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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/7(月)都民劇場/シドニー交響楽団/アシュケナージ+庄司紗矢香のベートーヴェンとブラームス

2011年11月10日 01時06分51秒 | クラシックコンサート
都民劇場・音楽サークル 第593回定期公演 シドニー交響楽団
593 TOMINGEKIJO MUSIC CIRCLE ● REGULER CONCERT SYDNEY SYMPHONY


2011年11月7日(月)19:00~ 東京文化会館・大ホール A席 1階 1列 14番 14,000円
指 揮: ウラディーミル・アシュケナージ
ヴァイオリン: 庄司紗矢香
管弦楽: シドニー交響楽団
【曲目】
ベートーヴェン: 「プロメテウスの創造物」序曲 作品43
ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ブラームス: 交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 シドニー交響楽団の来日公演は、1965年、1996年、2006年に続いて4度目のツアーであり、今回は今日11月7日を初日に4都市で合わせて6公演を行う。指揮するのは2009年から主席指揮者を務めるウラディーミル・アシュケナージさん。同行するソリストは、ヴァイオリンの庄司紗矢香さんとピアノのエフゲニー・キーシンさん。プログラムは、庄司さんがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、キーシンさんがショパンのピアノ協奏曲第1番とグリーグのピアノ協奏曲のソリストを務めるほか、ラフマニノフの交響曲第2番とブラームスの交響曲第1番が、序曲としてベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲が用意され、各公演ではこれらの曲の組み合わせでプログラムが組まれている。今日の公演は都民劇場の主催公演になっている。また11月10日の公演はNHK音楽祭に組み込まれている、といった具合だ。
 シドニー交響楽団を聴くのは実は初めて。CD等の録音物でも、おそらく聴いたことがないと思う。従って、まったくイメージが湧いてこないオーケストラだ。今回も庄司さんのベートーヴェンがあるから聴きに行くことにしたくらいである。ところがチケットの値段が意外に高いのでビックリ。あまり値段のことは言いたくないのだが、例えば今年のNHK音楽祭に登場する5つのオーケストラの中でも一番高い。SS席で比較すると、シドニー交響楽団/23,000円、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団&パリ管弦楽団/20,000円、ベルリン放送交響楽団/12,000円、NHK交響楽団/10,000円、である。キーシンさんのギャラの関係もあるだろうが、ベルリン放送響の2倍というのも…。そして庄司さんがゲストの今日の都民劇場ではS席は17,000円。ちなみに同じ庄司さんがソリストとして出演した11月1日のサンクトペテルブルグ・フィルの公演は、S席は16,000円…。

 珍しくもなぜ値段のことをクドクドと述べたのかというと、実は演奏がつまらなかったからなのである。私はそもそも演奏会においてNGを出すことはほとんどなく、いつもそれなりに楽しむようにしているので、あまり否定的な意見を持つことはないのだが…。あくまで個人的な感想だということが前提の話だが、今日のシドニー交響楽団の演奏はとても退屈で、正直言うとずっと眠いのを我慢していたくらい。さすがに金を返せとまでは言わないが、値段の割には×××な演奏だったので、久々のブーイングである。

 聴きおわっての印象が良くないと、そういえば、と思い当たるフシが始めからあった。開演前、普通のオーケストラと違ってステージでいろいろな演奏チェックをしている人が少ない。チェロなどは楽器が置きっぱなしで誰もいない。チェロの2番手の人などはチューニング直前にあわてて出てくる様子…。ツアー初日にしては緊張感が感じられず、どこか観光気分っぽい。アシュケナージさんはどこかおどけた様子で登場するし…。先日のベルリン放送響の人たちとは真剣味がぜんぜん違うように感じられた

 1曲目は「プロメテウスの創造物」序曲。演奏が始まれば少しは引き締まるかと思いきや、アシュケナージさんの音楽そのものがまったりとして重く(これは予想していた通りだったが)、案の定、弦楽のアンサンブルなどもピタリとは合っていない。音楽にキレが感じられないので、最初から、おやマァ、という感じだった。

 2曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。そうなると庄司さんに期待がかかってくる。だがこの曲、第1楽章の提示部が長くソロ・ヴァイオリンが登場するまでの間に曲の流れが決まってしまう。テンポはかなり遅め、フレーズの切れ目毎にタメを入れるのでますます重々しくなっていく。だんだんテンポが遅くなっていくようにさえ感じられた。あまりに重厚長大なベートーヴェンに、庄司さんのヴァイオリンも湿りがち(?)。いつものキーンと張りつめたような緊張感がなく、むしろ遅いテンポに合わせて、ひとつひとつの音をゆっくり丁寧に弾いているようだった。
 第2楽章もさらに遅めで、ヴァイオリンが旋律を歌わせるどころか、間延びしてしまう。
 第3楽章も遅いので、軽快にリズム感や諧謔性なと微塵もなく、いやはや、これでは…。これらはすべてアシュケナージさんの音楽作りに起因している。ただでさえ長い曲なのに、今日はホントに長い。いつ終わるんだ、この曲…といった感じである。庄司さんの演奏も、先日のサンクトペテルブルグ・フィルとのメンデルスゾーンの個性的な演奏とは違い、いくら引っ張ってもオーケストラが同調してこない。テミルカーノフさんとアシュケナージさんの違いがハッキリ出てしまっていた。そういうわけなので、今日は多くを語るのは止めておこう。

 後半は、ブラームスの交響曲第1番。当然の予想通りの展開となった。遅めのテンポと、メリハリがなく抑揚に乏しい演奏。オーケストラとしては大音量が出ているのに、メリハリがないからダイナミックに聞こえないのである。アシュケナージさんは、フレーズのアタマに必ずといっていいほどタメを持たせて、ドラマティックに仕上げようとしているのは分かるのだが、そのためにかえって音楽の流れがプツプと途切れてしまい、結果として鈍重な音楽になって行く。こういう音楽が好きな人にとってはそれで良いのだろうが、すくなくともあまり現代的な演奏とは言い難い。オーケストラのそこそこは上手いと思うのだが、今日のような演奏では、その実力の程は伝わって来ないし、またどのような個性があるのかもまったく分からないままであった。演奏が長かったせいもあるが、アンコールもなし。

 今日は珍しく辛口になってしまった。人様の音楽を批判するつもりは毛頭ないので、今日のコンサートを楽しめた方は、それはそれで素晴らしいことだと思う。音楽はその場限りの芸術だから、聴く側の好き嫌いを含めて、当たりハズレがあるのも仕方のないことだ。演奏家の個性が聴く側の共感に反応しなければ、それはハズレとして諦めるしかない。ただ、だからといってシドニー交響楽団はもうコリゴリと決めつけてしまっては、こちらの了見も狭すぎるというもの。次回は、アシュケナージさん以外の指揮者で、ぜひ聴いてみたいものである。

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2 コメント

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わたしもすっきりしませんでした。 (T.G.)
2011-11-11 20:27:43
ぶらあぼ様

たまたまこのブログにたどりつき、又アシュケナージのこの演奏会の事を見てびっくりしています。
私は40年以上前から都民劇場の会員で、毎月ここの公演は楽しんでいますが、確かに今回のシドニー
の公演はがっかりしました。私もなるべく音楽会は楽しむ事をこころがけていますが、今回のアシュケナージは音楽が流れず、いらいらさせられました。
勿論シドニーの音は良いのですが、楽譜通りに音を出していますといった感じで、演奏者の気持ちが伝わってこなかったのです。この一週間前のレニングラード(サンクト・ペテルブルグ)の演奏会があまりにも素晴らしかったのでその為か、あるいは私の体調や気持ちのせいかなとも思いましたが、やはりそう感じられた方がいらして、同じ様に思われた方がいたのだなと思いました。改めてアシュケナージのショパンの練習曲など聴いて、アシュケナージの考えや世界を理解しよう、再確認しようと思っていた矢先のこのコメントとの出会いでした。この間の演奏会でオーストラリアの楽団のブラームス演奏の限界の様なものも感じましたが、絶対指揮者によって変わってくると信じています。自分が指揮をしたらここはもっとこうしたのにといった様な雑念ばかり考えたコンサートでした。でもアシュケナージの世界はこうしたものかもしれません。オケのせいか、アシュケナージの音楽観かわかりませんがなにかひとつすっきりしない夜でした。そして沙矢香ちゃんもとうとうカーテンンコールに応じてくれなかったのもそうしたまわりの空気を感じていたのかもしれません。(前回の都民劇場ではイザイをアンコールで弾いてくれましたが・・・)とりとめのない長文を書いて失礼しました。
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やっぱり… (ぶらあぼ)
2011-11-11 23:12:11
T.G.様
コメントをお寄せいただきありがとうございます。
私と同様にサンクトペテルブルグ・フィルとシドニー響を聴かれたわけですね。両コンサートの違いはあまりにも明瞭で愕然としました。アシュケナージさんの音楽は、N響などを聴いている限り、ある程度は予想していましたが、ナマで聴くと一層その特徴が現れてきて、正直いうとかなり幻滅しました。結局、オーケストラ側にとって(都合の)良い指揮者と、聴く側にとって(具合の)良い指揮者というのは、必ずしも一致しない、ということなのでしょうね。
同じような感想を持たれた方がいらっしゃったので、私もホッとしました。
今後ともよろしくお願いいたします。
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