徒然なるままに修羅の旅路

祝……大ベルセルク展が大阪ひらかたパークで開催決定キター! 
悲……大阪ナイフショーは完全中止になりました。滅べ疫病神

The Otherside of the Borderline 16

2014年10月13日 23時11分55秒 | Nosferatu Blood
     *    この世の地獄というものがある。  それは人それぞれであろう。  たとえば、本当に偶然に起こった交通事故で馬車に轢かれ、内臓を損壊した幼子が過ごす恐怖と苦痛に満ちた死への秒読みは、その子供にとって紛れもなく地獄の顕現であろう。  たとえば、軍隊の焼き討ちに遭って家の中に大勢で閉じ込められ、建物ごと焼き払われんとしているとき、焼かれる家の中にいる者たちにとって酸欠からくる呼吸困難と . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 15

2014年10月13日 22時09分33秒 | Nosferatu Blood
     †    顕界派遣執行冥官と呼ばれる神々がいる。  現世において悪影響を及ぼす心霊や、堕ちた神・妖怪などを調査、あるいは浄化・処断する役目を負い、顕界で肉体を持って活動する神霊のことを指す。  彼らは現神・冥人・御使いとも呼ばれ、人間から召し上げられ役職を与えられた元人間である。  彼らは受肉して物質世界に常時降臨し、ある程度の裁量を持って行動出来る権限を与えられている。彼らに与えられた . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 14

2014年10月13日 21時55分12秒 | Nosferatu Blood
     †    健治が教えてくれた裏道を抜けて、アルカードの駆るS2Rは市街地に入った――ろくに街中を走るまでもなく、高速道路のインターチェンジに到達する。さっきはずいぶんと遠回りをしていたらしい。  すでに日付が変わっているので、高速道路ならともかく一般道を走っている車はそれほど多くない――ETCゲートを抜けて高速道路に上がっても事情は似た様なもので、ちらほらと長距離物流のトラックが走る程度 . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 13

2014年10月13日 21時16分58秒 | Nosferatu Blood
「誰が用意したんだかな、こんなもん。注文した奴の顔が見たいぜ」 ウレタン製の型に嵌め込まれた銃身を取り出しながら、そんなぼやきをこぼす――猿渡がその言葉に適当に肩をすくめ、 「それは無理な注文だな」  しゃべりながらもてきぱきと、同梱されていたレンチを使って銃身をレシーヴァーに組みつける。といっても、銃身そのものをレシーヴァーに捩じ込むだけの単純な造りだ――ライフリングはレシーヴァー側から見て六条 . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 12

2014年10月13日 20時52分57秒 | Nosferatu Blood
 扉が閉まるのを待たずに、桜は話を戻した。 「月之瀬は今回の事件の発端となった、茨城県日立市に居を構えていた分派の棟梁です。将也はその家の男子で、群を抜いた戦闘センスを持っていたために幼いころから一族最強の戦闘者となるべく育てられました」  彼女はそう言ってから、言葉を選ぶ様に一瞬沈黙した。 「そして最近、兵冴《ひょうご》――月之瀬の当主である兵冴は、将也を実験材料にある実験を行ったのです。これは . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 11

2014年10月13日 20時10分16秒 | Nosferatu Blood
「そこまでにしなさい、猿渡」  その言葉に、男たちの動きが止まる――彼らの視線を追うと、そこにはラフな部屋着のままの女性が腕組みしてたたずんでいた。  桜様、というつぶやきが、誰かの口から漏れる。それではこの女性が綺堂桜なのだろう――この屋敷の当主の娘としてその名があった。  かなりの魔力強度だ――無論、ここにいる男たちと比較しての話だが。  年齢は外見だけで判断するなら、二十代前半というところだ . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 10

2014年10月13日 20時10分15秒 | Nosferatu Blood
     *    高速道路を下りて五分もしないうちに、景色は入り江を左手に臨む海岸線へと変わった――このスカイラインは途中の展望台も含めて眺めがいいので時々来るが、夜中でも飛ばしたがる連中が多くて事故も絶えない。  見通しもよくグネグネと大小様々なカーブが組み合わさった複雑な道路で、いわゆるスポーツ走行が趣味の連中にとってはある意味腕の見せ所なのだろう――途中で大きくカーブしているコーナーがあり . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 9

2014年10月13日 17時06分30秒 | Nosferatu Blood
 首尾よくその攻撃から逃れたはいいが、さすがに着地までは無理だった――着地の態勢を作れないまま、背中から血で湿った地面に倒れ込む。  体勢を立て直したドラキュラが、こちらの下半身を薙ぐ軌道で踏み込み様に剣を振るう。別に足を切断する必要は無い――隙が出来ればそれで十分だ。  ひぅという軽い風斬り音とともに、振り抜かれた長剣の鋒が低い軌道で地面をえぐる。踏み込みは深かったが距離があったために斬撃は浅く . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 8

2014年10月13日 17時05分56秒 | Nosferatu Blood
     *    下腹部に剣を突き立てられたまま身動きを取れない彼の体に覆いかぶさる様にして、ドラキュラがかがみこんできている――吐き出す息は異様に血生臭く、歯が紅く濡れている。それがほかの者の血で濡れているのだと気づいたときには、異様に尖った犬歯がめりめりと音を立てて長く伸びてきていた。  なんだ、これは――おそらく生まれてはじめてであろう未知のモノに対する純粋な恐怖に戦慄しながら、彼は小さく . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 7

2014年10月13日 16時21分37秒 | Nosferatu Blood
「環か」 「はい」  どこからともなく返事が返り――同時に一瞬ではあったが吹き荒れる強風が完全に止まる。振り返った視線の先で黄金色に輝く粒子が渦を巻き、一瞬ののちに小柄な金髪の少女が虚空から溶け出す様にして姿を現した。  硝子細工の様な儚げな雰囲気で、幼い見た目にも関わらず妙な落ち着きも感じさせる。特異なのは、身に着けた重ね着の衣装のお尻のあたりから金色の毛並みに覆われた九本の尾が伸びていることだ . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 6

2014年10月13日 14時51分04秒 | Nosferatu Blood
 このアパートには今防犯装置《・・・・》が三人もいるから、仔犬たちの声を聞きつけたら即座に飛んでくるだろう。仔犬たちの心配は必要無い、そう判断してアルカードは玄関に足を向け――いつの間にバスケットから出てきていたのか、ソバが足元で尻尾を振っているのに気づいて足を止めた。  つぶらな瞳でこちらを見上げている黒い小犬に微笑んで、上り框に腰を下ろす。ブーツの靴紐を締め上げてから、アルカードは手を伸ばして . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 5

2014年10月13日 14時27分44秒 | Nosferatu Blood
 だがそれとは別に、『種』として根本から人間と異なる個体もいる――彼らは人間との交配は可能であるものの、遺伝子レベルで人間とは異なるためにその特徴を生まれつき持って生まれてくる。どうやってその能力を獲得したのかは不明だが、そういった吸血鬼を特にナハツェーラーと呼ぶ。  所謂狼男も同様だ。  人間の形態と直立二足歩行する獣の形態を使い分けることの出来る彼らの中には、魔術師の様な連中が人間をベースに改 . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 4

2014年10月13日 14時27分20秒 | Nosferatu Blood
     *   「いやぁぁぁぁぁっ!」 悲鳴とともに、フィオレンティーナは跳ね起きた――視界に入ってきたのは石造りの壁でも真っ赤に染まった夜空と月でも、もちろん腹に突き立てられたままになった剣の煌めきでもなく。  もう見慣れたと言ってもいい、吸血鬼の部屋のリビングに置かれた液晶テレビと、テレビ台の上に置かれたイチローのホームランボールと炭入り樹脂の熊の置物とOVAの初回版限定特典のアンデルセン神 . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 3

2014年10月13日 11時37分29秒 | Nosferatu Blood
     *    ガチャガチャとやかましい足音を立てて、ドラキュラ公爵が近づいてきている。小さく舌打ちを漏らしてその場で身を起こそうと床に左手を突――こうとして動かしかけたところで、彼は骨折した左腕の激痛に小さくうめいた。 「――!」  声にならないうめき声を漏らしながら、床に右肘を突いてその場で立ち上がる――左腕は完全に使えない。仮にこの状況を生きて切り抜けられたとしても、後遺症を残さずに治る . . . 本文を読む
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The Otherside of the Borderline 2

2014年10月13日 11時35分57秒 | Nosferatu Blood
 アルカードは再びジープのバックドアを開けて、取り出したリネン類の半分を彼女に渡してきた――日本のベッドはマットレスとは別にフトンという寝具を使うらしく、アルカードが教会からの帰り道、ショッピングセンターに寄って購入を勧めたのだ。  フィオレンティーナいわく、布団無しでベッドを使うと『結構つらい』らしい。  まあ、経験者のすることに学ぶのは正しいことだ。パオラとリディアはアルカードとフィオレンティ . . . 本文を読む
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