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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/9(日)N響オーチャード定期/代役アルミンク+オルガ・ケルンの豪快なラフマニノフP協奏曲2番

2014年11月11日 00時36分34秒 | クラシックコンサート
NHK交響楽団 第81回 オーチャード定期

2014年11月9日(日)15:30~ Bunkamuraオーチャードホール S席 1階 6列 18番 6,000円
指 揮: レナード・スラットキン → クリスティアン・アルミンク
ピアノ: オルガ・ケルン*
管弦楽: NHK交響楽団
【曲目】
ウェーバー: 歌劇『オベロン』序曲
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18*
《アンコール》
 リムスキー=コルサコフ/ラフマニノフ編: くまんばちの飛行*
ブラームス: 交響曲 第4番 ホ短調 作品98
《アンコール》
 ウォルトン:『弦楽のための2つの小品』から「彼女の唇に触れて別れなん」

 NHK交響楽団のオーチャード定期(第81回)を聴く。このシリーズでは、ステージ拡張のため1~5列目までがない。従って6列が最前列となり、私の席はちょうど真ん中、指揮者の真後ろというポジションとなる。オーチャードホールはステージが高いので、普通に腰掛けた状態ではステージ面が見えない。しかもこのホール、ステージ上の天井がかなり高いので、音が上に向かって広がってしまうようである。つまり最前列は、演奏を聴く上ではあまり良いポジションとはいえないのである。とくにピアノ協奏曲の時は目の前に巨大なピアノが覆い被さるように置いてあるため、チェロの1列目や木管セクションなどはピアノの下から抜けて見えるような位置。これでは音が飛んでくるはずもない。とはいえ、好きこのんで取った年間会員席なので、文句を言えるような筋合いではないのだが・・・・・。
 
 さて今日のオーチャード定期では、予定されていた指揮者のレナード・スラットキンさんが健康上の理由で来日できなくなったために、クリスティアン・アルミンクさんが急遽代役となった。昨年2013年まで新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務めていたのでお馴染みであるし、聴く機会も多かった。プロフィールにも書かれていないところを見ると、N響を振るのは初めてなのかもしれない。今回の代役では、ピアノのオルガ・ケルンさんとともに翌日の大阪公演との2回公演である。

 1曲目はウェーバーの歌劇『オベロン』序曲。登場したアルミンクさんは、スラリとして相変わらずの貴公子ぶりだが、N響には受け入れてもらえるだろうか。序奏のホルンが森に谺する狩人の角笛のよう・・・・。ドイツ・ロマン派の黎明期、いかにもウェーバーだなァと思わせるロマンティシズム溢れる曲である。N響としては、これくらいのことは当然、といったレベルの演奏で、ホルンも巧いし、美しい弦楽アンサンブルと木管群の自然さが合わさって、アルミンクさん、上々の滑り出しである。

 続いて、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。ゲスト・ソリストのオルガ・ケルンさんは、初めて聴くことになるが、1975年生まれというから39歳。今が働き盛りのピアニストだ。モスクワ音楽院とイモラ音楽院(イタリア)などで学び、1993年の第1回ラフマニノフ国際ピアノ・コンクール優勝、2000年浜松国際ピアノ・コンクール第3位、2001年ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール第1位などの受賞歴がある。スラリと背が高く、ヒールのせいもあってか長身のアルミンクさんよりも高いくらい。スレンダーなモデル体型の美人で、手も大きい。
 演奏の方はというと、やはりロシア系の豪快・骨太なもので、力強くピアノを鳴らす。第1楽章冒頭の「鐘の音」からかなりの音量を出して来たが、主部で弦楽が堂々たる主題を提示する部分でも、分散和音がかなり強烈に出てくる。もっとも私の席はピアノの真下なのでやむを得ないのではあるが、ほとんどピアノの音しか聞こえないくらいの押し出しであった。やがてピアノが主旋律を受け持つ第2主題などでは剛直なながらも抒情性を描き出してくる。ほぼインテンポに近く、余分な感傷に浸っているようなところのない、ガッチリとした佇まいの演奏だ。音質も硬質で力強いイメージである。
 第2楽章は、オーボエやクラリネットが吹く主題に対して、ピアノの分散和音が大きく聞こえてしまい、やや興醒めといったところ。やはり最前列であることがかなりのマイナス要因になってしまっている。ピアノとオーケストラの音量バランスが悪すぎて・・・・。しかし聴いていると、ケルンさんのピアノは音の粒立ちが揃ってはない。どこかバラバラした感じがつきまとう。それがインテンポの流れの中でみると、音楽的な造形ができている感じがするので面白い。
 第3楽章は、テンポを上げて、技巧的なイメージが強く出てくる。経過的なパッセージなどを速いテンポで駆け抜ける辺りは意図的に技巧的な弾き方をして、後に続く感傷的な主題を大きく歌わせ、ロマンティックな効果を上げていた。終盤、ピアノに美しい主題が表れるところでは、テンポをぐっと落とし、弱音を上手く使って、抒情性たっぷりの描き方になった。この楽章はテンポの揺れ幅が大きく、それが緊張感を高めていく。コーダではかなりテンポを落として壮大なクライマックスを作り、アッチェレランドを効かせて駆け抜けるようにフィニッシュ。劇的な盛り上げ方も上手い。けっこう計算し尽くした演奏だったのかも・・・・。
 ケルンさんのソロ・アンコールは、リムスキー=コルサコフ/ラフマニノフ編の「くまんばちの飛行」。超高速の超絶技巧が目まぐるしく駆け巡る。やっぱり、ケルンさんは超絶技巧派のピアニストであった。

 後半は、ブラームスの「交響曲 第4番」。本当にただの偶然だが、昨日、ブラームスの交響曲第1番を聴いたばかりなので、またブラームスか・・・・といった気分になってしまう。
 目の前からピアノがなくなれば、N響の美しいサウンドを遮るものはない。ステージが高いので、管楽器のセクションはほとんど見えないが、弦楽奏者の後ろ側からちゃんと聞こえてくるだけで、まあ、普通に満足できるレベルだ。
 演奏の方はというと、ちょっとよく分からないところがあった。アルミンクさんのウィーン風の優雅な指揮ぶりだと、アンサンブルの縦の線が緩くなりがちで、それがまろやかさを生み出しているんだ、と言われれば確かにその通りなのだろうが、一方でキレが良くないのも確か。さてどちらが良いのだろう。枯淡の境地の第4番なら、この方が良いようにも思えるが、アルミンクさんの指揮が老成しているというイメージもないので、何とも混沌として判断がつかないのであった。
 第1楽章は、そんなもやもや感が最後まで続く演奏だった。
 第2楽章は、冒頭のホルンから質感の高い音色を聴かせ、続く木管のアンサンブルも素敵だ。弦楽がピツィカートを刻んでいるので、ここではアンサンブルの甘さがなくなる。そうなると、総合力で隙のないN響の良さが出てくる。後半は第1楽章のような混沌とした感じがなくなって、美しく澄んだ音色を聴かせてくれた。
 第3楽章は・・・・なんとも特徴の感じられない演奏、のような気がした。リズム感が曖昧な印象で、とくにティンパニが入ると、遅れて聞こえるため(聴いている席との距離感の問題だろう)、どうもバラケた感じになってしまっていた。
 第4楽章のパッサカリアは、その古典的(バロック的)な構造ゆえに、各変奏によって印象が異なる。どうも最後まで、曖昧な印象と、シャープさに欠ける演奏のようであった。ブラームスの4番の解釈としては決して的を外しているとは思えないが、かといって、締まりがないのもいただけない。結局は・・・・この演奏で何が言いたかったのだろう・・・・・??

アンコールは、ウォルトンの『弦楽のための2つの小品』から「彼女の唇に触れて別れなん」。美しい弦楽合奏の曲であったが、また珍しい曲を持ってきたものだ。もとは映画音楽で「ヘンリー5世」のための音楽から作曲者自身が編曲したものらしい。N響の弦楽は美しいが、管楽器の人たちが手持ち無沙汰な様子で・・・・。

 今回のN響オーチャード定期は、指揮者交代というハプニングもあったからであろうか、なんとなくだが、まとまりを欠いていたような印象が残ってしまった。ケルンさんのガンガン振ってくるピアノの音だけが耳の中に残っている。

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