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3/15(金)日本フィル第648回東京定期/インキネンのシベリウス・チクルス1/正統派の交響曲第1番・第5番

2013年03月18日 01時28分05秒 | クラシックコンサート
日本フィルハーモニー交響楽団 第648回 東京定期演奏会
【ピエタリ・インキネンのシベリウス・チクルス】


2013年3月15日(金)19:00~ サントリホール・大ホール A席 1階 2列 18番 3,500円(年間会員割引)
指 揮: ピエタリ・インキネン
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
シベリウス: 交響曲 第1番 ホ短調 作品30
シベリウス: 交響曲 第5番 変ホ長調 作品82

 日本フィルハーモニー交響楽団の第648回東京定期演奏会は、首席客演指揮者のピエタリ・インキネンさんによるシベリウスの交響曲チクルスの第1回。曲目は交響曲の第1番と第5番である。
 日本フィルの創始者の故渡邉暁雄さんは母がフィンランド人でありその血を受け継いでシベリウスを得意としていたのはご承知の通り。その日本フィルに伝わるシベリウス演奏の伝統を、1980音か生まれの若い生粋のフィンランド人の指揮者、インキネンさんがシベリウス・チクルスを行うというのは、なかなかインパクトのある企画である。そして期待通りの素晴らしい演奏会となった。

 前半の交響曲第1番は、第2番に次いで人気のある曲だ。ドイツの伝統的な4楽章構成の交響曲に、民族楽派的な要素が盛り込まれている。
 第1楽章は、序奏に続いて、弦楽のトレモロと主題の提示部分から北欧的な透明感が見事に表れていて、豪快に吠える金管や、小鳥が遊ぶような軽やかな木管群の掛け合いなど、繊細で透明な弱音から豪快に全合奏の強奏までのダイナミックレンジも広く、スケール感の大きい演奏である。
 第2楽章の緩徐楽章は、抒情的な旋律が湖の彼方に夕日が沈むイメージだろうか。弦楽はもとより、木管群の音色の美しさが求められるところだが、最近好調の日本フィルの皆さん、本当に良い音を出している。楽器本来の質感の高い音色だ。
 第3楽章はスケルツォ。インキネンさんは極めて正統派のアプローチで、素直な表現だったが、リズム感が良く、民族舞曲的な雰囲気のスケルツォだった。中間部のホルンも艶やかな素敵な音色だった。
 第4楽章は、各パートの楽器が複雑に入り乱れて徐々に盛り上がっていき、その後に出てくる雄大でロマンティックなゆったりとした旋律は、いかにもシベリウスらしい、美しい大自然と民族主義が融合したよなう独特な世界。インキネンさんの歌わせ方は、ごく自然な感じであるが、とても分かりやすい。経過的に全合奏へと向かっていく盛り上げ方も上手い。主題が回帰してくると、フィンランドの森と湖の風景が目に浮かぶような、非常にゆったりとしたテンポで、美しく感動的な演奏であった。

 後半は交響曲第5番。初演は1915年だが、その後何回か改訂が行われ、現在の版に落ち着いたのは1919年だという。全体は3楽章の構成で演奏時間も30分程度と短い。第1楽章はソナタ形式ではあるが、元は第2楽章にあったスケルツォの要素が改訂の際に吸収され融合しているという、変わった構成になっている。
 第1楽章は、ホルンの独奏に絡む木管の調べで始まる。これが第1主題。弦のトレモロに乗る木管群の一連の調べが第2主題。といっても、既に形式的なソナタ形式は崩壊しており、より自由で発展的な構造に変化しているのは、シベリウスの音楽的な試行錯誤の結果によるものだろう。そして、再現部が変奏していくうちにスケルツォ風に変わっていく。スケルツォといっても荒々しいものではなく牧歌的で優しい。コーダはトランペットが華やかにファンファーレを歌う。
 やや混沌とした曲想とも取れるこの楽章だが、インキネンさんは丁寧に解きほぐし、音を積み上げていく。オーケストラの音色を決めるのは木管楽器だといわれるが、今日の日本フィルは、木管群も自然の風を感じさせるような、爽やかな音色で丁寧に吹いていたし、金管群も抑制気味でつやのある音色を終始響かせていた。
 第2楽章は緩徐楽章で、変奏曲形式。弦楽のアンサンブルがしっかりしていて、木管群の美しい音色が、牧歌的な雰囲気を醸し出す。森と湖の国も初夏の彩りである。
 第3楽章は、弦のトレモロが力強いベースとなり、その上にホルンが乗り、雄大な音楽を創り出していく。やがて様々なモチーフや楽想が入り乱れ展開、発展を繰り返していく。形式的にはA-B-A-B-コーダになるようだが、それぞれのモチーフや主題を受け持つ楽器が変わったりするので、非常に複雑な構成に聞こえる。インキネンさんが細かく解きほぐしていくのだが、さすがによく分からないうちにコーダに突入、壮大なフィニッシュとなった。
 シベリウスの交響曲第5番は、普段、あまり聴く機会のない曲。交響曲の形式を発展的に崩して行き、新しい音楽を創り出そうとする試み、ある意味では独創性に溢れた曲でもある。今日の演奏は(多分)とても素晴らしいもので、聴く機会に恵まれたことに感謝したいと思う。もっと聴く回数をかけていけば、この曲自体の価値をもっと理解していけると思った。とても素敵な曲である。

 日本フィルの東京定期は毎回、金曜日の夜と翌土曜日の午後の2回公演であるため、今日と同プログラムの演奏会は明日の午後にもある。そしてこの後、チクルスの第2回は4月19日(金)/サントリーホールでの第355回名曲コンサートと20日(日)/横浜みなとみらいホールでの第286回横浜定期演奏会で交響曲第4番・第2番、第3回は4月26日(金)・27日(土)の第649回東京定期演奏会で交響曲第3番・第6番・第7番が演奏される予定になっている。定期演奏会は会員になっているので聴くことができるが、もっとも人気のある第2番の演奏会が別途チケットを取らなければならない。もちろん聴きたいのは当然のことだが、さて、どうしたものか…。

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