
第59回 NHKニューイヤーオペラコンサート 2016
ライフ・イズ・ビューティフル ~いのちの輝き~
2016年1月3日(土)17:00~ NHKホール B席 3階 L2列 19番 5,000円
指 揮:山田和樹
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱:新国立劇場合唱団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部
ソプラノ:安藤芙美子、小川里美、佐藤康子、砂川涼子、中嶋彰子、森 麻季、嘉目真木子
メゾ・ソプラノ:加藤のぞみ、加納悦子、清水華澄、林 美智子
カウンター・テナー:藤木大地
テノール:櫻田 亮、西村悟、福井 敬、村上敏明、望月哲也、与儀 巧
バリトン:上江隼人、久保和範、黒田 博、高田智宏
バ ス:妻屋秀和
《特別ゲスト》
オルガン:鈴木優人
フルート:上野星矢
舞踊:首藤康之、中村恩恵、UNIT KIMIHO
《司会》
石丸幹二、高橋美鈴アナウンサー
【曲目】
ヴェルディ:歌劇『ドン・カルロ』から「今日は幸せの日、喜びの日」(合唱)
プッチーニ:歌劇『トスカ』から「妙なる調和」(福井 敬)
プッチーニ:歌劇『トスカ』から「歌に生き、愛に生き」(佐藤康子)
ヴェルディ:歌劇『椿姫』から「思い出の日から」(安藤芙美子、西村 悟)
オッフェンバック:歌劇『ホフマン物語』から舟歌「美しい夜、恋の夜」(加藤のぞみ、嘉目真木子)
ビゼー:歌劇『真珠採り』から「神殿の奥深く」(与儀 巧、上江隼人)
ヴェルディ:歌劇『ドン・カルロ』から「むごい運命よ」(清水華澄)
ジョルダーノ:歌劇『アンドレア・シェニエ』から「五月の晴れた日りように」(村上敏明)
ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』から五重唱「バジーリオが~おやすみなさい、だんな様」(林 美智子、黒田 博、櫻田 亮、久保和範、妻屋秀和、石丸幹二)
ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』から六重唱「愛はとこしえに」(林 美智子、黒田 博、櫻田 亮、久保和範、妻屋秀和、藤井直美、石丸幹二)
パイプオルガン即興演奏(鈴木優人)
フィリップ・グラス:歌劇『サティアグラハ』から「Glass(新作)」(鈴木優人、首藤康之、中村恩恵)
グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』から「精霊の踊り」(鈴木優人、上野星矢)
グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』から「エウリディーチェを失って」(鈴木優人、藤木大地)
レハール:喜歌劇『メリー・ウィドウ』から「女・女・女のマーチ」(男声歌手全員、男声合唱)
グノー:歌劇『ロメオとジュリエット』から「私は夢に生きたい」(森 麻季)
ベルリオーズ:歌劇『ベアトリスとベネディクト』から「おいて 結婚に身をささげる幸福な娘よ」(合唱)
ヴェルディ:歌劇『マクベス』から「日の光が薄らいで」(小川里美)
ヴェルディ:歌劇『オテロ』から「アヴェ・マリア」(砂川涼子)
モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から酒の歌「みんな楽しくお酒を飲んで」(高田智宏)
モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から「お手をどうぞ」(高田智宏、嘉目真木子)
モーツァルト:歌劇『コシ・ファン・トゥッテ』から「恋のいぶきは」(望月哲也)
モーツァルト:歌劇『後宮からの誘拐』から「太守セリム様 とこしえに」(合唱)
モンテヴェルディ:歌劇『ポッペアの戴冠』から「侮蔑された王妃」(加納悦子)
レハール:喜歌劇『ロシアの皇太子』から「誰かがきっと現れる」(中島彰子、UNIT KIMIHO)
ヨハン・シュトラウスII:喜歌劇『こうもり』から「ぶどう酒の燃える流れに」(出演者全員、合唱)
毎年、「コンサート初め」は1月3日の「NHKニューイヤーオペラコンサート」。テレビとFMで生中継放送をしているのだから、わざわざお正月の渋谷まで出かけて行かなくても良さそうなものだ。家でなら、コタツに入ってミカンを食べながら、オペラ・アリアの名曲を聴くことができるのに。ところがどうしたわけか毎年NHKホールに足を運んでしまう。毎年似たような内容なのに、習慣というのは恐ろしいもので、これを聴くことで華やかな年明けを実感することができるのである。
とはいえ例年、どういうわけか1階の前の方の席が取れず、今年も例年通り、3階のバルコニー席のL2列へ。ここだとステージ全体が見通せるし、ピットの中まで見えるので、オーケストラの音も良く聞こえる。ただ、やはり巨大なNHKホール。ちょっと遠い・・・・。高倍率のオペラグラスを使っても、ステージ上の歌手は立った状態でも全身が視野に入ってしまうくらいの距離感である。まあ、歌手の皆さんのアップは、家に帰ってから録画で観ることにしよう。
会場の3500人よりもテレビで観た方の方が圧倒的に多いはずなので、演奏や歌唱についての感想を今さら言っても始まらないと思う。今回は、気がついたことだけに留めることにしよう。
まず全体についてだが、テレビの録画を見る限り、歌手の皆さんの声は良く入っていた。どうやって音を拾っているのかは分からないが、オーケストラや合唱とのバランスも含めて、見事にミキシングされている。ところが、会場のNHKホールの3階席に着いてみれば誰しも感じると思うのだが、ホールの広大な空間(何しろ3500名も入るのだから)に、いかにオペラ歌手が声量があるといっても、声を響き渡らせることはできそうもないと、思えるのである。ところが、歌手の皆さんの声は素晴らしく、届いてくるのだ。もとより放送用に多チャンネルでマイクが用意されているので、何か仕掛けがあるのではないかと、つい疑ってしまうのである。ハープの音がやけにはっきり聞こえたりして・・・・。今回何となく気がついたのは、ステージ中央の定位置で動かずに歌う人は、声量たっぷりに声が飛んできていた。だから『セビリアの理髪師』のように舞台装置と演技付きでの歌唱になると、かなりバランスが崩れていたように感じられたのである。
指揮の山田和樹さんは、何とピットの中で振るのは初めてだそうだが、例のしなやかな音楽作りで、歌手を歌わせつつ、ダイナミック・レンジの広いドラマティックなオーケストラ・ドライブを聴かせていた。応える東京フィルハーモニー交響楽団も、濃厚で豊潤な響きを聴かせていて素晴らしい。
歌手の皆さんの内、とくに印象に残ったのは、まず、福井 敬さんの「妙なる調和」。内面に入り込んだ絶唱は存在感抜群である。安藤芙美子さんのヴィオレッタは、美しい容姿も手伝って、ぜひオペラの舞台で聴いてみたいと思った。清水華澄さんの「むごい運命よ」は圧倒的な迫力で、豊かな声量と表現力で群を抜いていた。舞台装置付きで5重唱と6重唱を演技しながら楽しく歌った『セビリアの理髪師』は、会場では林美智子さんの声が聴き取りにくかったのが残念(テレビでは聞こえていた)。皆さんオペラの経験も豊富な方たちなので、実に芸達者。豊かな表情の演技はテレビ向けを意識したものだろうか。6重唱「愛はとこしえに」に登場した藤井直美さんは、プログラムにも載っていなかったので可哀想。6重唱の中でもソプラノがよく通っていた。
「私は夢に生きたい」を歌った森 麻季さんは、相変わらず美しい声と素晴らしいコロラトゥーラのテクニック。歌っているときの表情も常に笑顔を絶やさず、いつになっても(失礼)可憐である。「日の光が薄らいで」を歌った小川里美さんは、鬼気迫る歌唱で、低音域も多くかなり難しそうな曲を見事に歌い上げた。スラリとした立ち姿もとても美しい。「侮蔑された王妃」の加納悦子さんは、安定的な上手さを見せるが、曲がちょっと地味であった。中島彰子さんの「誰かがきっと現れる」は堂々樽存在感で貫禄を見せた。
毎年来ている「ニューイヤーオペラコンサート」だが、NHKの典型的なパターンで、マンネリ化が進んでいると思う。毎年必ず行うというルーティーン・ワークが新鮮さを失わせてしまっているようだ。「紅白歌合戦」「朝の連続テレビ小説」「大河ドラマ」・・・・。思い切った改革もできず、前年同様に、テーマを変えて・・・・。59回もやっていると仕方がないのかなぁ。まあ、私も毎年そこそこ楽しんでいるので、文句を言えた筋合いではないのだが・・・・。
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ライフ・イズ・ビューティフル ~いのちの輝き~
2016年1月3日(土)17:00~ NHKホール B席 3階 L2列 19番 5,000円
指 揮:山田和樹
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱:新国立劇場合唱団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部
ソプラノ:安藤芙美子、小川里美、佐藤康子、砂川涼子、中嶋彰子、森 麻季、嘉目真木子
メゾ・ソプラノ:加藤のぞみ、加納悦子、清水華澄、林 美智子
カウンター・テナー:藤木大地
テノール:櫻田 亮、西村悟、福井 敬、村上敏明、望月哲也、与儀 巧
バリトン:上江隼人、久保和範、黒田 博、高田智宏
バ ス:妻屋秀和
《特別ゲスト》
オルガン:鈴木優人
フルート:上野星矢
舞踊:首藤康之、中村恩恵、UNIT KIMIHO
《司会》
石丸幹二、高橋美鈴アナウンサー
【曲目】
ヴェルディ:歌劇『ドン・カルロ』から「今日は幸せの日、喜びの日」(合唱)
プッチーニ:歌劇『トスカ』から「妙なる調和」(福井 敬)
プッチーニ:歌劇『トスカ』から「歌に生き、愛に生き」(佐藤康子)
ヴェルディ:歌劇『椿姫』から「思い出の日から」(安藤芙美子、西村 悟)
オッフェンバック:歌劇『ホフマン物語』から舟歌「美しい夜、恋の夜」(加藤のぞみ、嘉目真木子)
ビゼー:歌劇『真珠採り』から「神殿の奥深く」(与儀 巧、上江隼人)
ヴェルディ:歌劇『ドン・カルロ』から「むごい運命よ」(清水華澄)
ジョルダーノ:歌劇『アンドレア・シェニエ』から「五月の晴れた日りように」(村上敏明)
ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』から五重唱「バジーリオが~おやすみなさい、だんな様」(林 美智子、黒田 博、櫻田 亮、久保和範、妻屋秀和、石丸幹二)
ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』から六重唱「愛はとこしえに」(林 美智子、黒田 博、櫻田 亮、久保和範、妻屋秀和、藤井直美、石丸幹二)
パイプオルガン即興演奏(鈴木優人)
フィリップ・グラス:歌劇『サティアグラハ』から「Glass(新作)」(鈴木優人、首藤康之、中村恩恵)
グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』から「精霊の踊り」(鈴木優人、上野星矢)
グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』から「エウリディーチェを失って」(鈴木優人、藤木大地)
レハール:喜歌劇『メリー・ウィドウ』から「女・女・女のマーチ」(男声歌手全員、男声合唱)
グノー:歌劇『ロメオとジュリエット』から「私は夢に生きたい」(森 麻季)
ベルリオーズ:歌劇『ベアトリスとベネディクト』から「おいて 結婚に身をささげる幸福な娘よ」(合唱)
ヴェルディ:歌劇『マクベス』から「日の光が薄らいで」(小川里美)
ヴェルディ:歌劇『オテロ』から「アヴェ・マリア」(砂川涼子)
モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から酒の歌「みんな楽しくお酒を飲んで」(高田智宏)
モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から「お手をどうぞ」(高田智宏、嘉目真木子)
モーツァルト:歌劇『コシ・ファン・トゥッテ』から「恋のいぶきは」(望月哲也)
モーツァルト:歌劇『後宮からの誘拐』から「太守セリム様 とこしえに」(合唱)
モンテヴェルディ:歌劇『ポッペアの戴冠』から「侮蔑された王妃」(加納悦子)
レハール:喜歌劇『ロシアの皇太子』から「誰かがきっと現れる」(中島彰子、UNIT KIMIHO)
ヨハン・シュトラウスII:喜歌劇『こうもり』から「ぶどう酒の燃える流れに」(出演者全員、合唱)
毎年、「コンサート初め」は1月3日の「NHKニューイヤーオペラコンサート」。テレビとFMで生中継放送をしているのだから、わざわざお正月の渋谷まで出かけて行かなくても良さそうなものだ。家でなら、コタツに入ってミカンを食べながら、オペラ・アリアの名曲を聴くことができるのに。ところがどうしたわけか毎年NHKホールに足を運んでしまう。毎年似たような内容なのに、習慣というのは恐ろしいもので、これを聴くことで華やかな年明けを実感することができるのである。
とはいえ例年、どういうわけか1階の前の方の席が取れず、今年も例年通り、3階のバルコニー席のL2列へ。ここだとステージ全体が見通せるし、ピットの中まで見えるので、オーケストラの音も良く聞こえる。ただ、やはり巨大なNHKホール。ちょっと遠い・・・・。高倍率のオペラグラスを使っても、ステージ上の歌手は立った状態でも全身が視野に入ってしまうくらいの距離感である。まあ、歌手の皆さんのアップは、家に帰ってから録画で観ることにしよう。
会場の3500人よりもテレビで観た方の方が圧倒的に多いはずなので、演奏や歌唱についての感想を今さら言っても始まらないと思う。今回は、気がついたことだけに留めることにしよう。
まず全体についてだが、テレビの録画を見る限り、歌手の皆さんの声は良く入っていた。どうやって音を拾っているのかは分からないが、オーケストラや合唱とのバランスも含めて、見事にミキシングされている。ところが、会場のNHKホールの3階席に着いてみれば誰しも感じると思うのだが、ホールの広大な空間(何しろ3500名も入るのだから)に、いかにオペラ歌手が声量があるといっても、声を響き渡らせることはできそうもないと、思えるのである。ところが、歌手の皆さんの声は素晴らしく、届いてくるのだ。もとより放送用に多チャンネルでマイクが用意されているので、何か仕掛けがあるのではないかと、つい疑ってしまうのである。ハープの音がやけにはっきり聞こえたりして・・・・。今回何となく気がついたのは、ステージ中央の定位置で動かずに歌う人は、声量たっぷりに声が飛んできていた。だから『セビリアの理髪師』のように舞台装置と演技付きでの歌唱になると、かなりバランスが崩れていたように感じられたのである。
指揮の山田和樹さんは、何とピットの中で振るのは初めてだそうだが、例のしなやかな音楽作りで、歌手を歌わせつつ、ダイナミック・レンジの広いドラマティックなオーケストラ・ドライブを聴かせていた。応える東京フィルハーモニー交響楽団も、濃厚で豊潤な響きを聴かせていて素晴らしい。
歌手の皆さんの内、とくに印象に残ったのは、まず、福井 敬さんの「妙なる調和」。内面に入り込んだ絶唱は存在感抜群である。安藤芙美子さんのヴィオレッタは、美しい容姿も手伝って、ぜひオペラの舞台で聴いてみたいと思った。清水華澄さんの「むごい運命よ」は圧倒的な迫力で、豊かな声量と表現力で群を抜いていた。舞台装置付きで5重唱と6重唱を演技しながら楽しく歌った『セビリアの理髪師』は、会場では林美智子さんの声が聴き取りにくかったのが残念(テレビでは聞こえていた)。皆さんオペラの経験も豊富な方たちなので、実に芸達者。豊かな表情の演技はテレビ向けを意識したものだろうか。6重唱「愛はとこしえに」に登場した藤井直美さんは、プログラムにも載っていなかったので可哀想。6重唱の中でもソプラノがよく通っていた。
「私は夢に生きたい」を歌った森 麻季さんは、相変わらず美しい声と素晴らしいコロラトゥーラのテクニック。歌っているときの表情も常に笑顔を絶やさず、いつになっても(失礼)可憐である。「日の光が薄らいで」を歌った小川里美さんは、鬼気迫る歌唱で、低音域も多くかなり難しそうな曲を見事に歌い上げた。スラリとした立ち姿もとても美しい。「侮蔑された王妃」の加納悦子さんは、安定的な上手さを見せるが、曲がちょっと地味であった。中島彰子さんの「誰かがきっと現れる」は堂々樽存在感で貫禄を見せた。
毎年来ている「ニューイヤーオペラコンサート」だが、NHKの典型的なパターンで、マンネリ化が進んでいると思う。毎年必ず行うというルーティーン・ワークが新鮮さを失わせてしまっているようだ。「紅白歌合戦」「朝の連続テレビ小説」「大河ドラマ」・・・・。思い切った改革もできず、前年同様に、テーマを変えて・・・・。59回もやっていると仕方がないのかなぁ。まあ、私も毎年そこそこ楽しんでいるので、文句を言えた筋合いではないのだが・・・・。
