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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

8/2(月)清水和音~3大ピアノ協奏曲に挑む/ベートーヴェン3番・リスト1番・ラフマニノフ3番

2010年08月08日 01時38分07秒 | クラシックコンサート
東京文化会館《響きの森》Vol.28 清水和音 3大ピアノコンチェルトに挑む

2010年8月2日(月)19:00~ 東京文化会館・大ホール S席 1階 11列 31番 6,000円
ピアノ: 清水和音
指 揮: 大友直人
管弦楽: 東京都交響楽団
【曲目】
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
リスト: ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30

 東京文化会館《響きの森》シリーズの第28回は、ピアニストの清水和音さんによる3大協奏曲の演奏会。3大コンチェルトというわりには、それほどメジャーじゃない曲を3曲集めた感がしないでもないが、要は通好みの3曲ということだろうか。3大コンチェルトというなら、ベートーヴェン「皇帝」、チャイコフスキー1番、そしてラフマニノフ2番の3曲がふさわしいが、いくらなんでもこの3曲はムリか…。

 さてコンサートの1曲目。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番は私も好きな曲だ。古典的な造形の美しさとロマン的な萌芽がほどよくバランスされ、叙情的旋律が親しみやすい名曲である。今日の演奏で第一に感じたのは、清水さんのピアノ以前に、オーケストラの編成が大きいこと。もちろん2管編成ではあるが弦5部が多く、後半のラフマニノフと基本的に同じ編成。そして指揮の大友直人さんの曲作りは堂々たるシンフォニックなものだった。この曲はベートーヴェンが33歳の頃、1803年に交響曲第2番とともに初演されているので、時代的な背景から見て、もう少しコンパクトに演奏される方が、曲の本質に迫りやすいような気がする。ピアノの清水さんも打鍵が強く、ガンガン弾くタイプだから、曲全体が重々しくなってしまった。悪い演奏という意味ではないのだが、20世紀的というか、古楽奏法などを聴く機会が増えた現在では、どうしても大時代的な印象が拭えなかった。

 2曲目はリストのピアノ協奏曲第1番。ベートーヴェンの3番からおよそ半世紀後の作品である。交響詩を生み出したといわれるリストだけあって、オーケストラのパートが交響曲のように充実している側面があるとともに、超絶技巧的な華麗なピアノ独奏と、甘美なロマンティシズム溢れる旋律が美しい曲である。清水さんのピアノは、基本的にこの曲に合っているというべきか、第1楽章の力強いタッチと豪快な弾きっぷりなどは、水を得た魚のよう。ベートーヴェンに比べて、輝きを放っていた。一方で第2楽章の叙情的な主題などは、やや繊細さに書けるような…(失礼)。全体としては、高度な技巧も存分に発揮でき、パッションが溢れ、怒濤の推進力があったりと、清水さんの魅力を十分に発揮した良い演奏だったと思う。

 休憩を挟んでの後半はラフマニノフの3番。リストからさらに半世紀以上を経た20世紀に入っての作品。今から丁度100年前の曲だ。第1楽章の始まりから最終楽章まで、ロマンティックな美しい主題と展開に高度な技巧が要求されるピアノが複雑に絡み合った名曲である。作曲者自身がピアノのヴィルトゥオートソであっただけに、どうしても派手なカデンツァに目を(耳を)奪われがちになってしまうが、ピアノのみならず、オーケストラ・パートを含めて、緩徐楽章や弱音部に繊細な表現力が求められ、それこそがラフマニノフの本質的な魅力だと思う。一方で、ラフマニノフの持つ大河の流れのような、雄大でありながら憂愁に彩られた大きな旋律をピアノとオーケストラがまさに協奏的に(競奏的ではなく)融合した演奏をしなければならない。今日の清水さんのピアノは、ダイナミック・レンジが広く、非常に懐の深い厚みのある表現力を持っていた。豪壮・雄大であるかと思えば、流れるような華麗さを持ち、時には繊細・優美でさえある。ラフマニノフにはピッタリと言いたいところだったが、欲を言わせていただくならば、もっとロマンティックに、ねっとりと、クネクネと…弾いて欲しかった(個人的な好みです。スイマセン)。今日の演奏は、やはりピアノが主役だったので、清水さんは良かったが、オーケストラが重々しくなってしまっていたため、全体としては不完全燃焼気味だったようだ。

 ピアニストの方にとっては、1夜に3曲の本格的なピアノ協奏曲を弾くというのは、体力的にも精神的にも大変なことなのだと思う。集中や緊張を続けることもさることながら、曲によってアタマを切り替えなければならない。よくできるもんだ、と感心してしまう。清水和音さん、お見事としか言いようがない。
 一方、今日の都響は、いつもより精彩を欠いていたような気がする。弦の音色にもほんのわずかな濁りを感じたし、アンサンブルのキレが良くなかった(乱れていたという意味ではなく、リズム感が悪かったような…)。もちろん協奏曲3曲なので、オーケストラがそれほど前面に出てくることはないわけだが、いずれにしても、どの曲も演奏がまったりしていてキレが悪い印象だった。指揮者の大友さんは、あまり個性を発揮せずにサラリとまとめる傾向があるので、都響の演奏にも影響が出ていたのかもしれない。

 大変不遜な言い方になってしまうかもしれないので、あらかじめお断りしておきたいのだが、今日の「清水和音 3大ピアノ・コンチェルトに挑む」は、芸術的な意味での感動…というよりは、とても楽しいコンサートだった。

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