾーニ、シェーンベルク、そしてブラームスP協奏曲2番…

2013年01月18日 18時47分03秒 | クラシックコンサート
NHK交響楽団 第1746回定期公演 Bプログラム

2013年1月17日(木)19:00~ サントリーホール B席 2階 LA4列 18番 4,667円(定期会員券)
指 揮: デーヴィッド・ジンマン
ピアノ: エレーヌ・グリモー*
管弦楽: NHK交響楽団
【曲目】
ブゾーニ: 悲しき子守歌~母の棺に寄せる男の子守歌 作品42
シェーンベルク: 浄められた夜 作品4
ブラームス: ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83*

 NHK交響楽団の今月のBプロ定期公演は、ちょっと変わったプログラム。あらかじめお断りしておくと、今日は体調不十分であったために、ずっとボンヤリして、何となく聴いていただけ。従ってここに書かれていることには、あまり自信がなく、少々怪しげである。

 1曲目は、フェルッチョ・ブゾーニ(1866~1924)の「悲しき子守歌~母の棺に寄せる男の子守歌」。もとはピアノ曲として完成していた「子守歌」を母親の死を受けて管弦楽用に編曲したものだという。1909年に完成し、1911年にマーラー指揮によるニューヨーク・フィルが初演している。
 管弦楽用の編曲とはいっても、少々編成が変わっている。フルート3、オーボエ1、クラリネット2、バス・クラリネット1、ホルン4、ゴング1、チェレスタ1、ハープ1。弦楽は、ヴァイオリン6、ヴィオラ6、チェロ6、コントラバス6。通常の第1ヴァイオリンの位置にヴァイオリン6名、対向位置にヴィオラ6名、その後ろがチェロ6名、コントラバス6名。椅子は並んでいるのに、第2ヴァイオリンの位置が全部空席であった。
 曲想は、元が子守歌だけに穏やかで優しさが感じられるが、そこに悲しみと不安といった負の要素が染み込むように加わる。揺りかごをゆっくり揺らすような穏やかに繰り返すリズムがベースになっていて、美しいのだけれども、不思議に響くハーモニーが特徴的だ。まったく初めて聴く曲なので、演奏が良いの悪いのと言っても仕方がないので、感じたままを述べておくと、40人に満たない編成の小さいN響の演奏は、どうしても弦楽の音量が小さめになる。弦楽だけの部分は、逆に少ないだけにとても美しいアンサンブルを聴かせていたが、管楽器が加わると弦楽が聞こえなくなってしまうような感じであった。もっともこれは、LAブロックで左側の真横で聴いていたので、よりそうした印象が強まったものと思う。

 2曲目はシェーンベルクの「浄められた夜」。作曲の時期的にも、後期ロマン派に属する音楽である。
 オーケストラの編成が変えられ、今度は弦楽合奏曲なので、14型くらいの弦楽5部(数えたわけではないのでちょっと怪しい)のみ。この曲は最近では、2011年7月に東京交響楽団の演奏で聴いた(指揮はユベール・スダーンさん、ゲスト・コンマスにライナー・キュッヒルさん)。東響よりも力強く厚い弦楽を持つN響の演奏はどうであろうか。
 印象としては、N響のアンサンブルの厚さ、ダイナミックレンジの広さが、ナイーブな印象よりも熱情的な感性を呼び起こすような気がした。濃厚なアンサンブルが、葛藤を激しく描き、やがて美しく浄化されていく心理のイメージが美しく描かれていく。デーヴィッド・ジンマンさんはなかなか濃厚な描き方であり、深い情念の葛藤が感じられる前半から、「浄められ」ていく後半の無色透明な描き方に変化していくのが素晴らしい。ただし、2階のLA4列だと、ヴァイオリン、ヴィオラ、そしてチェロのソロの部分の存在感が薄れてしまい、その点は残念であった。

 後半はブラームスのピアノ協奏曲第2番。これも変わっていて、協奏曲がメイン曲である。ゲスト・ソリストのエレーヌ・グリモーさんは、ちょうど2年前の2011年1月17日に、同じここサントリーホールでリサイタルを聴いた。しかも席も同じような2階のLAブロックで、背中側からであった。その日の演奏はNHK-BSで後日テレビ放送されたので、ご覧になった方も多いだろう。
 さて今日は念願叶っての協奏曲である。しかし残念なことにあまり得意ではないブラームスの2番…。50分近い大曲であり、4つの楽章を持つために、交響曲にピアノが加えられたような様相の曲だ。派手な技巧的なピアノ独奏にオーケストラの伴奏が付くという、古典派からロマン派の一般的な協奏曲の形式とはやや異なり、独奏ピアノとオーケストラが有機的な融合を遂げ、より高度に進化した協奏曲の形態と考えることができる。…というわけで、音楽的には素晴らしい曲であることは分かってはいるのだが、一般的な派手な協奏曲が好きな私にとっては、やや苦手に感じるのである。
 第1楽章は、曲が始まるとすぐにピアノが入ってくる。リサイタルの時も感じたが、独特の重低音の響きだ。グリモーさんは左利きらしく、低音部に独特の力感がある。主題提示部から、オーケストラ側のシンフォニックな演奏にも力が入っているようだ。巨匠ジンマンさんの音楽作りはスタンダードだが、揺るぎない構造感を打ち出し、全体がキリリと引き締まった演奏で、各パートのバランス感覚にも優れた指揮ぶりである。その上に乗る形になるピアノは、重厚な低音部から歪みのない高音部まで、派手さはないものの、安定した構造感とちょっとくすんだ感じの渋めな音色が素敵だ。伴奏に回ったときの分散和音などにも、さりげなく主張が込められているような存在感があった。古典的でありロマン的であるブラームスにふさわしい描き方だ。
 第2楽章は交響曲でいえばスケルツォ楽章に相当する。といっても諧謔的な要素はほとんどなく、葛藤と不安が錯綜するような曲想である。ここでもやや渋めのピアノの音色が、シンフォニックなオーケストラと共に、重量感のある音楽を作っていた。
 第3楽章は緩徐楽章であり、1階席からではピアノの陰に隠れて見えないであろうチェロの独奏から始まる(今日はLAブロックなのでよく見えた)。非常に美しく叙情的な旋律の主題が弦楽と木管で綴られていく。ピアノもロマンティックな旋律をなぞり、長調に転じた分だけ明るさを増した感じがする。低音部の金属的で重厚な音色と、高音部の重音・和音の感傷的な美しさの対比が鮮やかであった。また、木越 洋さんの独奏チェロの明るめで優しい音色も印象的であった。
 間を置かずに第4楽章に入った。軽快で弾むようなピアノのロンド主題から始まる。渋さを残したグリモーさんのピアノが音楽に深みを与えているようだ。抒情的な第2主題はオーケストラが流れるような演奏で対比的に描かれていた。ロンドが進むにつれてピアノオーケストラが渾然一体となっていき、有機的に絡み合っていく。グリモーさんのピアノは非常にリズム感良く、オーケストラとのアンサンブルを構築していたし、主題を演奏する場面になると、ぐっとせり上がるようにして存在感が浮き上がって来るような印象であった。

 グリモーさんのピアノは、全体的には印象的な重低音と、渋めの音色が特徴的であると同時に、演奏自体が非常に冷静で理知的な印象である。曲がブラームスということもあるが、終始内省的で抑え気味の演奏の中に、楽曲の持つ本質的なロマンティシズムを浮き上がらせることに成功していた。大人のエレガンスを感じさせる演奏であった。

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