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アルカードが出て行ってから数分後、フィオレンティーナはベッドの上で身を起こした。
倦怠感は相変わらず続いていたが、先ほどまでの様には酷くない――今度は転げ落ちない様にベッドから足を下ろし、ベッドの縁に腰を下ろしたまま考えをめぐらせる。
ここはアルカードの部屋だ――それはわかった。住居に関して、彼が嘘を吐く理由など無い――それに、吸血鬼であろうと行動の拠点は必要だ。彼自身が言 . . . 本文を読む
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「頼まれたから――だな」
最後の質問を適当にはぐらかして、アルカードは部屋を出た。ドアを閉めたところで、ふうっと息を吐く――フィオレンティーナが自分を着替えさせたのが誰かという疑問をいだかずにいてくれたことに安堵しながら、彼は短い廊下を歩き出した。
……と、彼女が目を覚ましたことをエルウッドに報告しておかなければならない。それを思い出して、アルカードは小さく息を吐いた。
リ . . . 本文を読む
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「――ッ!」 すさまじい勢いで、跳ね起きる――額に載せられていたものらしい濡れタオルが、ぽとっと音を立てて膝の上に落ちた。
ひどく熱い息を肺の奥深くから吐き出して、指が白くなるほどの力でシーツの端を握り締める。
まるで首を絞められているかの様に、妙に息苦しい――呼吸はちゃんと出来ているのに、そう、肺が酸素を取り込めていない様な、そんな感じだ。息が落ち着くまでしばらく深呼吸を繰 . . . 本文を読む