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Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/3(月)「NHKニューイヤーオペラコンサート2011」日本オペラ界のスター総出演の豪華な舞台

2011年01月04日 03時37分07秒 | クラシックコンサート
第54回 NHKニューイヤーオペラコンサート

2011年1月3日(月)19:00~ NHKホール B席 3階 C1列 10番 5,000円
指 揮: 広上淳一
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱: 二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部/新国立劇場合唱団

 毎年恒例の「NHKニューイヤーオペラコンサート」は今年で第54回の開催となる。例年はテレビでのんびりと鑑賞するのだが、今年はどういうわけか会場に足を運ぶことに。本来このような企画もののコンサートはあまり好みではないのだが、幸いなことに3階だがセンターの1列目が取れたので、ニューイヤー・オペラ・ガラということで、楽しんでしまおう。基本的に1人1曲の歌唱なので、出演者も多いことだし、曲順に簡単にレビューしてみたい。といってもテレビで全国に生中継しているのだから、細かいことを書いても仕方がないので、会場で感じたことを中心に…。

【第1部】
●ヴェルディ: 歌劇『アイーダ』から「エジプトとイジスの神に栄光あれ」
~合唱のみ
 オープニング曲として演奏された。NHKホールの左右のバルコニー(右側はパイプオルガンの横)にトランペットを配置し華麗なファンファーレからコンサートが始まった。

●グノー: 歌劇『ロメオとジュリエット』から「わたしは夢に生きたい」
~幸田浩子(ソプラノ/ジュリエット) 東京シティ・バレエ団
 幸田さんの美しい声とコロラトゥーラの技巧はステキだが、3500人入るNHKホールでは声量が不足がち。3階までは響いて来なかったのが残念。

●マスネ: 歌劇『ウェルテル』からオシアンの歌「春風よ、なぜわたしを目覚ますのか」
~望月哲也(テノール/ウェルテル)
 端正なテノールの望月さんは、力強さも併せ持ち、熱演。

●モーツァルト: 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から酒の歌「みんな楽しく酒を飲んで」
~黒田 博(バリトン/ドン・ジョヴァンニ)
●モーツァルト: 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から二重唱「お手をどうぞ」
~林 正子(ソプラノ/ツェルリーナ) 黒田 博(バリトン/ドン・ジョヴァンニ)
 今日本でドン・ジョヴァンニを歌わせたら黒田さんが一番かもしれない。雰囲気が実にピッタリである。ツェルリーナは普通はメゾ・ソプラノの役柄なので、ソプラノの林正子さんでは低い方が辛そうだったが…、声量は豊かなので、演技力も含めて素敵だった。今年は東京二期会公演で『サロメ』のタイトルロールがあるので楽しみである。

●ロッシーニ: 歌劇『タンクレーディ』から「恭しくあだめ奉る公正なる神よ」
~高橋薫子(ソプラノ/アメナイーデ)
 高橋薫子さんは美しい声と、イタリアものなら何でもこなす技巧で、藤原歌劇団のプリマの存在感を見せた。まさに正統派のソプラノである。Brava!

●サン=サーンス: 歌劇『サムソンとデリラ』から「あなたの声に心は開く」
~林 美智子(メゾ・ソプラノ/デリラ)
 林美智子さんが歌うこの曲は何度も聴いているが、オーケストラ伴奏で聴くのは久しぶり。メゾ・ソプラノのアリアとしては定番だ。ゆったりした間合いの取り方が、一段と表現に磨きをかけて、大人の魅力いっぱいであった。

●ジョルダーノ: 歌劇『アンドレア・シェニエ』から「ある日、青空をながめて」
~水口 聡(テノール/シェニエ)
 ヨーロッパで活躍しているだけあって、力強く、よく通る声を持っている。ドラマティックな盛り上げ方にも歴戦のテクニックを感じる。素晴らしいテノールである。

●プッチーニ: 歌劇『トスカ』から「歌に生き、恋に生き」
~松田奈緒美(ソプラノ/トスカ)
 松田さんは声はよく出ていたが、やや一本調子か。アリア1曲だけだから仕方ないのかもしれないが、もう少し情感が表現できれば、素敵な歌唱になったと思う。これからの人だけに、期待度満点。

●プッチーニ: 歌劇『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」
~福井 敬(テノール/カラフ)
 あいかわらず、役柄にのめり込む福井敬さんの、この曲を歌う時には鬼気迫るものを感じる。とにかくスゴイ!!

●プッチーニ: 歌劇『ラ・ボエーム』から「さようなら」~第3幕の幕切れ
~砂川涼子(ソプラノ/ミミ) 樋口達哉(テノール/ロドルフォ) 臼木あい(ソプラノ/ムゼッタ) 宮本益光(バリトン/マルチェッロ)
 今やすっかりミミ役ならこの人というイメージの砂川涼子さん。清らかな声質、端正な歌い方、儚げな立ち姿など、思わず涙をそそる。樋口達哉さんのロドルフォもなかなか良い。臼木あいさんと宮本益光さんは出番が少なくてかわいそう。芸達者な二人、もっとたっぷり聴きたかった。この4人で『ラ・ボエーム』全曲をオペラで見たいものだ。

【第2部】
●リスト: 「リゴレット・パラフレーズ」
~アリス=紗良・オット(ピアノ)
 今日、ステージを見て確認。アリス=紗良・オットさんは本当に裸足のピアニストだった。ヴェルディの『リゴレット』の主題をリストがピアノに編曲した曲。オペラ・ガラならではの選曲で、今や国際的に活躍するアリス=紗良・オットさんのピアノでこの曲が聴けるとは。アリスさんは超絶技巧派(?)だが、音が強靱な方ではないので、NHKホールでピアノ・ソロというのは…、さすがに3階だと音がさびしい。今回の来日では東京交響楽団とリストの協奏曲を弾き、リサイタルのツアーもあるので、そちらの方が楽しみである。

【第3部】
●J.シュトラウスII: 喜歌劇『こうもり』から「夜会は招く」
~合唱
●J.シュトラウスII: 喜歌劇『こうもり』から「お客を呼ぶのはわたしの趣味で」
~小山由美(メゾ・ソプラノ/オルロフスキー公)
 お正月には欠かせないオペレッタ『こうもり』。小山由美さんのズボン役は、歌の方はとても素晴らしかったが、もっと思い切って男装した方が可笑しくて『こうもり』っぽくなると思うのだが。

●R.シュトラウス: 歌劇『ばらの騎士』からオックス男爵のワルツ~第2幕の幕切れ
~妻屋秀和(バス/オックス男爵) 森山京子(メゾ・ソプラノ/アンニーナ) 東京シティ・バレエ団
 超低音を要求されるバスのオックス男爵役は難役。無粋で野卑なのに、優雅なワルツを歌う。妻屋さんはなかなか良い味を出していた。森山京子さんのアンニーナははまり役。今日は、むしろオーケストラがリズム感が悪く、ホルンが音を外したりと、野暮な演奏だったのが残念。

●チレーア: 歌劇『アルルの女』から「ありふれた話」(フェデリコの嘆き)
~佐野成宏(テノール/フェデリコ)
 佐野さんの繊細な声質は、広い会場ではややパワー不足に感じられてしまうが、表現の味わいは深い。嘆き、悲しみの歌声は本当に素晴らしい。

●カタラーニ: 歌劇『ワリー』から「さようなら、ふるさとの家よ」
~木下美穂子(ソプラノ/ワリー)
 今日のソプラノさんたちの中では一番だろう。豊かな声量、高音まで正確な音程、芯が強く感じられるにもかかわらず澄んだ声質、そして何よりもドラマティックな表現力。圧倒的な存在感であった(身体が大きいという意味ではないです)。Brava!!

●ヴェルディ: 歌劇『マクベス』から「裏切り者め!」~「哀れみも、誉れも、愛も」
~堀内康雄(バリトン/マクベス)
 堀内さんのバリトンはいつも安定した歌唱力。堂々たるステージ捌き。お見事といか言いようがない。

●ヴェルディ: 歌劇『椿姫』から乾杯の歌「友よ、さあ飲みあかそう」
~福井 敬(テノール/アルフレード) 大村博美(ソプラノ/ヴィオレッタ) 合唱
●ヴェルディ: 歌劇『椿姫』から「ああ、そはかの人か」~「花から花へ」
~大村博美(ソプラノ/ヴィオレッタ)
 福井敬さんはとても巧いのだけど、アルフレードはちょっと合わないみたいな気がする。大村博美さんのヴィオレッタは貫禄があってなかなか良い。「ああ、そはかの人か」~「花から花へ」のアリアは歌も巧いし声量もあって良かったのだが、最後の高音が出なかった。

●J.シュトラウスII: 喜歌劇『こうもり』から「ぶどう酒の燃える流れに」
~全員で 合唱
 出演者全員が、ワン・フレーズずつ歌う、お正月のオペラ・ガラのエンディングにピッタリ。終わり良ければ…。後で録画を確認したら、テレビの放送はこの曲とともに終わってしまったが、会場では指揮の広上淳一さんを交えてカーテンコールがあった。

 曲目と出演者は以上だが、一言付け加えておくと、オーケストラの演奏が今ひとつノリが良くなかったように思う。広上さんは熱演しているのだが、東フィルが時々、雑な音を出していた。広上さんの音楽は、メリハリがあって、リズム感も明快そのもの。非常に解りやすいのだが、歌手の歌に合わせて巧く「場」を作れる、というほどオペラ的ではないような気がする。一方、オペラ伴奏には最も経験の豊富な東フィルも、終始平板な演奏で、音色に艶がなかった、オペラに特有の華やかさが感じられなかったのだ。ニューイヤーオペラコンサートなのだから、もっと明るく楽しい「音」が欲しかった。

 お正月のオペラ・ガラ。NHK的な演出では、まるでオペラ界の紅白歌合戦…。一流のスター歌手が勢揃いして脈絡なく1曲ずつ歌う。今年はテーマがハッキリしていなかったので、何とも散漫な印象に終始した。毎年やっているのだから、もう少し工夫したらどうだろうか。といいつつも、ピッタリ2時間、けっこう、というかかなり楽しめました。やっぱり、オペラは歌手が巧くてナンボのものだから…。

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4 コメント

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テレビで視聴しました (GIACOMO)
2011-01-04 13:22:22
オックス男爵を歌ったのは松位浩さんではなく、妻屋秀和さんです。体調不良のため出演キャンセルということがNHKから事前告知されていました。
このコンサートの人選は名前よりも実力という印象がこれまではありましたが、今回はおやっと思う人が何人か。日本に限りませんが、テノールの人材難は深刻です。 
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訂正しておきます (ぶらあぼ)
2011-01-04 13:34:43
GIACOMO 様
コメントをお寄せいただきありがとうございます。
妻屋さんの件、ご指摘ありがとうございました。会場でも告知されていましたし、有料のプログラムにも妻屋さんの経歴が差し込まれていたのに、ついうっかりしました。早速、本文の方を訂正しておきます。
私はテノールよりも、ヴィオレッタをうまく歌えるソプラノさんが見あたらないのが気になります。
返信する
衣装は何とかならないか (白ネコ)
2011-01-08 17:33:47
歌手はそれぞれ頑張っていました。もっともおっしゃるように個々にはいろいろあるでしょうが。それよりあの衣装はどうにかならないか。なにより色使いも美しくない。様式もめちゃめちゃ。かといって21世紀の新しさもなく、どの歌手も変なリボンまがいをゴミのように袖にくっつけていて、オックス男爵のチョッキなぞエプロンのように後ろがなかったのです。すべて洗練されていない!海外のガラでの衣装をもっと研究してほしい。つまり時代遅れの感覚。これが新進気鋭のデザイナーなのか。そうならば、日本はガラパゴスだ。
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衣装ですか… (ぶらあぼ)
2011-01-09 22:38:16
白ネコ様
コメントをお寄せいただきありがとうございます。
出演者の衣装や化粧などについては、あまり気に止めていませんでしたが、確かにおっしゃる通りちぐはぐな点があったように思います。紅白歌合戦じゃないんだから、1曲ずつムリに小芝居をしないで、燕尾服とステージドレスの正装で、普通のコンサート形式で…、というのも良いかもしれませんね。
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